魔法もスキルも剣も使えないけど、それでも諦めきれない・・・虐げられ続けたあたしは最強を目指す

千石

第1話 虐げられ続ける少女

「ほーらレティ、食わせてやろうか?」


「レティは俺のがいいんだよな?」


「いやいやレティは僕のを食べるんだよ」


村の空き地で今日も空腹で倒れていたあたしは騒がしさに目を開ける。


あたしの名前はレティ。


物心つくころには親も兄弟姉妹もいなかったあたしは今までどうやって生きて来たのか分からなかった。


年齢はたぶん5歳くらいだったか。


誕生日が何日で、今日が何日で何曜日かなんか分からないしどうでも良かった。


とにかく何か食べたい。


常に空腹だったあたしはいつも何か食べることを考えていた。


寝ているときは空腹を忘れられるので空き地で良く寝ていた。


そんなときだった。近所のガキどもがあたしの前にやってきたのは。


あたしは億劫そうに目を開ける。


そうすると今日もまた近所のガキどもがちょっかいかけに来ていた。


「・・・」


ガキどもといってもあたしよりは年上なのだろう。


3人組が持ってきたのは、一般的には残飯と呼ばれるものであった。


何でも良い、食べさせろ。


あたしは3人が持っている残飯に向かって近づいていく。


力が入らないため這いずると言ってもいい。


「ほら、こっちだこっち」


「こっち、こっち」


「ほらほら、こっち」


3人のガキがあたしから離れるように待機しそれぞれが声を掛けてくる。


面倒くさい。食べて欲しいなら持ってこい。


あたしはそう思ったが声を出すのも辛いので少しずつ這っていく。


「やった!俺の勝ち!!」


あたしから見て一番近くのガキの所に近寄っただけなのだがそいつは喜ぶ。


「くそ!また負けた」


ボスッ


「ちぇ」


ぐちゃ


勝負に負けた2人の残飯が地面に叩きつけられる。


「ほら、お前ら行くぞ。甘味を奢ってもらうからな」


そうして近所の3人組がどこかへ歩いて行った。


あたしは、砂まみれになった残飯を口に入れる。


じゃりじゃり


不快な音が口の中で響くがもはや慣れ過ぎて何も気にならない。


あたしは他の2人が投げつけた残飯も拾い懐に入れた。


これで、2日は持つ。


少し元気になったあたしは立上り、村の周辺の森に向かって歩いて行った。






この世界には、魔法やスキルというものがあるらしい。


能力の大小はあれど、大体1000人に999人は魔法かスキルが使えるとのことだ。


当然、片田舎のこの村でもあたしを除いた全員が魔法かスキルが使える。


弱肉強食。


それがこの世界の真理だ。


強き者が偉く、弱き者は虐げられる。


こんな片田舎でも仕事がなく、近所のガキの投げつけた残飯を頼りに生きている。


まさに、あたしは最底辺だろう。


正直辛いという感情さえもはやよく分からないが、それでもあたしの中では一つの心の底からの強い欲求があった。




最強になってお前ら全員見返してやる!




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