uxi3057 (短文詩作)

春嵐

第1話

 実装直前の自動認知型ロボットが逃亡した、らしい。

 というのもAI仕込みが基本になりつつある機械産業下で、ロボットというのがそもそも遅れている。なので特に気にもかけられず、ロボット関連事業は組織内でも放置された部署だった。


「めちゃくちゃかわいい子で」


 ほら。こんな感じで部署の人間の説明も要領を得ない。かわいい女がかわいい子の話をしている。


「かわいいんですよほんとに。これぐらいの背丈で」


「待ってください。本当に、ロボットの話をしてますよね?」


「はい。ロボットの話です。で、これと同じネックレスを」


 ロボットにネックレス。いよいよ目の前にいるかわいい女がかわいく思えなくなってきた。


「そんなに、のべつまくなし語らなくとも大丈夫ですよ」


「部長」


 部長。今度は格好いい男が出てきた。


「でもあの子が逃亡なんて」


「まぁまぁ」


 なだめ役か。少しは話の分かるやつが来たかもしれない。


「とりあえずお掛けください。どうです。一杯」


 手渡される。缶ビール。だめだこいつもまともじゃない。

 とはいえ、いただけるならもらっておく。缶ビール。美味い。昼間から摂取するアルコールは格別においしい。


「で、まぁうちの子の話なんですけど」


 また、子か。生命でも作ってんのかよこの課は。

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