第4話 部活の先輩も見たいです

あかりとの放課後デートから一夜明け、登校しているとあかりに会った。

あかりは僕を見ると手を振りながら小走りで向かってきた。


「あっ先輩!おはようございます、昨日はありがとうございました。

とっても楽しかったです」


「僕もすごく楽しめたよ」


あかりはそれなら良かったですと言ってちょっとだけ僕との距離を詰めた。


「あと先輩!先輩ってなんの部活に入っているんですか?」


「僕はテニス部に入ってるよ」


「テニス部だったんですね」


「確かあかりは美術部だったよね」


「それなら話が早いです。今度、美術部で自分が描く絵を出さないといけないんですよ

 それで部活の先輩を描かせてもらえませんか?」


「いいよ、俺でよければ好きなだけ書いてくれ」


「はい!ありがとうございます。では私はちょっと、予定があるので先に行きますね」


そういう時少し早足で学校に向かった。


授業も終わり、部活に向かうと部室で一年が騒いでいた。


「なあ、あの森山さんに彼氏がいるって本当か?」


「聞いた、聞いた!なんか二年生らしいよ!」


「あんなクラスで一番人気の森山さんだから、彼氏はやっぱりイケメンなのかな」

と言った会話が一年生の中で行われていた


(ごめんね、その彼氏、僕なのよ!めっちゃ高いイメージ持たれてるけどイケメンでもないのよ)

と心の中で思っていた。


「あっ先輩、お疲れ様です」


部活の後輩が話しかけてきた。


「そういえば先輩、森山さんって知ってますか?先輩のクラスにもしかしたらその人の彼氏がいるかもしれないんですよ」


「へっ、へ〜知らないな〜」


「そうですか〜一体誰なんだろうな〜」


「そうだね〜」


と多少苦笑いをしながら誤魔化すことはできた。

しかし、今日はあかりが部活に来てしまうのだ。


部活が始まり、後輩とラリーをしていると、コートの外にあかりの姿が見えた。

あかりはちょっと手招きをして僕を呼んだ。


「あっ!ちょっとごめん!一旦抜けるから、なんかしてて!」


「あっ!はい!」


そう言うと、走ってあかりの元に向かった。


「どうした?あかり?」


「先輩、コートの中に入ってスケッチするのはいいでしょうか?」


「コートの中か〜まあ、テニス部の紹介の絵を描くとでも言ったら許可してくれると思うけど、入ったら気をつけてよ」


「はい!わかりました!」


それだけ言うと僕はあかりと一緒にはいかず先に戻った。

しばらくして、顧問に許可してもらったのかあかりがコート内のベンチに座って

スケッチし始めた。

戻って休憩していた一年生の中に入るとあかりの話をしていた。


「先輩!あれが噂の、森山さんですよ!でも美術部なのになんでここにいるんだろう?」


「ああ、多分、部活紹介の絵を描くんだろう」


「なるほど、だからいるんですか。でも部活中でも可愛い人を観れるのは目の癒しですわ」


「あんまりそんなことを言うとモテないよ」


「女子嫌いの先輩には言われたくありません!」


と、部内でもあかりのことが多く挙げられていた。


「先輩、試合しませんか?」


とある、後輩に持ちかけられ、またコートに入った。

コートに入るとあかりが横の方から僕の方を見て(ファイト!)と

ジェスチャーで伝えてくれた。

試合は始めは僕が安易と一ゲーム取り休憩に入った。


しかし水筒を取りに行こうとした時、隣のコートの打った玉が打ちどころが悪かったのか真横に飛んでいき、あかりに当たりそうな軌道になっていた。


「あかり!危ない!」


と言って本人の注意を引くが絵を描くのに集中しているようで気づいていなかった。

僕は走ってなんとかあかりの前に飛び込んでラケットでギリギリ、飛んできた玉を弾いた。

あかりは倒れているのが僕と気づきすぐに声をかけた。


「先輩!大丈夫ですか」


凪はあかりの前に飛び込んで見事、玉が当たるのを防いだのである。


「ああ、大丈夫、それと、やっぱりコートの外から見る方が安全だな」


「そう、見たいですね」


あかりはちょっと耳元に近づいてこっそり

(さっきの先輩、とってもかっこ良かったです)

それだけ言うとスケッチ道具を持ちコートを出た。


あかりがいなくなり一部始終を見ていた後輩が駆け寄ってきた。


「いや〜先輩、かっこよかったっすね〜」


「すみません、あれ飛ばしたの俺で」


「俺が女子だったらあれされてたら、好きになりそう」


と何人からも同時に話しかけられた。


「そんな、急いで喋らなくても」


次々向けられる話をひとつひとつ返しながら僕は部室に戻った。

その次の日には俺がクラスの人気者森山さんを守った男として有名になった。


部活の後輩達が、俺が森山あかりの彼氏と知るのはまたちょっと先の話。







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