第二十六話: 雀鳴く朝、井戸端会議
――チュンチュン、チュンチュン。
夜遅くまで続いた
「それにしても! よくこんだけの被害で抑え込めたもんだねえ!」
「うふふ、ショーゴちゃんたちが頑張ってくれたお
「相変わらず、この村には奥方様の他に神官はいないんだろう!?」
「ええ、司祭さまが来てくださっていたら助かったのですけれど。残念ながら、女神のご尊顔はいまだ
周囲を眺めて感心するジェルザさんと気安く言葉を交わしているのは母トゥーニヤだ。
彼女の問いかけに対し、女神のご尊顔うんぬん――『巡り合わせが悪い』というような意味の異世界慣用句を実感たっぷりに返す。
「ハッ! 女神も人が悪いもんだよ!」
「あらあら、まあまあ」
「い、いや、別に女神様を悪く言ったつもりはないんだけどさ」
「うふふ、慌ててどうしたの? おかしな人だこと」
まぁ、巡り合わせは悪かったが、どうにか村が壊滅を免れたのもまた女神の
こちらに関しては、運不運ではなく明確な事実として。
僕が子どもたちと共に村の外でイナゴ群を食い止めていた
そこで特に大きな役割を担っていたのが神官の
「アンタ一人だと【聖浄結界】で守れた畑は
「そうですわね~」
神官の行使する神聖術【
侵入を防げるのは生き物だけ、準備と維持に手間が掛かり、範囲もそこまで広くはないものの、数十メートル四方の畑を指定してやればイナゴごときの侵入は完全に防ぎきってくれる。
「後から【賦活再生】で
「はっはぁ、やっぱ
「……食らった物は戻せぬ」
「カーっ! もったいねえこった。クソイナゴども!」
話題に上がったもう一方の神聖術【
生物が負った損傷をたちまち元の状態へ
ただし、【草刈りの
落ちてしまった穂や実、折れた茎などを少しずつ癒やして回るのが関の山である。
「なるほどねえ! 奥さまの
「え? そ、そうかな? うん、まぁ、自分でも頑張ったとは思うけど……」
「うふふ、えらいわ、ショーゴちゃん」
『いかん! 落ち着け!』
「ママー!」
大きく広げられた母トゥーニヤの腕の中へと、まるで強力な磁石で吸い寄せられるかのように飛び込んでいく僕の小さな
『あー! あー! あー! そう言えば……他の
別に、僕らはここで早朝から
つい先ほど、起き抜けに、まさしく寝耳に水という具合で聞かされたところによると、本日の予定は、この僕も無関係ではいられないものとなっているらしい。
夕べの会議はうっかり途中で眠ってしまい、最後の辺りは話し合いがどう進んでいったのかを
年の初めで皆一斉に年齢を一つ上げる数え年の慣習に従い、僕は先日より七歳となった。
特に何か祝ったりするわけではないものの、この世界における七歳という年は、幼児を卒業し、ある程度の人格を社会的に認められていく節目の年に当たる。
平民であれば、家業で決まった仕事を任されたり、どこかへ
『なんにせよ、気を引き締めていかないとな……って、おい! 聞いているのか、楽天家!?』
「うーん……もうちょっとこのままで」
「まあ、かわいい」
『えっと、あー、うん。今はまだ幼児期のロスタイムみたいなものだと大目に見てほしい』
……と、まぁ、そんなこんなで待つこと
ガヤガヤ、ガシャガシャと賑やかな一団が、
「やっと来たかい!」
先ほどからずっと僕らの側で大人しくしていた五羽のモントリーが身を起こし、そちらの方へチュンチュンと
「うむ、待たせたな」
と、まず姿を見せたのはマティオロ氏である。
「よーし、よしよし! しばらく頼むぜ、お前たち」
「チュチュン、チュン」
その後にノブさん、そして三人の村の若者たちが続いていた。
彼らは持ってきた大荷物をモントリーの
モントリーの背中は大人がゆったり騎乗できるほどの広さがあるため、荷物の積載量も相当だ。
当然ながら、積み過ぎれば足は遅くなってしまうものの、動けなくなることはまずありえない。
「
「ええ、パパ。お願いしますね」
「任せておけ! 俺が命に替えても守ってみせる!」
「あらまあ、あなたの
「う、うむ、当然だ! 俺の命も命に替えて守り抜く! 留守中、村のことは頼んだぞ!」
「うふふ、ご武運をお祈りいたします。……女神よ、ご
この場に集まった全員……いや、母トゥーニヤを除く全員は、それぞれ武装していた。
冒険者
そして、僕もまた愛用のスコップを持ち、革の胸当てを身に着けている。
これは、やはり村の外へ連れていかれるということで間違いなさそうだ。
「パパの前に乗れ、シェガロ!
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