第27話

『親愛なるウドゥン国王陛下、

「昔の話がしたい」とおっしゃって突然いらしたときは、正直なところ、びっくりいたしました。「いつでもいらしてください」とは、たしかに申し上げましたけれど。

 従者のかたは、なにごとにも陛下を急かしていましたね。不満を隠しきれてませんでした。お気づきでいらっしゃいましたか?

 私を危険人物と考えて警戒しているのかと思いましたが、どうやら違っていたようです。

 一刻も早く陛下は王宮に戻るべきで、山積した政務に取りかかってほしいと表情が物語っておりました。

 なのに、「落花生を食べに来たのだ」と貴方はおっしゃって。

 ご覧にはならなかったでしょうが、従者は真っ赤な顔をしておりましたよ。

 落花生の殻を割って中身を取り出すという時間の浪費が、きっと嫌だったのでしょう。今度いらっしゃるときは事前に使者を立ててください。私が殻を剥いておいて差し上げますので。

 ウドゥン陛下、昔の話を語るには、陛下はまだ若すぎます。異母兄ソヴァ様と屈託なく遊んだ幼い日々から、私たちの結婚式のこと、農業に精を出したときのことまで。やがて私への恨みごとにつながるのではないかと身構えておりましたが、陛下はけっして嫌な思い出は語られませんでしたね。そして終始笑顔で。これは、あまり良いことではありません。

 そのころが人生のピークだったように、私には見えてしまったからです。

 持って生まれた性状に反して、国王という重責を担わなければならなかった陛下。聖人君子でいられなかったことを悔いておられますか? 私だって隣国に居ましたおりは、謀殺のひとつやふたつは、

いえ、何でもございません。

季節のめぐりはあっという間ですね。

畑を耕して体を動かして、たまに小舟で釣りにいって。市場に果樹を売りに行って、子供の悪戯を叱ったら、たいそう怖がられました。手に持っていたリンゴをうっかり握りつぶしてしまったからでしょうか。疲れたらリンゴジュースを振る舞って差し上げますね。

 楽しい日々が永遠に続くことを願って、ソーキより』

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