108-2
食事を終えてケインをルーシーさんの店に送った俺達は夜の鐘が鳴るまでには迎えに来ることと、最悪何かあった時の連絡先として宿の名前を伝えておいた
そして3人に引きずられるようにして連れてこられたのは男性用の服や小物を売っている店だ
「この店目を付けてたんだ。元高ランク冒険者がやってるらしいよ」
ルークが得意げに言う
こういう時の顔はケインとよく似ている
「こんにちはー」
「いらっしゃい」
「いらっしゃいませ」
出迎えてくれたのはガタイのいい親父と華奢な女性
「シアじゃないか」
「げ…」
親父の顔に見覚えがある
向こうもそれは同じらしいけど…
「シア知り合いだった?」
「…父さん達の知り合いだ。まさかこの店…」
「そのまさか、か?お前の親父さんたちの服は全部ここだ」
ニヤリと笑って断言された
「やっぱり…」
「え…と?」
レティだけでなくルークとシャノンも困惑気味だ
「この人はリンクさん。10年前のスタンピードの後に冒険者を引退して結婚した」
「その結婚相手がこのヴィアだな」
うんうんと頷きながらリンクさんが奥さんを紹介してくれた
「しかしその様子だとこの店に来たのは偶然か?」
「ああ。ルークが見つけたらしい…って初見だっけ。双子の弟妹でルークとシャノン、こっちは俺の彼女で最近『無限』に入ったレティシアナ。もう独りケインも来てるけど今は薬屋」
「そういや薬草に興味を持ってるガキがいるって言ってたな。そいつか?」
「あたり。この先のルーシーさんとこが気に入ったらしい」
「ルーシーの?!」
「…何でそんなに驚くんだよ?」
「驚くに決まってんだろ。あの婆、元貴族だぞ?そこに入り浸れるってどんなガキだよ」
元貴族…
ちょっと嫌な感じがするのは気のせいか?
「まぁ貴族であることを盾に動くヤツじゃないし、どっちかっつうと冒険者よりだがな」
「でも人嫌いなのよね?確か」
人嫌い?あれが?
俺達はケインを送っていった時のことを思い出しながら首をかしげる
それに元とはいえ貴族なんて素振りはかけらもなかった
「…その様子じゃ相当だな。まぁ、お前らの後ろ盾程度の力を味方にしたと思えば心強いともいえるか」
「コーラルさんと同等?」
マジか…
「ケイン引き強良すぎじゃない?」
シャノンがケラケラ笑い出す
「とにかく、ルーシーのとこにいるなら問題ないな。で、お前たちは何が必要なんだ?」
「必要って言うか3人でそれぞれシアの服を選ぼうって話になったんだ」
「ほう、それは面白そうだな俺達も混ぜろ」
「は?」
「勿論、金は貰うが俺とヴィアもそれぞれ選んでやる」
「選んでやるって…それ押し売りって言わねぇ?」
「バカヤロウ。仮にもAランクならもう少しまともな服着やがれ」
「…そうね。似合ってるし見た目も悪くないけど安っぽさは隠せないわね」
ヴィアさんにまで言われてちょっと凹む
そんな俺を見てリンクさんは爆笑した
「なに、やたら高いものを身につけろって言ってるわけじゃない。ただ、下のランクの奴に夢を見せてやるのも高ランクの役割だと思え」
「夢を見せてやる…ねぇ…」
「いい物が食える、いい家に住める、いい服を着れる、いい物を持てる。そこに希望を見いだして頑張ってるやつが多いからな」
その点は心当たりがありすぎる
「…わかった。じゃぁ俺の選んだら隣でレティのも選ぶ」
「え?」
レティがキョトンとする
「隣が女性用の服を扱ってる。そっちはヴィアさんの店だよな?」
「良く分かったな。そうと決まったら早速選ぶか」
リンクさんの言葉に次々と持ってこられる服を試着すること1時間以上
最終的に決まった5セットは全て違った感じのイメージだったけど不思議とどれも嫌いじゃなかった
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