第14話 異常な成長
僕たちは階層主を倒してダンジョンから帰還した。
街ではドロップアイテムの換金をしたが、たいした金にはならなかった。
前衛二人はどうやら剣を握ると見境なく戦うバーサーカー状態だったらしく、アイテムを回収していなかったそうだ。
だから、ドロップアイテムは僕がカバンにしまった分だけだった。
「色々課題が見えたダンジョン攻略だったな」
呟いていると、ガーベラからの反省の言葉があった。
「すいませんでした。私はどうも血を浴びると暴れてしまうようでして……。国の遠征部隊でも、私専用のアイテム回収サポート部隊が付けられるくらいなんです……。まさか、ここまでポンコツだとは思っていませんでした。ごめんなさい」
「まぁ、王子を放って置いて行くのはよくないと思うけど、性格なんだったらしかたないよね」
「すいません」
「いいよ。気にしないで。僕も自分の強さに気づけたし」
「そうですね。階層主を一人で倒すとかすごすぎですよ」
「普段ならガーベラも倒しまくりなんだろ?」
「まぁ、そうですけど、あんな見事に毒にかかったのは初めてです。普段なら、サポート部隊が解毒してくれるから問題ないんですけどね。どうやって切り抜けたんですか?」
「ナイショ」
「ウェーイ! 内緒はダメだぜ! お兄さん!」
ああ、ウゼーヤツが来た。
会話終了。
黙々と歩き、鑑定屋まできた。
「こんにちは。今日も鑑定してもらえますか?」
「お金さえくれればやるけど、一日ではそれほど変わりませんよ?」
「いや、今日、レベルが4も上がったんですよ。だから、見て欲しくて」
「いるんですよね、レベルが上がるたびに来る人。でも、派生スキルってそんなにすぐにつくもんじゃないですからね?」
「そうですね。私はレベルが上がったわけではないので、パスします。勇者様は上がりましたか?」
「アゲアゲだぜー! ウェーイ! 5は上がったZEー!」
相変わらず無茶苦茶だな。
僕の4アップは階層主を一人で倒したからだろうし、ピンチブーストもパーティブーストもかかっていた。
勇者はずっと単独行動してたから、ブーストは何もないはずだ。
それで5も上がるなんて異常としか言いようがない。
やはり勇者補正があるとしか考えられない。
それはさておき鑑定だ。
どっちのスキルが上がっていてもおいしすぎる。
「鑑定をお願いしてもいいですか? まずはサイト様がいきましょうか?」
美味しいものは最後まで残しておく派だ。
「かしこまりました。それでは、勇者様、こちらへ」
サイトは椅子へうながされ、座る。
『鑑定』
「わかりました。『勇者』スキルは11、『剛剣』スキルは10、『乱魔』は7でした。合成しておきますね。派生スキルは『縮地』が発現しています。さすがですね」
すごすぎだろ。
『勇者』スキルは合成した分上がったのかな?
それ抜いても4上がってる。
僕と同じだけだ。
僕の『ピュア』は3から4まで上がるのに一年かかったのに……。
まぁ、今回は僕も上がったからいいよね!
そういうことにしておこう。
「それでは、王子様、こちらへどうぞ」
「ああ」
「それでは早速」
『鑑定』
「……わかりました。『ピュア』が1上がって6、『催眠術』が3上がって5です。派生スキルは……『剣聖』です。」
「え?」
「え?」
「え?」
三人とも同じ反応を返す。
剣聖って言ったよね?
「『剣聖』……音速を超える速さで剣を振ることができる。と、あります。昨日拝見した剣聖様のスキルと比べると、『選ばれし者』という文言が足りないようです」
「選ばれてはいないけど、『剣聖』? どういうこっちゃ?」
僕は混乱した。
しかし、納得もしていた。
僕なんかが選ばれし者なわけがないと。
「これまでの『剣聖』の歴史で二人いた時代はありません。何か……、今までとは違う何かが、起こっているのでしょう」
ガーベラ真剣な表情で話した。
異常事態ねぇ。
あるとしたら『催眠術』で模倣したくらいかな?
それくらいしか、僕と『剣聖』スキルに接点はない。
ん?
これ、ここで『勇者』スキルをマネすれば、いただけるってこと?
やってみよう。
『催眠術 勇者になれ』
これと言った変化はない。
「すいません、もう一度鑑定してもらえませんか?」
「え? さっきしましたよ?」
「いや、なんか、今レベルアップした気がするんですよ」
「はぁ、いいですけど、別料金ですよ?」
「はい」
お金には困ってない。
なんせ王子の端くれだからね。
「わかりました。『鑑定』……いや、何もかわってませんよ?」
「あれ?気のせいだったのかな?」
誤魔化してみたが、みんなは不思議な顔をしていた。
僕は剣聖の剣は何度も見て来た。
体験もしている。
対して、『勇者』の戦闘は見たことがない。
深く理解したスキルじゃないとマネはできないのかもしれない。
マネが完全に出来た時にはスキルが派生する。
あくまでニセモノだから、『選ばれし者』ではない。
このような仮説を立ててみた。
おそらく間違いないだろう。
明日別のスキルで実験してみよう。
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