第1章:風の予感 / 第3話:父と子の対立

朝の浜田家の食卓には、昨晩よりも少し緊張した空気が流れていた。真が帰郷してから、父と子の間には、浜田商事の今後についての議論が絶えなかった。


「真、俺たちの商売は歴史と信用、そして顔の見える営業だ。それを忘れてはいけない」と修一が切り出した。


真は穏やかに返答した。「それはわかってる、父さん。でも、時代は変わってる。新しいツールや手法を取り入れないと、浜田商事も時代に取り残されるよ。」


佐々木孝介が朝の新聞を片手に、この親子のやり取りをじっと聞いていた。彼は浜田家に長く仕え、修一の言葉にも一理あると感じていたが、真が提案するデジタル手法にも興味を抱いていた。


修一は真の言葉に少し苛立ちを感じながらも、「デジタルって、本当にうちのような地方の中小企業に合うのか?」と疑問を投げかけた。


「合うと思う、父さん。僕が都会で経験したこと、それはどんな規模の会社でも、デジタルを上手く活用すれば、ビジネスチャンスが増えるということ。」真は熱を込めて語った。


修一は深く息をついた。「真、君が言う通り、デジタルの力を借りて、何か新しいことを始めるのは悪くないかもしれない。でも、私たちの伝統を捨てるわけにはいかない。」


真は父の言葉を受け止めながら、「伝統を捨てるつもりはない。むしろ、伝統とデジタルを融合させて、新しい浜田商事を築きたいんだ。」と力強く答えた。


朝食が終わる頃、二人の間にはまだ疑問や不安が残っていたが、同時に新たな道を模索する決意も生まれていた。

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