25.絡まれた
25-1
いつものように依頼の完了処理でギルドに入る
既に顔なじみの冒険者が大半だけど、当然、中には別の町から来る冒険者もいる
大抵の場合、そのよそ者と呼ばれる冒険者は問題を起こしやすい
人が集まる所である以上、町ごとの暗黙のルールがあるのは自然なこと
でもその暗黙のルールを感じ取れないヤツは少なくない
そして、その矛先は大抵の場合”弱者に見える”者に向くモノでもある
「シア、Aランクになったって?」
昔から面倒見の良い父さんの知り合いが声をかけて来た
この手の話がどこから流れるのかずっと不思議だったけど、どうやら貴族の屋敷に出入りしてる商人が噂の元で、その商人の護衛や荷物運びの雑用の依頼を受けた冒険者から広がるらしい
護衛中は魔物や賊さえ出なければ暇な時間が多いからどうしても会話が弾むから
「こないだギルマスから条件はクリアしてるけどどうするか聞かれた」
「あぁ、まぁお前らなら当然か」
納得したように頷き頑張れよと言い残して出て行った
そのやり取りを遠巻きに見ながら何か話す声がいくつか
ちらっとそっちを見ると慌てて視線をそらされる
言いたいことがあるなら勝手に言えばいいけどいい気はしない
所詮赤の他人だし別にいいけどさ
そもそも面と向かって言えないやつに負ける気もなしない
そう思いながら依頼ボードを見る
今朝受けた依頼の他にも達成できる依頼が2つ見つかった
「よっと」
依頼用紙を取り受付に出した
「よろしく~」
シャノンとルークのカードも添えて受付に出す
「相変わらず依頼こなしてくれるわねぇ?」
受付のキアナさんがニコニコしながらそう言った
キアナさんはギルマスの奥さんで俺の事は生まれた時から知ってる人だ
一人でギルドに来るようになってからも何かと気にかけてくれてる優しい人
「依頼受けないとランク上げれないし」
「まぁ確かにそうだけどね」
「迷宮潜ることの方が多いし累計討伐数は問題なくても依頼回数がさ…」
「あなた達の場合依頼回数の中でも討伐がネックよね」
キアナさんはクスクス笑いながら言う
「本当それ」
高ランクの依頼に関して連携が開始されたとはいえ、その話自体はまだそんなに広まっていない
この町はCランクの依頼が一番多く、次に多いのはDランク
だからCランクになると上を目指す冒険者は大抵拠点を移す
Bランク以上の依頼がそれなりにある隣町までは歩いて5日ほど
そんな中拠点を移すことを許されていない俺達は、連携依頼が出た時にせっせとこなすしかない
小遣い稼ぎで採取依頼や掃除何かの雑用を受けたりするために登録してるのはそれなりにいるけど、未成年で冒険者として生活してるのは少ない
少ないって言うより多分弾丸絡みの俺達だけだ
まぁあの家に住んでる子供は基本的にEランクにはなるからな
例外があるとすればカルムさん達が引き取って2年未満のユリアくらいか
それでもそのうちランクアップするはずだ
薬草採取は散歩の途中で遊び感覚でやってるし、雑用はこの家指名で入るのがかなりあるから
例えばバルドさんの納品
これは身内びいきで、“せこい手”ともいうけど…
あとは孤児院の雑用も孤児院の出身者が優先的に指名されるけどそいつらが手に負えないとか、手が足りない時に俺らに入ってくる
弾丸が資金援助してるおかげでもある
ポールはバルドさんのところに通って、竹細工の店の雑用をもぎ取ってきたりしてる
冒険者目指してるわけじゃないから依頼として受ける必要はないけど、店の方が勝手に手を回してくれてる感じかな
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