第10話:救出。

柊一郎が飛び込んだ部屋には男は5人・・・3人だと聞いていたが、 ふたり

増えていた。

男たちの向こうに、さるぐつわをされソファに寝かされている詩織が見えた。


「なんだ、おまえ」


「おまえらこそ、何やってんだ」

「てっめら、全員ぶっ殺す」

「詩織、大丈夫か?」

「今助ける」


「なんだ、誰だおまえ」


「やかましい、てめえら、誰の妹に手、出してんのか分かってんだろうな〜」


「うるせえ」


そう言った男はポケットからナイフを取り出して、ちらつかせた。


男どもは相手がひとりだと思って、柊一郎を舐めていた。

ふつうの男だったら、相手が5人いたら、ビビるところだろうが元暴走族の

総長だった柊一郎に敵はなかった。


すると柊一郎の後ろにいた聖子が


「この人怒らせると怖いよ・・・元、暴走族の総長やってた人だから」


それを聞いて、全員が後ずさりした。


「元、暴走族だろうが、なんだろうが関係ねえ」


ナイフを持ったその男はそう言って柊一郎に突っかかってきた。

それを斜交いに避けて柊一郎のストレートが相手の顔面に炸裂した。


一発で終わった。


あまりに素早くて強烈な一撃に残りの男たちはビビってたちまち戦意を喪失した。


「てめら、ひとりも逃さねえぞ」


すると階段を上がって矢形さんと警官ふたりが部屋に入ってきた。


「大丈夫か吉岡・・・」


「よ〜し、おまえら全員、拉致監禁、暴行容疑で逮捕」


男どもは観念して、完全におとなしくなった。

もともとは、ただの不良だから、ちょっとしたスケベ心 を起こしたことで、

ことを大きくするところだった。


柊一郎が来るのが遅かったら、詩織はどうなっていたか・・・。


「詩織大丈夫か?」


柊一郎は震えている詩織のさるぐつわをほどいて


「怖かったよな、もう大丈夫だからな」


そう言って髪を撫でた。


詩織は泣きじゃくりながら


「お兄ちゃん・・・」


そう言ったが、体の震えが止まらなかった。


「お〜初めて呼んだな、俺のこと、お兄ちゃんって」


そう言って柊一郎は詩織を抱きしめた。


つづく。



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