第3話(4)氷刃の如き射撃、そして……

「ああ……」


「ひいっ⁉」


 陸人が銃を構えながらビクッとなる。


「……」


「………」


「……脅え過ぎだ」


「す、すみません……」


 陸人が軽く頭を下げる。


「そういえば……」


「ひっ⁉」


 陸人が銃口ごと三丸の方に振り向く。


「ば、馬鹿! 銃をこっちに向けるな!」


「ご、ごめんなさい……!」


「落ち着け……」


「はい……」


「…………」


「……………」


「……落ち着いたか?」


「はい……」


「そうか。出来る限りで構わないが……」


「ええ……」


「木々には傷を付けないようにして欲しい」


「え?」


 陸人が目を丸くする。


「いや、無理を言っているのは百も承知だ……可能な範囲で構わん」


「木々に傷を付けない……」


「そうだ」


 三丸が頷く。


「……そんなことで良いんですか?」


「なに?」


「!」


「ギャッ!」


「……!」


「ウギャッ!」


「……‼」


「グギャッ!」


 陸人が正確無比な射撃で黒い爬虫類たちを射倒してみせた。


「な、なんと……」


「ダ、ダメでしたか?」


「いや、見事だ。精度といい、威力といい申し分ない……まさに氷刃の如き射撃……」


 三丸が感心する。


「ぴ、ぴえええん!」


「ど、どうした⁉」


 急に泣き出した陸人に三丸が驚く。花が説明する。


「あ、緊張の糸が切れたみたいで……反動でこうなってしまうんです」


「そ、そうか……体力面に加えてメンタル面が今後の課題ということだな……」


 花の説明を聞き、三丸が頷く。


「ギャアッ!」


「む!」


 隠れていた爬虫類たちが動き始める。蘭が舌打ちする。


「ちっ、まだいやがったか!」


「すみません、探索が足りませんでした……」


「いや、小型ゆえに見逃すのも止むを得ないかと」


 頭を下げる花を竜がフォローする。三丸が笑う。


「ふっ、姉思いだな……」


「そういった意味では……」


「分かっているさ、危険度は極めて低いだろう?」


「ええ……」


「ギャアアッ!」


「ギャアッ! ギャアッ!」


「……なんだ?」


 蘭が首を傾げる。眼鏡のフレームを抑えながら竜が呟く。


「……巨獣同士で共鳴し合っている?」


「どういうことだ?」


 三丸が竜に問う。


「それはなんとも……!」


「ギャアアアッ‼」


 爬虫類同士が接近し、黒い光に包まれたかと思うと、一匹の巨大な爬虫類に変貌した。


「なっ⁉」


「が、合体⁉」


 蘭と花が驚く。三丸が顎に手を当てる。


「これは……なんとも珍しいパターンだな……ん?」


 三丸の下に通信が入る。


「三丸隊長、危険度の上昇を確認しました」


「いくつだ?」


「Aです」


「一気に跳ね上がったな……了解」


 三丸が通信を切る。


「ギャアアアアッ‼」


「ふむ、目を潰した大型の奴らまで取り込んだか……」


 三丸が接近する。花が声を上げる。


「き、危険です!」


「問題は……ない!」


「⁉」


 三丸が爬虫類の足にタックルを食らわせ転倒させ、頭部の方に回り込み、ロープを取り出して首に巻き付ける。


「往々にして生き物というのは、目か首が弱点だ……ふん!」


「ギャ! ……グエ……」


 三丸が巻き付けたロープを思いっきり引っ張る。爬虫類は少し抵抗しようとしたが、すぐにぐったりとなる。それを確認した三丸はロープを離し、両手をポンポンと叩く。


「ざっとこんなもんだな、指令部、聞こえているか? 回収などは任せる……」


「了解しました」


「す、すごい……」


 花が絶句する。


「鬼か……」


「金棒を振り回す方が十分鬼だろうが……」


 爬虫類の巨体から降りた三丸が呟く。


「き、聞こえていた……」


 蘭が口を抑える。三丸が四人の下に歩み寄ってきて、思い出したように告げる。


「言い忘れていたが、貴様ら四人、配置転換だ」


「ええ⁉」


「これからは第四部隊所属となる」


「第四部隊……ひょっとして?」


「ああ、察しが良いな、宇田川花隊員。ワタシが隊長だ、よろしく頼む」


「「「「よ、よろしくお願いします!」」」」


 四人の緊張しまくった敬礼に三丸が苦笑する。


「妙な硬さがあるな……まあいい、帰投するぞ」


 三丸が笑顔で四人に声をかける。

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