3-3
「無理じゃないよ」
「どうしてそんなこと言えるの?」
「ん~そうだな…俺達に最初に魔法を教えてくれたのは誰だった?」
「お母さん」
「じゃぁ母さんに教えてもらって難しかったか?」
「全然。最初から簡単に使えた。それに楽しかった」
「なら、母さんに教えてもらったように、皆に教えてあげればいいんじゃないか?」
きっとこうやって教えればいいって答えを教えても意味がない
そんなこと母さんは望んでないしシャノンの役にも立たない
「…なんかわかった気がする」
シャノンは涙を手で吹きながらつぶやいた
「でもどうしてお母さんはこんなことさせるの?」
「それは多分…」
「多分?」
「教えるのは本当に理解しないと出来ないからかな」
「理解…?」
シャノンが首を傾げるのも無理はない
使えてるのだから理解してるはず
それは俺自身が持ってた感覚だからだ
でも、そうじゃないってことを今の俺は知ってる
「ルークもだけどシャノンも、自分で技やスキルを増やすことは出来てないだろ?」
「うん」
「それはどうして?」
「そんなこと考えたこともないけど…増やし方が分からないしそんな発想も浮かばないから?」
「だな。俺も昔はそうだった」
「うそ?シアは色んなこと出来るよね?」
「今はな。出来るようになったのはルークとシャノンに教えるようになってからだ」
「そう…なの?」
「そうなんだよ。教えるために勉強したなぁ…俺と2人に被ってる属性は無いから余計に」
俺達兄弟は3人合わせると全属性揃うけど同じ属性を一切持っていない
母さんはそれを面白がってたけど
「教えようと思ったらその属性の事を知ることから始まる。水属性で一体どんなことが出来るのかってことから調べ始めて、自分の属性で似たようなことが出来ないか比べたりもした。まぁ問題は冒険者はそう言うの教え合わないって暗黙の了解がある点だな」
「そうなの?」
「自分の技を教えるってことは自分の食い扶持を減らすことにつながるからな」
依頼を受けて生活してる以上、人よりいい依頼を受けたいという思いに直結する
「ギルドの講習でも基本的な使い方だけで技までは教えてもらえないらしい。そういう意味では俺らは恵まれてるかな」
「皆が教えてくれるから?」
「そういうこと。それに教えることで学べることも多いぞ」
それは身に染みている
教えながら自信がないと思う部分は大抵、自分自身が使いこなせてない部分だったりするしな
「とりあえず、シャノンは母さんに初めて教えてもらった時の事を思い出しながら、自分なりに教えてみればいい。それならもう少し頑張れそうか?」
「うん…」
シャノンは頷きながら俺の肩に顔を埋めた
これが彼女だったらと思わなくもないけど、妹以外の何物でもないんだよな…
こういうところは昔から可愛いとは思うけどそれ以上の感情は生まれない
まぁ生れたら生まれたで大問題だけどな
「下に行けそうか?多分みんな“お姫様”が笑顔で降りて来るのをずっと待ってるぞ」
「大丈夫。シア」
「ん?」
「…お兄ちゃん大好き」
久々のお兄ちゃん呼びだな…?
これが出るってことは相当凹んでたってことか
「お兄ちゃんもシャノンが大好きだよ」
そう返してシャノンの額に軽く口づける
元の世界でこんなことしてもらった記憶はないけど、こっちでは普通の事
家族間で額に口づけるなんてそこら中で見かけるもんな
シャノンを促して下に降りたら親父連中がデレデレしてた
これもやっぱりいつもの光景だ
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