げすいどう

==================


「楽しい」と声がしている工事現場を装ったブルーシートのそばに数人の男子生徒が集まっている。


携帯で何かを見ているらしい。


遠巻きに覗くと画面の向こうでは、知らない女の子がうろうろと辺りを見渡していた。何かを探しているようだったがいっこうに見つからない。そしてその様子を複数で観て遊んでいるみたいだ。


==================


一人になにをしてるか聞いたら


「見つかっちゃいました」

と答えた。

いじめの一貫みたい。

好きな子ほどいじめたいという言葉があるけどいじめるようなやつに好かれたくないよね。


=================


生臭いにおいだなと思っていたら、


クーラーボックスを抱えた鼓舞鶏 坂奈とすれ違った。こぶとりは、魚釣りをしていたらしい。


==================

積み木をした。

積み木をした。

積み木をした。


================


部屋が近い。

鼓舞鶏の家の生臭さが部屋に入ってくる。

あぁ、もう!

こういうのって、どこに言うんだっけ。


消防署?


==============


また、鼓舞鶏坂奈が朝4時頃に帰ってきた。

生臭い……


================


あの子、大丈夫だったかなとおもいながら、教室に行った。


隣のクラスの男子が

テレビに、あの映像を繋いでばか笑いしてた。


あとで、きねちゃんに聞いたら、彼女だって。

===================


=================

鼓舞鶏のせいで、部屋で積み木をしてても気が散る。

毎日毎日毎日。

目は覚めるし、生臭いし。

一度、とんでもなく生臭い日があったから死体でも詰まってんじゃないかと思った。


=================


鼓舞鶏にあったら文句を言わなくちゃ。


==================



部屋で、火災報知器が鳴った。うるさい。

ああ、うるさいうるさいうるさい。

なんなの。みんなして。私の邪魔しないでよ。

================


夕方5時ごろ消防士が来た。

異常はないみたい。

これってよくあることなんだって。

十数年ではじめてだったけど、そういうもの?


=================


==================


下水管が、なんか溢れたみたい。最悪……

早朝にどうにかなったっぽいけど。

なんでこの忙しい時期に詰まるかなぁ。


一時期、道がごみだらけだったんだって。

===================


みーくんのバカ。

みーくん。

城伊井君。

好き。


なかなかお話できないけど見かけただけでもよしとしよう。


================


水道工事するって、すぐそばの道で、地面を掘っている。

邪魔だなぁ。

==================


生臭いのが、

ぴたりと止んだ。

もうやめたのかな。

数日間ずっとクーラーボックスを重そうに抱えていたのに、急になくなった。

================




近所に、引っ越し便の車がとまっていた。

鼓舞鶏は転勤先に近い家に引っ越すって前から言ってたし、釣り道具も片付けたのかもしれない。


===================


もうひとりいたけど、誰だろう?



みーくんにメールで

体調がすぐれないことを伝えたら、誤解をわかってもらえた。

ごめんね。好きだよ。



===================


クーラーボックスって、二人係りで抱えなきゃいけないくらいとっても重たいんだねって聞いたら、内容に寄るんじゃないか? と言われた。


すごくいっぱい詰めてるか、マグロとか、そういうのになると人間くらいに重たいみたい。


昔、知らないおじさんが肩に抱えてたのは、空っぽだったんだろうか。

尺度がわかんない。

=================


彼氏さんなのかきょうだいなのか、仲がよさそうだったな。


==================


ひみやって誰?

ねえ、みーくんの知り合い?ねえねえねえ

また携帯の電源が切れた。暇だからつけようってときに限って、役に立たなくなる。


==================


カッターで肌を引っ掻いたらうっかり切ってしまった。軽く引っ掻くだけでも皮膚って切れるんだ。

白と赤のコントラストがきれいだから、沢山やってみた。痛くない。


==================

子どもに斜め上から見下すようなポーズをされた。こっちにつき出された顎の先や、鼻が気になって挑発以前に妙に笑ってしまった。


=================


どうすれば自由になれるの?

出してよ。

眠ってしまう身体も、

ありとあらゆる存在も、私を邪魔する。


====================


また、引っ掻いて遊んだ。それから積み木をした。

おねえちゃんが30回落ち続けてる試験を私のせいにされた。

私がばかだから。

=================

庭の草を刈るんだって。母が便利屋さんにでんわしていた。

植物が育っていくの、きらいなのかな。


小さい頃から、写真家と作家にだけはなるなってまた言われた。

不安定で生きていけないからって。


死ねるならいいじゃない。ひとつくらい尊厳ができるんだと思うと、頑張ろうって思った。

学校は嫌いだけど、死ぬためなんだ。


==================


ミナミがよく、行く先々に出てくる。隣の県の工業高校に彼氏がいるんだって話を何回もしている。


====================




高台に家が建った。

いろんな家が見下ろせる。

最近、高い場所に家がよく建つ。

ひとつは、近くの山の中で、もうひとつは、

展示場の張り紙がしてた、住宅密集地。

こっちは敷地がトンネルのすぐ横にある坂の土地。

=====================


いつも誰かが見てる。

鬱陶しい。


====================


……。

なんなの。

私のいったい、

なにがわかるっていうの。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る