第29話 温泉旅行⑧ ついに混浴が実現する?

 朝日で俺は気持ち良く起きられた。旅行2日目はどんな日になるかな?


「ねぇ、貴くんの布団めくってみない?」


「良いわね。リアル朝立ち観てみたいわ♪」


目を覚まして早々に聴いた会話がこれかよ! 朝でもこの2人は変わらないようだ。


「今布団めくっちゃダメです」

俺は目を開けて上半身を起こしてから2人に注意する。


注意する理由は言うまでもなく、実際に朝立ちしてるからだ。姉ちゃんと玲那さんに見られたくないからな。


「貴くん聴いてたの? 盗み聞きは感心しないね~」


「2人が話す少し前に起きたんですよ!」


「少し前? じゃあもう終わってる?」

しょんぼりする玲奈さん。


「終わってるならめくって良いはずじゃん。つまり進行中だよ」


「そっか~♪」


澪さんが余計な事を言わなければ、玲奈さんは諦めたのに…。


「貴弘君、朝立ちは恥ずかしい事じゃないよ。だから見せて?」


“恥ずかしくない=見せてOK”にはならないだろ!


「早くしないと朝立ちが終わっちゃうね。玲奈ちゃん、すぐに布団をどかそう」


「わかった♪」


2人が俺の布団を引っ張ろうとした瞬間…。


「澪。いい加減にしなさい!」


「姉さん。須藤君嫌がってるでしょ?」


2人のそばにいた姉ちゃんと玲那さんが止めてくれた。本当に助かったぞ!


「…仕方ないなぁ。貴くんの朝立ちが終わるまでのんびり待ちますか」


「そうだね」


澪さんと玲奈さんは、俺のそばに座って観察してきた。


「ワタシ達が朝ご飯を食べる時間は、貴くんの朝立ち次第なんだよ」


「私お腹ペコペコ。だから早く収まってね♪」


“すぐ終わってくれ”と思う程長続きするよな。しゃっくりが良い例だと思う。


「貴くん、ちょっと訊きたいんだけど…」

暇そうにしている澪さんが尋ねてきた。


「何ですか?」


「昨日、良い夢見なかった?」


彼女の言葉を聴き、姉ちゃんが気まずそうな顔をする。


昨日の深夜、おそらくだが澪さんが姉ちゃんを襲ったはず。その時の姉ちゃんの喘ぎ声が忘れられない…。


って、今考えちゃダメだ! 収まるどころか大きくなってしまう。


「…特に見てないですね」

なるべく冷静を装いながら答えた。


「ふ~ん…」


まさか勘付かれた? いくらなんでもあり得ないよな…。



 その後、俺は姉ちゃん・玲那さんと何気ない雑談をして冷静さを取り戻し、収まってすぐに布団から脱出する。


脱出後は全員で食堂に向かい、おいしい朝食を食べた。観光はもちろんだが、食事も旅行の魅力だよな。


朝食を終えて部屋に戻った俺達は着替えを始める。昨日の件のおかげか、誰も恥ずかしがっていないな…。


「みんな、お楽しみは夜にね~」

澪さんの発言に女メンバー全員が頷いた。


夜にまた何かやる気なの? 気になるが墓穴を掘りそうなので訊かなかった。



 旅館『恋月』を出て駐車場に向かうと、昨日と同じ沢田さんのタクシーが停車している。澪さんが知らない間に時間を指定したようだ。


乗る前に彼女が話を切り出したんだが、乗る座席は昨日と同じになった。澪さんは沢田さんとよく話していたし、助手席のほうが良いよな。


俺と玲那さんは真ん中の座席、姉ちゃんと玲奈さんは最後列の座席になる。これで気になる点はないし、すぐ乗り込もう。



 「昨日の夜はどうだった? 楽しめた?」

タクシーを発進させて早々、沢田さんが澪さんに尋ねる。


「楽しめましたよ~。ワタシ達全員、貴くんに勝負下着を見せたんです。充実した時間でした」


「へぇ~。最近はそんなのが流行ってるのね。若い子には付いていけないわ…」


流行ってないよ!? 発案者の澪さんがおかしいだけ!


「そこまで関係が進んでると、温泉が別々なのは残念なんじゃない?」


「確かにそうですが、混浴できるところはありませんしね…」

テンションを下げる澪さん。


「あるわよ? 混浴できるところ」


「本当ですか!?」


「ええ。4~5人を対象にしたというべきかしら? そこは宿泊施設じゃないから、旅行者の橋場さんが見落とすのも無理ないわ」


「そこ、今から予約できませんか!?」


澪さんのテンションが急上昇している。行く気なの?


「わたしので何とかしてみるわ」


「お願いします!」


勝手に話が進んでいるが、澪さんは気付いているんだろうか?


「澪さん。俺達温泉旅館に泊まってるのに、別の温泉に行くんですか?」

今日は観光地に行く予定だろ?


「貴くん、今は夏だよ? 何もしなくても汗をかくんだから、温泉だって何度も入って良いの! ね? みんな?」


澪さんが後ろを向いて確認をとる。


「そうですね。汗臭いのは嫌です」

同意する玲那さん。


「裸になると開放的になるから良いよね♪」


玲奈さんはただの露出狂じゃん!


「でも替えの下着がない…」

姉ちゃんが心配そうにつぶやいた。


「だったら、下着を買ってから向かえば良いじゃん」


「橋場さんの言う通りね。無難だけどショッピングモールに行きましょうか」


観光地そっちのけで温泉に行く流れになっている…。このグダグダした感じのほうが俺達に合ってるかもな。


そんな事を思いながら、タクシーはショッピングモールに向かう。

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