第一章 23 「覚醒する才能」

それから二人は地球世界の事や銃器の話などで盛り上がり酒を飲み続けた。アカリにとっては久々の男友達同士の感覚で飲め、ルドルフは知らぬ世界の知識に大いに興奮した。

こうして二時間程経った頃、そこには完全に出来上がった酔っ払い二人の姿があった。

今は昼間にあったヤクト氏との出来事を肴に酒を楽しんでいる。


「んで、その冒険者がぁ…気持ちが悪いのなんの」

「ほう!それは男の風上にも置けない奴だな。して、その男はどうなったのだ?」

「ムカついちゃったんで〜股間を蹴り上げちゃったよ」


ゴクッ


- あっれぇ?


アカリはルドルフが盛大に生唾を呑んだ事に気付いてしまう。

「…っで、そりゃもう泡吹いて倒れちゃったんで、俺の大勝利〜‼︎なっさけない男だよね」

「だが、顔は良かったのだろ?」

ルドルフは平静を装う様に続けた。

「いやいやいや、あーんな整ってるだけの顔とか気色悪いだけだよぉ…ルドルフさまみたいなカッコ良さは一切ない!」

「っむ⁉︎…お前にとって俺はかっこいいのか?」

「んー?かっこいいと思うよ?顔はいいし、筋肉だし」

ルドルフの目に熱い何かが灯った。

そう、ルドルフは一目惚れしたアカリにかっこいいと言われて有頂天の気持ちであった。ルドルフは心の中で叫ぶ。


- 筋肉がかっこいいのか!


「アカリよ、これがいいのか?」

ルドルフは唐突にガウンを脱ぎ上半身を晒す。そこにあるのは戦いで付いた数多の傷を持つ鍛え上げられた肉体だ。

普段のアカリなら「何こいつ」と言ってドン引きする場面だったが、今の彼女は呂律も怪しい位に酔っ払いである。

「お〜‼︎めっちゃカッコいいじゃん。あれだ、これぞ戦士‼︎って感じで」

ケラケラと笑い、その肉体を褒め称えた。

対してルドルフはといえば、肉体を見られる事に興奮し快感を覚えていた。もっと見られたい。そんな欲求が彼を支配する。

「アカリ、俺をもっと見てくれ。戦以外で初めて興奮をしたぞ!」

「えぇ〜?ルドルフ様って見られて興奮するんだぁ」

酔って出来上がったアカリには正常な思考は無く、ドS系ネカマプレイヤーの血の疼くまま行動する。

ニタァと口角を歪ませ、まるで塵を見る様な目でルドルフを見つめた。

「…へーんたい」

「ぬう⁉︎」


- 何だ⁉︎この背筋を貫く様な衝撃は⁉︎


「…俺、気付いてたんだけどぉ…ルドルフ様、俺が戦ってる時ずっと俺の事見てましたよね〜」

アカリは立ち上がるとルドルフに近寄り、その胸筋を指でなぞる。

「ぬお⁉︎」


- た、堪らん‼︎堪らんぞ‼︎


ルドルフは欲望の赴くままにアカリの両肩を掴む。

「アカリ‼︎お、俺は…お前に惚れたぞ‼︎」

「まぁじでぇ〜?あはは‼︎」

アカリは視線を下に落とす。その視線の先にはルドルフの滾る股間があった。

「へぇ…」

アカリはその艶やかな生脚を上げて彼の股間に当てた。

「何おっ勃ててるん?女の子に身体見せてぇ、変態って言われて勃てるとか…めっちゃ変態じゃん」

「うおお…⁉︎お前の目に見つめられると耐えられんのだ‼︎」

ドSに罵るTF転生美少女と悶えるドM筋肉公爵様という構図は、最早カオスである。

「俺にどうして欲しいのかな?見るだけでいいの〜?」

長い間強い女に焦がれ、戦で生死の淵でしか勃起できない不能だったルドルフ。その呪縛を解いた理想系の美少女に生殺与奪権を握られた様な感覚は、彼の理性を吹っ飛ばす。

「お、俺を蹴ってくれっ‼︎」

「ふぅん?」

アカリは彼の急所を思いっきり膝蹴りする。

「ぐおっ⁉︎」

崩れ落ち、悶えるルドルフ。だがその表情は悦に浸っているのが分かる。そう、彼の性癖は歪みに歪んでいたのだ。

「こう?」

「ぐぬぬぬ…い、痛みが…気持ちがいいぞ‼︎」

「えー、ルドルフ様めっちゃマゾじゃん‼︎ドン引きなんですけど?」

アカリは笑いながらローファーのままルドルフの身体を踏み付ける。

「偉い貴族様が小娘に脚で踏まれて…そんな嬉しそうな顔するんだぁ?」

「ああ…その目だ‼︎お前のその目が俺を一人の男にしてくれる…‼︎」

「…変態‼︎」

「おおお‼︎良い‼︎凄く良いぞ‼︎」

ぐりぐりと身体を踏まれて歓喜するルドルフもだが、アカリも完全に調子に乗っていた。

「そうだ‼︎もっと踏んでくれ‼︎」

「っこのこの‼︎ルドルフ様は︎強い戦士?偉い公爵様?違うよね⁉︎俺に踏まれてる君は何⁉︎」

「うおおおお⁉︎お、俺は…‼︎」

「言え‼︎言っちゃって堕ちちゃえ‼︎」

「俺は、俺はただの変態だ‼︎」

それを聞いたアカリは満足そうに脚を振る。

「ちゃんと認められたご褒美…‼︎」

「うおおおおおお‼︎」

アカリの脚が正確にルドルフの股間を捉え、彼の爆発寸前のブツを突き上げる。その衝撃に彼は欲望を吐き出して果てるのだった。

「ふうっふうっ‼︎︎」

息を荒げて無様に果てたルドルフの姿にアカリは恍惚する。

「なーんか俺も興奮してきちゃったじゃん…」

「…ア、アカリよ」

ルドルフが顔を上げる。

「なーに?ルドルフ様」

「もっとだ‼︎もっと激しく頼む‼︎」

「…へぇ」

ルドルフの懇願に彼の肩を靴で踏み付けて応える。

「…おい、さっさと全部脱げ…」

アカリは指をルドルフの額に当てて睨みつけるとニッコリと笑う。

「全部搾り取ってやるよ…マゾ豚が」

「うおおおおお‼︎」


ルドルフの歓喜の咆哮はまるで魔獣の様であり、その日領事館周辺では、街中に魔獣が現われた恐れありと一騒ぎになったという。


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