第6話(1)連戦連勝

                   6


「行ったわよ!」


「おっしゃあ!」


「ぐっ!」


 真珠の放った強烈なシュートがゴールネットを揺らす。


「よっしゃあ!」


 真珠が派手なガッツポーズを決める。


「ナイスシュート!」


「ま、まあ、多少は良かったんじゃないの……」


 円と雛子が声をかける。


「御幸真珠、やばいな……」


「ああ、野性味の中に鋭さが増してきている……」


「ちょっと前までは単なる野生児だったのにな……」


「おい、聞こえてんぞ! 誰が野生児だ⁉」


 相手チームの会話に対し、真珠が噛みつく。


「真珠ちゃん~めっ♪」


 恋が真珠の頭をポンと叩く。


「む……」


「ハットトリックなんだから余裕を持ちましょ?」


 真珠の活躍もあって、川崎ステラは快勝した。


「……よこせ!」


 真珠がパスを要求する。


「お願い!」


 円が真珠にボールを渡す。


「こっち!」


「そらっ!」


 真珠がダイレクトで逆サイドに走り込んだ雛子にパスを出す。


「もらった!」


 雛子がシュートを決める。


「ナイス!」


「オレの巧みなポストプレーに感謝しろよな?」


 円と真珠が声をかける。


「ま、まあ、それなりに良かったんじゃないの?」


「お前、いつでもそんな感じだよな……」


「雛子さんも得点力が上がってきましたね……」


 ベンチでヴィオラが呟く。川崎ステラは連勝となった。


「……よし、よこせ!」


 真珠が相手のディフェンスを背負う形になりながら、ボールを要求する。


「それ!」


 円は雛子にパスを出す。


「!」


「リターン!」


「はい!」


 雛子が走り込んだ円にパスを返す。


「オッケー!」


 円の放ったシュートが決まる。


「ナイスだわ!」


「オレを囮に使うとはな……」


 雛子と真珠が声をかける。


「円ちゃんも自信が出てきたわよね~」


 ベンチに座る恋が目を細める。川崎ステラは3連勝となった。


「ヘイ! パス!」


「よし!」


「……!」


 ヴィオラがボールをカットする。


「また大師だ!」


「嫌な所にいる!」


 相手チームのベンチが嘆く。


「……」


「‼」


「うわっ、そこをパスで通すか⁉」


 ヴィオラの見事なパスに相手チームのベンチがまた嘆く。


「攻守両面で頼りになるわよね~♪」


 恋が微笑を浮かべる。ヴィオラの堅実なプレーもあって、川崎ステラは4連勝。


「……よっと♪」


「くそっ! また百合ヶ丘だ!」


「怪我明けと聞いていたが……スケールアップしてないか?」


「さすがは『鋼鉄の貴婦人』だな……」


「『川崎の鉄壁』……」


「『微笑みの将軍』……」


「妙な二つ名が増えているような……まあ、いいけどね……」


 恋は周囲から聞こえる声に苦笑する。恋の守備も光り、川崎ステラは5連勝。


「……む、パスの出し所が……」


 ヴィオラがボールをキープしながら相手の堅い守備に顔をしかめる。


「ヴィオラちゃん~一旦下げて~」


 恋がボールを要求する。


「はい!」


 ヴィオラがバックパスを送る。


「よっと!」


「⁉」


 恋の鋭いパスが相手ディフェンスの裏に抜け出した魅蘭に通る。


「ナイスパスですわ!」


「くっ……!」


「甘い!」


 魅蘭が相手ゴールキーパーのタイミングを外し、ゴールを奪う。


「ちっ……」


「ふふっ、さすがはワタクシですわ!」


 魅蘭が自画自賛する。相手チームのベンチが唖然とする。


「きょ、今日4得点。あ、あんなピヴォ、ステラにいたのか?」


「御幸だけでも厄介だっていうのに……」


「魅蘭ちゃんもチームに馴染んできたわね~」


 恋が呟く。魅蘭のゴールが決勝点になり、川崎ステラは6連勝を収めた。


「……ヘイ!」


「頼む!」


「よし! ⁉」


 相手の出した速いパスを最愛が果敢に前に飛び出してキャッチする。


「くっ⁉」


「どんどんシュート撃ってけ!」


「……‼」


「なっ⁉ 四隅を狙ったシュートにあの反応⁉」


「それなら!」


「……む!」


「つ、強いシュートも弾かずにキャッチ……」


「あ、あんなゴレイロがステラにいるなんて聞いてないぞ⁉」


 最愛の再三に渡るナイスセービングもあって、川崎ステラは7連勝となった。


「最愛ちゃんも魅蘭ちゃんも大会までは隠しておきたかったけど、そういうわけにもいかないわよね~。そうだ、それならいっそ……」


 恋が腕を組んでうんうんと頷きながら呟く。ヴィオラだけが嫌な予感を抱くのであった。

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