第8話(4)三隊揃い踏み、しかし……
「火の玉は任せて下さい!」
大海が声を上げ、石川隊が前に進み出る。夜塚が笑みを浮かべながら告げる。
「それじゃあ、こっちもツインアタックで決めていこうか~♪」
「はっ!」
「古前田隊員、星野隊員!」
「おっしゃ頼むぜ!」
「了解!」
月が慶を持ち上げ、空を飛ぶ。火の玉の影たちの上に行く。
「高度はたかが知られているな! おらあっ!」
「ボアアッ!」
高い位置から繰り出された慶の槍で貫かれ、火の玉の影たちは半分霧消する。
「どうだ! 『仏槍刺突』!」
「古前田隊員! 受け身をお願いします!」
「あ、それがあったか……うわあああっ⁉」
月の落下が上手く行かなかったが、慶たちの受け身は上手く行った。
「古前田隊員連チャン行けるかな~?」
「どんと来いですよ!」
慶が夜塚に答える。
「その意気だよ! 疾風隊員!」
「はい!」
「うおおっ!」
「はああっ!」
「ボアアッ‼」
慶の槍と大海の剣による攻撃で火の玉の影たちはもう半分霧消する。
「『刀槍之嵐』……シンプルだけど強力……この攻撃に巻き込まれたら大変だね……」
夜塚が笑みを浮かべながら呟く。
「もう四分の一ほど残っています!」
月が確認する。
「しつこいね……疾風隊員、星野隊員、決めちゃって!」
「「はい!」」
大海と月は揃って返事する。月が大海を持ち上げ、空に飛ぶ。
「……良いわね? 3、2,1,はい!」
「うおおおっ‼」
「ボアアッ⁉」
「『落下之風』……どうせ落ちるならその勢いに乗せて攻撃か……逆転の発想だね」
夜塚が笑みを浮かべながら満足気に頷く。火の玉の影たちはほぼ霧消する。
「ではトカゲの影どもは我々が倒すか……」
三丸と福井隊が前に進み出る。
「志波田隊員、宇田川花隊員、宇田川竜隊員」
「おうよ!」
「はいっ!」
「は、はい……!」
「ビシっとしろ、竜!」
「え、ええ……」
蘭に背中を叩かれ、竜が背筋を正す。花が声を上げる。
「志波田隊員、集中を!」
「分かっている! ……見えたぜ!」
「ギエエッ!」
蘭の金棒による強烈な攻撃を食らい、トカゲの影たちは半分霧消する。
「片方の眼で索敵し、もう片方の眼で相手の弱点を把握……『鬼ノ双眼』、イケるな……」
三丸が腕を組みながら頷く。花が再び声を上げる。
「まだ50パーセントの影が残っています!」
「そうか……志波田隊員、氷刃隊員!」
「おう! よし、来い! 氷刃隊員!」
蘭が陸人と距離を取って向かい合う。陸人が戸惑う。
「で、ですが……」
「良いから来い!」
「え、ええい!」
「おらあ!」
「ギエエッ‼」
「飛んできた銃弾を金棒で相手に向かって打ち返す……『鬼之弾丸』、エグいな……」
三丸が腕を組みながらうんうんと頷く。花が三度声を上げる。
「影は半分霧消! ですが、まだ25パーセント残っています!」
「しぶといな……氷刃隊員、宇田川花隊員、宇田川竜隊員! 決めろ!」
「はいっ! お願いね、陸人くん!」
「た、頼むよ!」
「期待され過ぎても困るけど……」
「そんなこと言わない!」
「わ、分かっているよ! ……見えた!」
「ギエエッ⁉」
「『神眼射撃』か……位置などを正確に補足した射撃……あれはそうそうかわせまい」
三丸が腕を組みながら満足気に頷く。トカゲの影はほぼ霧消する。
「もうほとんど終わりましたか、さすがですね。こちらも第二陣をほぼ掃討しました……」
歩み寄ってきた夜塚と三丸に深海が答える。
「ブオオン……」
「ギエエ……」
「ボアア……」
「むっ⁉ ま、まさか……」
わずかに残っていた、バイクとトカゲと火の玉の影たちが不穏な動きを見せる。なんと、それぞれの影が融合し、一回り巨大な影になったのである。深海が驚愕する。
「‼ イ、イレギュラーが三種融合した……?」
「危険度がSに上昇!」
「エ、Sだと⁉」
入った通信に三丸が驚く。
「……!」
「! 全員、回避行動を!」
「ブエアン‼」
「⁉」
巨大な影が攻撃を繰り出す。夜塚の声かけもあり、直撃はなんとか避けられたが、それでも全員が吹っ飛ばされる。防御態勢を取っていた夜塚が再び周囲に声をかける。
「大丈夫かい⁉」
「な、なんとか……」
「大丈夫そうではないみたいだけど……生きてはいるね、良かった……」
「み、皆でツインアタックを食らわせれば……」
「……もう君らにそんな余力が無いだろう」
大海の言葉に夜塚が首を左右に振る。
「し、しかし……」
「ここは任せておいてくれ……二人とも!」
「えい‼」
「むん‼」
「破竹がバイクのエンジンを狂わせ、松っちゃんがトカゲの眼を潰し……ボクはこの黒部ダムの水を使わせてもらう!」
「ブエアンン‼」
「水克火! 火の玉には水はよく効くだろう⁉」
「ブエアン……」
巨大な影がゲート内に吸い込まれていく。ゲートはすぐ消える。
「待て! ……逃げたか。ゲートも消失……しかし、イレギュラー三種融合とはね……」
夜塚が彼にとっては珍しく険しい表情を浮かべる。
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