『無能の悪童王子』は生き残りたい~恋愛スマホRPGの噛ませ犬の第三王子に転生した僕が生き残る唯一の方法は、ヒロインよりも強いヤンデレ公爵令嬢と婚約破棄しないことでした~
UR武器VS木剣の超ハンデ戦になりました。
UR武器VS木剣の超ハンデ戦になりました。
「ハア……大丈夫かなあ……」
僕も頭に血が昇っていたこともあって承諾しちゃったけど、普通に最推しの婚約者と『エンハザ』のヒロインの決闘なんて、冷静に考えたら認めるべきじゃなかった。
そもそも僕は、ハロルドのバッドエンドを回避するために、サンドラと婚約破棄をせずに、主人公とヒロインに関わらないようにするって決めていたはずなんだけど。
気づけば、主人公であるウィルフレッドとの関係は最悪。ライバルキャラのカーディスとも完全に
「ハロルド殿下が不安になられる気持ちも分かりますが、お嬢様の強さはご存知のはず。あのような小娘、歯牙にもかけません」
モニカがどこか誇らしげにフォローを入れてくれたけど、僕が心配しているのはそういうことじゃないんだよ。
いずれにせよ、ヒロインと敵対するのはマリオンだけに留めたい。
一応、念のために朝食を食べて昼寝していたキャスも連れてきたし、何とかなるかな。
ただし、キャスは無理やり起こされたのでかなり不機嫌そうだけど。こら、僕の背中で爪とぎするな。メッチャ痛い。
すると。
「お待たせしました……って、アレクサンドラ様はまだなのですね」
支度を終え、先に訓練場に現れたのはマリオンだった。
その手には、自身の背の高さに匹敵する巨大な両手斧を携えて……って、あれ、マリオン専用のUR武器『戦斧スカイドライヴ』じゃないか!?
「マ。マリオン! その武器は!」
「やはり、自分の得物で手合わせをしたほうがよいかと。……ああ、こちらはカーディス殿下から、右腕になったことで褒美をいただいたウィルフレッド殿下が、
聞いてもいないのに、うっとりとした表情で『戦斧スカイドライヴ』を見つめるマリオン。
どうしてウィルフレッドとカーディスが、伝説級のUR武器を用意することができたのか気になるところではあるけど、そんなことはどうでもいい。
「駄目だ! サンドラと立ち合いたいのなら、木剣を使用……」
「ハル様、私は構いません」
「サンドラ!?」
木剣を携え、いつもの訓練服に着替えて現れたサンドラが、優雅に微笑んだ。
だけど、UR武器による能力値補正は半端じゃない。サンドラが強いことは理解しているけど、これじゃあまりにもハンデが大きすぎる。
「こればかりは、たとえサンドラであっても受け入れられない。だから……っ!?」
「ハル様が私のことをお気遣いくださるだけで、天にも昇る心地です。ですが、ご心配いりません。あのような
詰め寄る僕の口を人差し指で塞ぎ、サンドラがはにかむ。
そのサファイアの瞳からは、恐れや不安といったものは一切感じられない。あるのは、強者としての絶対的な自信と誇りのみ。
ハア……どうやらサンドラは、折れるつもりはないみたいだ。
「……分かりました。なら、サンドラも『バルムンク』を……」
「『バルムンク』まで持ち出してしまったら、それこそ相手になりません。この木剣だけで充分です」
「サンドラ!」
ああもう、どうして僕の婚約者はそんな無茶なことを言うのかな。
ただでさえ心配なのに、これじゃ……。
「本当に大丈夫なのですよ? 少なくとも、私は自分にできないことを『できる』と嘘を吐いたりはいたしません。ですので、あなた様はただ、私を見ていてください。それだけで私は、
「ああもう……」
サンドラに抱き着かれて胸に頬ずりされ、何も言えなくなってしまう僕。
結局、彼女の要望を受け入れるしかないみたいだ。
「本当に……本当に危なくなったら、たとえ君が嫌がっても、絶対に止めに入りますからね」
「ふふ……では、そうならないようにすぐに仕留めてしまいます」
胸の中から僕の顔を見上げる、笑顔のサンドラ。
そのまま離れると、彼女はマリオンの前まで歩を進めた。
「たかが立ち合いに、またそのような武器を持ち出してきて……そんなに恥辱に
「っ! ……私も、まさかアレクサンドラ様が木剣を携え、この『戦斧スカイドライヴ』に挑まれるとは、思いもよりませんでした。このままでは、私が勝利しても恥をかくだけでしょうね」
「おや、でしたら今から木剣に変えても構いませんよ?」
「遠慮しておきます。
今のマリオンの発言……単に勝負を挑んだだけじゃないということか?
……まさか。
「二人とも、この立ち合い……っ!?」
「はじめ」
僕が二人を止めようと、声を出そうとするよりも一足早く、モニカが開始の合図を告げてしまった。
「はあああああああああああああああああああッッッ!」
『戦斧スカイドライヴ』を肩に担ぎ、マリオンが突進する。
「っ! キャス!」
「うん!」
意図を理解したキャスが、すぐに『漆黒盾キャスパリーグ』に変身し、僕は盾を構えて間に割り込もうと一歩を踏み出した。
だけど。
「甘いですね」
「っ!? キャアアアアアアアアアアアアアアアッッッ!?」
瞬時に背後に回り込んでいたサンドラがすさまじい連撃を繰り出して、マリオンは吹き飛ばされ、訓練場の壁に叩きつけられた。
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