赤ワイン

 ふと、ライフポイントに視点を移すと1番左の1つを残し、全てのライトが消えていた。そして、ライトの色は青から赤へと変化している。


現在ライフポイント1、青→赤。


(どうなっている!? なぜライフが!? さっきのペナルティか!?)


 残りライフが8あったものが、いきなり残り1になっている理由が他に思い浮かばず、勝手にそう結論づける。


 (さて、どうしたものか……。塩水で金属を錆びさせ、強度が落ちた所で引きちぎる……。その作戦もお見通しだったという事か……。こりゃ、下手に変な料理を語るとまた見破られるかもしれない……。今思えば、シュークリームの時からもっと警戒すべきだったな……。あれはあれで異常だ……。シュークリーム語りの下手さを瞬時に見抜いて、中身をカラシとすり替えて出してくるのだから……。あの辛さは効いた……。もう2度と食いたくないシュークリームだ……。さて……、次の料理を何にするか……だな……。 ローストビーフはまだ残っている……。ならば……、やはりこれにしよう……。)


「赤ワインが欲しい……。赤身肉があるなら……、この存在は外せません。赤ワインの濃い渋みと肉の脂身の相性は食した者にしかわからない最高の味。今ここで……! 味わわせて下さい!」


 すると、キッチンの冷蔵庫の大きな観音扉がゆっくりと開いた。その中には、適度に冷えた瓶入りの赤ワイン、そしてワイングラスが置かれていた。さり気に、ごく少量の塩も小皿に添えて。


(さっき開けた時はなかったのに……。それにしても塩までついてくるとは……。)


 栓を抜き、グラスにワインを注ぐ。それから、グラスをゆっくりと円を描くように回し、香りを楽しむ。その後に、グラスを口へ運び、優雅にテイスティング。


(これは……!?)


 赤身肉にピッタリの濃い目の赤ワインである。まさにローストビーフと相性抜群である。最初は肉のみで、次に塩を少量ふりかけて、さらにそれらを口にして、赤ワインを注ぎ込む。


(最高だーっ!)


 ぜひ、特別な日のディナーに召し上がっていただきたい

組み合わせである。そんな事を考えながら余韻に浸っていたが、ある異変に気づく。本来ならここで回復するはずのライフが点灯しないのである。


(こんなに美味い物を食ったのになぜ点かない……? ペナルティはあれで終わりではないのか……? ライフが強制的に減らされただけと思っていたが、どうやらこれ以降の回復は望めないらしい………。だったらあまりのんびりしてはいられない……。幸い、赤ワインはまだ残っている……。よしっ!)


 瓶入りの赤ワインを手に取り、キッチンから狙撃手の下へ向かおうとしたその時、再び赤い点の光が額に点った。光の先に視点を移すと、先程の狙撃手が再びこちらを狙っている。


(しまっ……! 気付かれt……。)

「ダーイ!!」


 狙撃手はここで初めて大声で言葉を発し、ゆっくりと引き金を引いた……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る