第46話 イッツ、ショウタイム
暗闇に染まる漆黒の夜空、そして暗黒にたゆたうダークマターのような海。
暗黒と静寂が支配するお台場埠頭。
埠頭には幾台もの照明が立ち並び、闇を切り裂くように光の輝きが幾筋も煌めいていた。
「クックック……闇よ! 封印されし我が右手と左手! そして右足と左足にチャージを!」
お台場埠頭、いくつもの倉庫が立ち並びんでいるうちの一つ、B―12。
その倉庫の前にある作業用クレーンの上に俺は立っていた。
海面からの強い風がバシバシと全身を叩くが、そんな物はこの俺の妨げにすらならない。
「さて、配信スタート……っとこのボタンでいいのか? よし押すぞ、押すからな」
配信画面に映る自分の顔、そして並ぶ複数のボタン。
その中にある赤いマークをぽちっと押した。
【配信が開始されました】
「お、出来たな、えーテステス」
画面に表示されている音声のインジケーターは良好なようだ。
きちんと俺の声を拾って上下している。
《イノリン:っしゃあああ! 1コメゲットおおおお! 頑張ってヴォイドさん!》
《ラピスラズリ:2コメ。がっつだぜ》
「お? 早速コメントが――これは祈と瑠璃ちゃんか、祈はたまにテンションおかしくなる時あるよな」
《イノリン:ふぇ!? 誰ですかそれ!》
「っとごめんごめん。名前出しちゃ駄目だな」
配信が開始された数秒後に二つのコメントが表示された。
思わず二人の名前を口に出してしまったが、これは絶対によろしくないな。
「すまん、一度切って動画削除してもう一度始める」
《イノリン:はーい》
《ラピスラズリ:どんまい》
ぽちぽちと慣れない手つきで配信を止め、動画を削除して再開。
やはり人は来ないか、と少しがっかりしていたのだが――。
「待て、おいおいおい……! どうなってんだ!」
配信を開始して数分後、俺は同時接続数を見て声を上げた。
「同接――10万人――だと」
そう、しかもその数字は留まる事を知らず、ガンガン増えていく。
《捨て赤:これガチジャッジメントですの?》
《七色蛸:おっすおっす。PKがリアルでやらかしたと聞いて》
《おぱんつ侍:JK拉致ってどゆことやねん》
《オカリン:フーーーッハッハッハァ! 早くジャッジメントデスレインを放つのだ!》
接続数が爆上がりしたせいで、コメントが流れに流れまくって読むことが出来ない。
これ、他の人気配信者さんはどうやって対応してるのだろうか。
凄まじい速度で流れていくコメントは、とりあえずスルーする事にした。
俺は俺でやる事をやる。
ここからはスピードが大事なのだ。
「クックック……貴様らよくぞ来た! 今から始まる享楽をその目に刻みこむがいい!」
俺は高らかにそう言い放ち、漆黒のマントをバッサァ! と翻した。
そしてフルフェイス型ヘッドギアのバイザーを降ろし――。
「イッツ、ショウターイム」
腰のベルトに吊ってあった拳大のアイテムを数個手に取り起動させ、翆ちゃんが捕らわれている倉庫の扉目がけて放り投げた。
「俺だ。これより状況を開始する。エージェントジーニアスよ、バックアップは頼んだ」
『オーキードーキーアミーゴ』
片耳に嵌めたインカムから隼人の声が聞こえ、それと同時に地面に転がったアイテムが凄まじい音を立てて爆発した。
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