『無能の悪童王子』は生き残りたい~恋愛スマホRPGの噛ませ犬の第三王子に転生した僕が生き残る唯一の方法は、ヒロインよりも強いヤンデレ公爵令嬢と婚約破棄しないことでした~
さらに強くなるために、『称号』クエストに挑むことにしました。
さらに強くなるために、『称号』クエストに挑むことにしました。
「いよいよ、
サンドラとマリオンが試合をした日の夜、僕はベッドに寝転がりながらそんなことを呟く。
サンドラとの日々の特訓で僕の物理関連の能力値はカンストし、『漆黒盾キャスパリーグ』も手に入れた。
次に求めるのは、物理防御力と魔法防御力の更なる底上げ。
そのためには。
「『称号』が、絶対に必要だ」
この『称号』というのは、『エンゲージ・ハザード』がリリースしてから三か月後に実装された、キャラ強化のための新たなシステムだ。
これは、『称号』クエストと呼ばれるシナリオをクリアすることで入手することができるもので、お気に入りのヒロインをより自分好みにカスタマイズするために用意された。
もちろん、他のスマホゲームと比較しても圧倒的に売り上げが悪いことを踏まえた、いわゆる
『称号』システムはかなり画期的だったし、僕みたいなヘビーユーザーからすれば非常にありがたかったけど、残念ながら既に『ユーザーから課金搾取に特化したクソゲー』認定されてしまったことにより、せっかく実装したのに見向きもされなかった。
結局、『称号』システム導入も浮上の起爆剤とはならず、その三か月後にあえなくサービス終了になったわけだけど。
というわけで。
「ハ、ハル……本当にこの中に入るの……?」
やって来たのは、王宮の地下深くにある古代迷宮の入り口。
隠し扉や仕掛けを見破って、初めてたどり着けるのだ。
いや、探すのメッチャ大変だった。
そもそも『エンハザ』はゲームなので、『称号』クエストを選択してサクッとスタートするけど、この世界はそんなに都合がいいはずもなく、一から自力で入り口を探すしかないのだ。
とはいえ、イベントでの背景やヒロイン達の
「や、やっぱりサンドラとかモニカも連れてこようよ……」
「んー……そうしたいのはやまやまなんだけど……」
二人を連れて来なかったのには、理由がある。
実は『称号』というのは、一度入手すると付け替えることができないのだ。
これに関しても、僕は前世で『運営はもっと考えろよ』ってツッコミを入れたとも。本当に、ユーザー目線じゃないんだよなあ……。
いや、これから手に入れようとしている『称号』も、あの二人にとって絶対にいいものだということは間違いないけど、それ以上に相応しい『称号』があるので、そちらを入手してもらおうと考えている。
「まあ、たまには相棒と二人……いや、一人と一匹か。とにかく、僕はお前と一緒にここを攻略したいんだよ」
「! え、えへへ、そっかー……それなら、しょうがないよね」
「うん。だから、これは僕とキャスの、二人だけの秘密な」
「分かった!」
僕のその一言で、キャスの口元はゆるっゆるである。
うん、やっぱりチョロイ。
「じゃ、行くぞ」
「うん!」
僕とキャスは、目的の『称号』を手に入れるため、迷宮に足を踏み入れた。
◇
「っ! キャス、右上だ!」
「了解! 【スナッチ】!」
迷宮に入って、二時間は経過しただろうか。
ここに巣食う、魔獣“吸血コウモリ”の攻撃を察知した僕は盾をそちらへと向け、キャスが【スナッチ】を放つ。
すると吸血コウモリは突然羽ばたきをやめ、ポトリ、と地面に落ちた。
キャスの【スナッチ】は、攻撃対象の魔獣が小さければ即死効果が発動する確率が高くなるみたいで、一本道であることも相まって、思っていたよりも迷宮の攻略が進んでいた。
「ふう……結構歩いたし、そろそろ目的の場所にたどり着いてもいいんだけど」
「本当?」
僕の言葉に、キャスが黄金の瞳を輝かせる。
心の底からこの迷宮が嫌みたいだ。
「というか、もう二時間もこの中にいるんだから、いい加減怖がってないで慣れなよ」
「な、なんのことかニャ?」
「語尾に『ニャ』なんて付けてとぼけても無駄だよ。キャスがこの迷宮にビビっているの、分かってるんだから」
魔獣なのに迷宮を怖がるってどうなの? って思うけど、キャスも子猫なので仕方ないのかもしれない。
本人は、怖がっていることを認めないけど。
「とにかく、ここから出るためには目的のものを手に入れないとね」
「ううー……」
キャスがいよいよ半ベソをかき始めたので、僕は足早に進む。
途中、相変わらず吸血コウモリが
そして。
「この扉……」
『称号』クエストを進める中で、必ず現れる扉。
この向こうには、クエストボスがいる。
「さあ……行くぞ!」
「っ! うん!」
勢いよく扉を開け、中に入ると。
「グギュルルルルルルル……」
現れたのは、迷宮の守護者“レオゴーレム”だった。
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