第8話(2)黒部ダム付近にて
「ピィー!」
「!」
アラーム音が鳴り響く。
「どうしました?」
深海が冷静に通信する。
「ゲート開放反応です! 第四部隊に出動を要請します!」
「……今日は待機だと思っていましたが?」
「ついさきほど、同時多発的に、富山県各所でゲート開放反応あり!」
「むっ!」
「第一から第三部隊もそれぞれ出動! 予備隊を除けば、動けるのが第四部隊のみです!」
「ふむ……珍しいこともありますね……」
深海が腕を組む。
「出動をお願い出来ますか⁉」
「それはもちろんです……皆さん!」
「はっ!」
葉らが立ち上がり、すぐさま出動する。
「……三ヶ所どころではないですね」
移動中の車内で、報告と地図を照らし合わせて雪が静かに驚く。
「まさしく同時多発だな」
葉が頷く。深海が説明する。
「我々が向かう所も含めると、合計十か所です。第一から第三部隊は隊をそれぞれ三隊に分けて対応に当たっています」
「間に合いますか?」
「既に隣県に応援要請は出してあります」
雪の問いに深海が答える。
「……ここがゲート開放反応のあった地点です」
深海と天空たちが車から降りる。深海が振り返って告げる。
「……分かりました。後はお任せ下さい」
「ご武運を!」
移送を担当した運転手が敬礼をした後、車を移動させる。
「黒部ダム付近ですか……偶然とはいえ、こんなこともあるのですね……」
「なにか?」
「いいえ、なんでもありません……」
葉の問いに対し、深海が首を左右に振る。
「ゲート、開放しつつあります!」
雪が指を差す。
「……!」
ゲートから多数のバイクの形をした黒い影が飛び出してくる。
「パターン黄、悪機です!」
「危険度は?」
「Cです!」
「了解しました……」
深海が通信手とのやり取りを終える。天空が左の掌を右手でポンポンと叩く。
「よっしゃ、さっさとやってしまいましょう♪」
「……数が多いので厄介です」
「あれくらい大したことありませんよ!」
「雷電隊員、ちょっと待って下さい!」
「おおっと⁉」
深海が珍しく声を張り上げ、走り出そうとした天空を止める。
「なんだか嫌な予感がします……」
「予感って、また非科学的なことを……」
天空が苦笑する。
「それはオレもそう思います。ただ、効率の良い討伐を行った方が良いでしょう」
「効率の良い?」
天空が首を傾げる。
「体力を出来る限り温存させるのです。ここが早く済んだら、他のゲート開放地点に応援に向かうことになるかもしれませんから」
「ふむ……」
「分かりましたね?」
「了解です!」
天空が敬礼する。
「佐々美隊員」
「はい」
「まずは連中の機動力を奪いましょう」
「分かりました。掛けまくも畏き……恐み恐み申す!」
「‼」
バイクが次々と横転し、霧消する。
「……タイヤをパンクさせ、転倒させるよう仕向けました」
「上出来です。大分数が減らせましたね」
深海が満足気に頷く。
「……‼」
残っていたバイクの影が深海たちに向かってくる。
「まだ多いですね……宙山隊員!」
「はい!」
「お願いします」
「はっ! ……それっ!」
「⁉」
氷の矢がタイヤを貫いたり、車輪に挟まったりして、バイクはこれまた次々と派手に転倒。影のほとんどが霧消する。
「雪っぺ、どこから出したのさ、あの氷の矢は?」
「黒部ダムの水を少し拝借して、凍らせたわ」
雪が天空の問いに答える。深海が腕を組む。
「ふむ……」
「すみません、深海隊長……」
「いえ、緊急事態ですから、やむを得ないでしょう……」
「~~!」
まだわずかに残っていたバイクの影が怯まずに向かってくる。
「イレギュラーの数が大分減らせましたね……さあ、出番ですよ、雷電隊員」
「待ってました!」
「ただし……」
「え?」
「効率の良さは忘れないように……」
「は、はあ……」
「向かってくるぞ!」
葉が声を上げる。
「! ……要は一撃で仕留めろってことかな? それならっ!」
「……⁉」
「『地割』!」
「~~⁉」
大きく飛び上がった天空が地面をかかと落としで叩き割る。それによって生じた大きな穴に車輪を取られて、バイクは次々と転倒、霧消する。
「ふう、ざっとこんなもんでしょ?」
「……幸いダムには影響が無いようですが、無茶をしますね……」
深海が苦笑しながら頭を抑える。そこに通信が入る。
「新たにゲート開放反応! パターン赤、妖魔です!」
「同じくゲート開放反応! パターン青、巨獣です!」
「なっ⁉」
通信の内容に深海たちが驚く。
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