第11話
名前:来栖 海翔
冒険者ランク:E(0/3)
受けている依頼:デビルモールの討伐(0/30)
依頼期限:三日後の朝
翌日、冒険者ギルドで僕たちが受けた依頼がこれだ。Eランクになった影響か、討伐数がグッと上がってるの特徴だ。成功報酬は銅貨30枚。
受付嬢のスティアさんの説明によると、鉱山の一階層にいるデビルモールは狂暴なモグラ型モンスターだ。オルトン村からほど近い鉱山に棲息しているんだとか。
そこで働く鉱山労働者たちもツルハシで応戦するそうだけど、とてもじゃないけど手に負えないってことで討伐依頼は絶えないそうだ。
デビルモールは素早い動きで相手を翻弄し、落とし穴を巧妙に掘ったり鋭い角で襲撃したりして、鉱山労働者や冒険者を大いに悩ませているのだという。
そりゃ、そんなのが沢山いたら仕事にならないよねえ……。
僕の場合、落とし穴には特に気をつけたいところ。今は器用値と入れ替えるとHPが6になるからね。HPが1のときよりマシとはいえそれでも危ない。モグラが掘った落とし穴に落ちて人生終了なんて笑えないからね。
早速僕たちは鉱山へ出発したわけなんだけど、ユイがルンルンと鼻歌交じりで歩くのでまるで遠足のようだった。
「クルスさん、モグラ叩き、楽しみですねー!」
「ユイ、モグラ叩きって、ゲーセンじゃないんだから……」
「えへへっ。だって、こっちには最強のクルスさんがいますからね」
「とはいっても、僕だって器用値とかに切り替えたらHPが極端に少なくなるからね。油断大敵だよ」
「はぁーい!」
「……」
本当に大丈夫かな? ちょっと不安になってきた……。
まあでも、ユイの【糸】スキルって、地味に見えて結構凄いんだよね。時間制限付きの結界みたいなもんだから。
そうだ。一応、ユイから【観察眼】スキルを借りて周囲を確認しながら歩くかな。右列の連中が何を企んでくるかわからないわけだし。
「あ……」
「クルスさん? どうしました?」
「多分だけど、つけられてる」
「えぇっ⁉」
「静かに」
「……」
僕は靴紐を直す仕草をしつつ後ろを確認した。すると、一見誰もいないように見えるものの、茂みの中に誰かが隠れているのがわかった。【互換】スキルの鑑定能力じゃここまでわからなかったかもしれない。
見た感じ、2人いる。見たことあると思ったらやっぱり右列の連中の一部だ。
念のためにやつらのステータスを見てみると、低レベルな上にスキルも大したことがなかった。
物理攻撃が効かないスキルとかあると厄介なんだけど、そういうのは見たらない。そのうちの一人が、あとをつけていても目立ちにくくなる【追跡】スキルってのを使って追ってきたらしい。
ほかに目立ったスキルはもう一人のやつが持つ【落石】くらいか。これで大きな石を出現させ、自分の半径3メートル以内にいる対象に落下させることができるというものだ。
ただ、腕力値を100にできる僕からしてみたらあまり怖くないスキルだ。
あとは器用さと速度を30%上げるっていう、元のステータスが低いとあまり意味がないスキルだから全然問題ない。
一応隠し効果があるかどうか深掘りしてみたら、そういうのはないってわかったので安心だ。
それでも、やつらの目的がなんなのかまでは調べられないので不気味だ。
僕たちがどれだけ強いのかを見学するつもりかな? まあ隠してもいずれバレるだろうしそれは構わないけど。
捕まえることも考えたものの、思いとどまる。あんまり右列のやつらを刺激したくないしね。結果的に上の連中を引っ張り出すことになるだろうし。
ただ、監視されるのは癪だってことで、僕はユイの手を握った。
「く、クルスさん……?」
「一緒に走ろうか」
「あ、はい……ひゃっ⁉」
俊敏値100のスピードにユイがびっくりした様子だけど、いかに追跡者が素早くても追いつけないはず……。
「君たち、待ちなさい」
鉱山の入り口まで到着したわけだけど、僕たちは兵士さんに呼び止められたのでギルドカードを見せることに。
「なんだ、二人とも冒険者なのか。子供が遊びに来たくらいに思ったが」
「ははっ……」
女子高生のユイはともかく、僕は一応成人なんだけどね……。まあいいや。鉱山の中に子供や不審者が入らないようにするのは当然の仕事だろうし。
ちょっと足止めを食らった格好だけど、それは追跡者も同じなはず。
薄暗い鉱山内、僕たちは落とし穴に落ちないように慎重に進んでいった。即座に弓矢を放てるように、器用値を100にしてあるんだ。
「キュルルッ……」
「い、今なんか聞こえなかった?」
「き、聞こえたような気がします……」
「……」
モグラのモンスター、デビルモールは壁の中や地面の中からいきなり現れるらしい。
普段は姿を見せないけど、鳴き声でわかるみたいなので近くにいることは確かだ。
暗くて狭い坑道をゆっくりと踏みしめるように進んでいくと、複数の音が近づいてくるのがわかる。おそらく僕たちを土の中から追いかけてるんだと思う。
早く現れればいいのに、焦らせようとしてるのか音だけ立てて出てこない。
僕が落とし穴に落ちると、死ななかった場合でもユイが一人になってしまうので、焦らずに慎重に進まないと。
なんせこっちにはユイの【糸】スキルもあるし、僕の【互換】スキルを使えば、相手がタフでも腕力値に切り替えて一瞬で倒せる自信がある。
なのでペースを乱さず、足元にだけ注意してると、いかにも落とし穴っぽい箇所が2メートルくらい先にあるのがわかった。
おそらくあそこに足を置いたタイミングでモグラたちは襲撃してくるはず。
もちろん、あえて罠を踏むつもりはない。僕は右足で普通にそこを踏むつもりで足を浮かせてみせた。
「キュルルルァッ!」
遂に来た。大量のモンスターが、天井や地面、壁の中から滲むようにして出てきたんだ。人の膝ほどの大きさで、頭に二つの角が生えたモグラ型モンスターだ。
「キュッ……?」
でもやつらは動けなかった。当然だ。ユイの【糸】スキルが発動してるわけだからね。
僕はあらかじめ器用値に100振っていたこともあり、矢を放つとともに腕力値100に切り替えた。
「キュエエエェェェッ⁉」
デビルモールたちは一瞬で全滅し、モグラ型の魔石を5個も落としていった。
おー、こんなにドロップしたのか。それならもしやと思ってギルドカードを見てみると、デビルモールの討伐数:30/30になってた。
「す、凄いです! もう終わっちゃいました!」
「だね」
ユイが飛び跳ねて喜んでる。多分だけど、30匹以上は優にいたっぽいなあ。
自分のステータスを調べるとレベルは12になってた。もっと上がってると思ったけどこんなもんか。ユイのステータスも確認したらまだレベル11だったから、ここからは相当に上がり辛いんだろうね。
それにしてもこの場所って、落とし穴にさえ気を付ければレベル上げも魔石集めも楽そうだ。
「そうだ、ユイ。この調子でレベル上げして、モグラの魔石もいっぱい集めちゃおうか?」
「それ、いいですね!」
そういうわけで、僕たちはさらなる魔石と経験値を求めるべく、鉱山の一階を歩き回ることにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます