第6話(4)ツインアタック執行

「まさかとは思うが……」


「キキ……」


「ブオ……」


 巨大な鳥の影と大型車の影が合わさって、一つの大きな影になり、それが数体、三丸たちの方に向かってくる。三丸が頭を軽く抑える。


「また融合したか……」


「先日の立山連峰に引き続いて、こういうレアケースに遭遇するとは……」


 三丸の横で深海が腕を組む。


「キブオッ!」


「大型車に翼が生えた⁉」


「キモッ!」


 竜の隣で、花が顔をしかめる。


「キキブオッ!」


「は、走っている!」


「ますますキモッ!」


「宇田川竜隊員!」


「は、はい!」


 竜が三丸に返事する。


「……どう見る?」


「……主に機動力が格段に上がりました!」


 竜が即、分析結果を三丸に伝える。深海が呟く。


「厄介ですね」


「ああ」


「さっさと片付けますか……」


 深海が前に進み出て、自らの側頭部を抑える。


「どうするつもりだ?」


 三丸が尋ねる。深海が首だけ振り返って答える。


「エンジン系統にトラブルを発生させます」


「なるほど……」


 三丸が頷く。


「それでは……」


「ちょっと待て」


 三丸が再度呼び止める。


「え?」


「これは訓練だ」


「! まさか……」


「ああ、奴らに任せる」


 三丸が陸人たちを指し示す。


「……本気で言っているのですか?」


「本気だ。実戦経験に勝る訓練はないからな」


「……」


「なんだ?」


「彼の影響ですか?」


「まあ、否定はしない……」


 三丸が肩をすくめる。


「……良いでしょう」


 深海が頷く。


「感謝する」


 三丸が笑顔を浮かべる。


「最初はどうします?」


 深海が尋ねる。


「まずは数を減らす」


 三丸が影の方を指し示す。


「ええ……」


「というわけで……雷電隊員!」


「え⁉ は、はい!」


 三丸から突然呼びかけられ、天空が戸惑う。


「ブレスレットを着けろ!」


「は、はい!」


 天空が右腕にブレスレットを着ける。


「志波田隊員! ブレスレットを着けろ!」


「はっ!」


「よし……二人とも右腕をかざせ!」


「は、はい!」


「はい!」


 腕をかざした天空と蘭が同じ色の光に包まれる。三丸が蘭に対して声をかける。


「志波田隊員、まずは影の数を減らしたい!」


「了解!」


「ただでさえ高い貴様らの身体能力は格段に上がっているはずだ! 制空権を奪れ!」


「了解しました! いくぞ、雷電隊員!」


「え⁉ ど、どうすれば良いんですか?」


 天空が首を傾げる。


「難しいことは考えるな! どうせ考えても分からんタイプだろう!」


「初対面なのによく分かってらっしゃる♪」


 天空が笑顔を浮かべる。


「飛ぶぞ! アタイにタイミングを合わせろ!」


「了解で~す♪」


「行くぞ、3、2、1、GO!」


 蘭と天空が同時に飛び上がり、鳥と車が合わさった影の上を行く。


「おお~」


「食らえ!」


「『ジャンピングカークラッシュ』!」


 蘭が金棒で、天空が拳で、打撃を放つ。


「キブオッ⁉」


 蘭と天空の打撃をまともに食らい、多くの影が霧消する。深海が頷く。


「ふむ、大分減らせましたね……」


「さながら『天空鬼翔』といったところか……」


 三丸が呟く。深海が首を傾げる。


「……疑問なのですが……そのネーミングは四文字が絶対なのですか?」


「絶対というわけではない、あの馬鹿が言い出したことだ」


「それならば……」


「一応統一しておいた方が良いだろう……」


「ふむ……」


「さて、お次は佐々美隊員!」


「はい!」


 葉が前に進み出る。


「宇田川姉弟! 援護しろ!」


「了解!」


「りょ、了解!」


 花と竜が進み出て、葉とともにブレスレットを着けた腕を掲げる。


「頼む!」


 葉が花たちに声をかける。


「はい……11時の方向! 影が数体固まっています!」


 花が声を上げる。


「ひ、火を付ければまとめて始末出来るかと!」


 竜が分析結果を伝える。


「分かった! 掛けまくも畏き……恐み恐み申す!」


「キブオオッ⁉」


 葉が唱えると、一体の影が爆発し、それにつられて数体が霧消する。


「なるほど、ガソリンを引火させたのか……連携が取れている。さながら『神之双眼』といったところか……」


 三丸が腕を組んで頷く。深海が頭を抱える。


「名勝で爆発させるというのはちょっと……」


「火はすぐに霧消した。そこまでの影響はない……!」


「キブオオッ!」


 残った影の数体が翼を使って、それぞれの方向に飛び始めた。三丸が舌打ちする。


「ちっ、翼に慣れ始めたか……」


「このままだと逃げられてしまいます!」


「分かっている! 氷刃隊員!」


「は、はい⁉」


「貴様の出番だ! すべて撃ち落とせ!」


「む、無茶ぶりです! それぞれ別々の方向に飛んでいるんですよ⁉」


「心配するな! 宙山隊員! 援護を頼む!」


「了解しました!」


「え?」


「氷刃隊員! ブレスレットを掲げて!」


「は、はい……」


 陸人が雪に従う。


「とにかく撃ってください!」


「ええ……?」


「早く!」


「わ、分かりました!」


「それっ!」


「ええっ⁉」


「キブオオオッ⁉」


 陸人の撃った銃弾が、方向を変えて、飛び去ろうとした影たちに着弾し、霧消させる。


「魔法で銃弾に追尾性を持たせたか……『魔法射撃』というのはどうだ?」


「良いのではないですか……」


 三丸の問いかけに深海が応える。


「……貴様ら、よくやってくれた」


 三丸が隊員たちに向かって声をかける。深海が告げる。


「訓練は終了です」


「帰投するとしよう……」


 三丸が隊員たちにあらためて声をかける。

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