仮装をするのなら

 この時期は暗くなりのが早い。学校一帯は、校庭の照明があるので明るいが、五時を過ぎると外界はもう真っ暗だ。


 奴と自習室から帰るときに、ハロウィンの仮装の話題になった。


 どんな仮装をしたい?


 そう聞いたら、奴は悩んでしまった。そういえば、優柔不断なヒトだったんだ。


 あたしが仮装をするのなら、ウルトラマンとか、スーパーマンとか、絶対ヒーローになりたいな。


 そう言うと、奴は、なんで? とあたしの顔を見る。


 誰にも媚びない正義の味方って、きっとこの世にいないと思うから。


 あ、まじめに答えちゃったかなと思ったけど、奴は笑って、らしいなーと言ったあと、


 仮装するのならスマホかな、って言うから、物なの? なんで? って聞いたら、


 なんとなく、人と人とを繋ぐのっていいじゃん、って。


 お人好しだなって、思うけど、そこがコイツのいいとこだなって思えた。


 駅は目の前だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る