第9話(4)高岡にて

                  ♢


 富山県の高岡市の某所には、深海率いる富山隊と、三丸率いる福井隊がいた。


「わざわざご足労をいただきまして……」


 深海が頭を軽く下げる。三丸が苦笑する。


「よせ。この間はそちらに来てもらったのだから、こちらが出向くのが当然だろう」


「ふむ……」


「それはそうと……アホ梅太郎からは聞いているか?」


「ええ……」


 三丸の問いに深海が頷く。


「そうか、あのアホは一体何を考えているのか……」


「まさかただの気まぐれというわけではないと思いますよ」


「やつの言うことに従うのか?」


「各隊で足並みを揃えておいた方が良いでしょう」


「まあ、それはそうだが……」


「それよりもですね……」


「ん?」


「じゃんけんぽん。……オレの勝ちですね。それではお願いします」


「ちっ……」


「……ではまず……宙山隊員! 宇田川花隊員! 宇田川竜隊員!」


「「「はっ!」」」


「まずは貴方たちでツインアタックを行ってください。仮想イレギュラーは三丸隊長です」


「なんでワタシがこんなことを……」


「遠慮はまったく要りません。それでは始め!」


「宙山隊員……例えばですが……火弾のような魔法は使うことは出来ますか?」


「そうですね……火で暖める魔法を応用すれば……威力はさほどではありませんが」


 花の質問に雪が答える。花が頷く。


「結構。それでは火弾を放って、遮蔽物の多い二時の方向に上手く誘導してください」


「はい!」


「……」


「……上手に誘導しましたね。竜!」


「う、うん! 宙山隊員! 遮蔽物に向かって、回復魔法の応用形を放ってください!」


「分かりました!」


「! 回復ではなく、状況を進めたのか⁉」


 根腐れが進んだ遮蔽物が折れて、三丸を覆い隠すように倒れる。三丸はなんとかかわす。


「『魔之分析』……徹底的な分析で、様々な魔法を駆使させるというわけか」


 葉が腕を組みながら呟く。


「ふむ……次は、宙山隊員! 志波田隊員!」


「はっ!」


「おっしゃあ!」


「始めてください」


「志波田隊員、考えがあります……」


 雪が口を開く。蘭が耳を傾ける。


「聞かせてみな」


「……というのはどうでしょうか?」


「……へえ、なかなか面白そうじゃねえか。良いぜ、乗った」


「では……!」


 雪が右手を掲げる。蘭が吠える。


「うおおおっ!」


「!」


 体を一回り以上大きくさせた蘭が金棒を振るう。強烈な攻撃だったが、三丸は受け止める。


「『魔之鬼神』……パワーをアップさせたのね、シンプルだけど効果的だわ」


「魔法ってすごいね……」


「あの攻撃を受け止める三丸隊長も素でヤバいけどね~」


 花が分析する横で竜が唖然とし、天空が笑う。


「それでは次は……佐々美隊員! 氷刃隊員!」


「はっ‼」


「は、はい!」


「どうぞ始めてください」


「氷刃隊員……東尋坊では、宙山隊員と組んでいたな?」


「あ、は、はい……」


「銃弾に魔法で追尾機能を持たせていたかな……」


「そ、そうですね……」


「まあ、色々とやり様はあるが……銃を撃ってみろ」


「は、はい……!」


「掛けまくも畏き……恐み恐み申す!」


「‼」


 葉が唱えると、銃弾が複数に分身する。三丸は面食らいながらもそれをかわす。


「ちっ、かわされたか……氷刃隊員、他にも神様にお願いすれば色々と出来るぞ?」


「か、神様、ちょっとチート過ぎませんか⁉」


「『神如射手』……神力も素晴らしいものですね」


「元々正確な射撃に補正がかかるのは頼もしいことだな」


 雪と蘭が並んで頷く。


「続いては……佐々美隊員! 志波田隊員!」


「はっ……!」


「よっしゃあ!」


「どうぞ、お願いします……」


「さて、どうする?」


 蘭が葉に尋ねる。葉が顎をさすりながら答える。


「鬼に金棒とくれば……あれだろうな」


「あれ?」


 蘭が首を傾げる。佐々美が指示する。


「金棒を振ってみろ」


「ああ……」


「掛けまくも畏き……恐み恐み申す!」


「ふん!」


「⁉」


 蘭が金棒を振り下ろすと、雷が落ちる。三丸はぎりぎりでかわす。


「『鬼神之雷』……自然環境すらも操るとは……」


「あれをかわす三丸隊長も素でエグいな~」


 花が驚く横で、天空が笑みを浮かべる。


「それではお次は……雷電隊員! 宇田川花隊員! 宇田川竜隊員!」


「ほ~い♪」


「「はっ!」」


「……お願いします」


「雷電隊員、遮蔽物の多い地点に突っ込んでください」


「ん?」


「竜、分析結果を……」


「う、うん……実力差はあると思うので、遮蔽物を上手く利用すれば差は埋まるかなと……」


「オッケー、分かった~♪」


 天空が果敢に突っ込む。三丸もそれを迎え撃つ。


「単純に殴り合いを所望か! 良い度胸だ!」


「三丸隊長、美人だけど、ちょっちバーサーカー過ぎるな~」


 天空が花たちの提案を容れ、遮蔽物の多い地点で三丸と殴り合う。花が淡々と呟く。


「『人事天命』……言葉の通りですが、意外と聞き分けの良い方で良かった……」


「……ここまでだ! お前ら、後は各自連携を確認しておけ!」


 三丸は天空との戦いを切り上げ、皆に指示を出して、深海の下に歩み寄る。


「梅太郎くんの言に従い、残りの組み合わせは温存……予定通りですね」


 深海が頷く。

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