87-2

「悪いなレティ、変な噂に巻き込んだみたいだ」

「私は別に…」

「ほらみなよ。レティシアナちゃんはシアに惹かれてるって顔に書いてあるわ」

その言葉にレティが一瞬俺を見てからうつむいた

耳まで赤くなってるのは多分気のせいじゃない…んだろうな

そんなことを考えながら何となくそれが嫌じゃない自分に気付いた

むしろ嬉しい?

そこまで考えて自ら考えるのを放棄した



「とにかく今は付き合ってない。大事だと思うし守ってやりたいと思ってるのは確かだけどな」

「…シア?」

「その話はまた今度な」

テリトリーのことまで気付かれてしまえば自分の気持ちを誤魔化すのは難しい

旅の間は気持ち的にも余裕がなかったから考えないようにしてた

でも素性のわからないレティを自分のテントに入れた時点でそれが全てなんだろう

多分レティじゃ無ければ保護した時はともかく、最初に立ち寄った街で簡易のテントでも購入してるだろうし


「お前がそう言うなら周りがとやかく言うべきじゃないな」

流石に生まれた頃から付き合いのあるヨハンさん達には簡単に見抜かれる


「是非そうしてくれ。それよりこの辺の全部1篭ずつ。あとはいつも通りで」

果物のエリアを指して言う


「お前が果物買い占めるなんて珍しいな?後はいつも通りってことはサラサちゃんの使いってわけじゃ無いんだろう?」

ヨハンさんが首を傾げながら言う

「ん?あぁ、果物はこいつのためのだし。リトスおいで」

『なにー?』

声をかけるとリトスがポーチから出てきた


「な?」

「これは…?」

「俺の従魔のリトス」

「従魔!」

「何とまぁ…あんたは間違いなくサラサちゃんとレイの子だわ」

「どういう意味だよ?」

「カーロの懐き具合も大概だったがリトスもかなり懐いてる感じだろ?」

「そうだよ。ほかの従魔や契約獣がそこまで懐いてるのを見たことがないからね。これからもっと増えそうじゃないか?」

「…そう簡単に増やすわけないだろ?俺を何だと思ってんだよ?」

俺が不貞腐れたように言うとレティが笑い出した


「レティ迄笑わなくてもいいだろ?」

「だって旅の間にシアのそんなタジタジになってる姿、見たことないもの」

「…」

そう言うレティをジト目で見てしまったのは仕方ないと思うんだ


「それだけ気をはりつめてたってことかな?何かほっとした」

「?」

どういう意味だ?

「何ていうのかな、同じ年なのにすごく大人びてて…何か上手く言えないんだけど…」

しどろもどろで言うレティを見て、エマリアさんとヨハンさんが顔を見合わせて笑い出した


「いい子じゃないか。大事にしろよ」

「は?」

「レティシアナちゃんも、シアを頼んだよ」

「え?」

「ほれ、もってけ。これはおまけだ」

ヨハンさんからカードと果物を受け取ると、それとは別に直径2センチほどのブドウに似た果物の実をリトスの前に差し出した


『しあー?』

「くれるってさ」

『わーい』

リトスは前足で受け取ると抱え込んだ

安定の可愛さだ


『ありがとー』

「ありがとうって礼を言ってる」

「こいつは…見てて飽きないな?」

「抱え込んでる姿が何とも言えないわね~もっとあげたくなっちゃうわ」

そんな言葉に気を良くする俺はしっかり親バカなのか…?

うん。気にしないことにしよう


その後もレティを案内しながら回った店で似たようなやり取りが起こったせいで、俺としては見ないようにしてきた気持ちを認めるしかなくなっていた


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