第26話 PHASE2 その13 思い出の味をもう一度

「さぁ、今日はどうしようか?」

朝食を食べ終えた後、いつものように相談を始めた2人。

「ねぇ、何か食べたいものある?夕ご飯はリクエストに応えてあげるよ」

「う~ん、そうだなぁ…」

どうしようか冬馬は考えてみた。


「じゃあ、ひじきの煮つけを作ってほしい」

「えらく地味だけど、これでいいの?作れないことはないけど」

夏子は予想外の答えにちょっと驚いていた。

「自分で作ろうにもなかなか手間がかかるから作らないし、

何より祖母が作ってくれて好きだったおかずなんだ。

焚き込みご飯も美味しくて何杯もおかわりしたっけなぁ」

冬馬は昔のことを懐かしんでいた。


「お母さんの得意な料理ってなかったの?」

夏子は、冬馬が母親でなく祖母の料理の方を思い出すのが気になっていた。

「うちの母親、仕事とかで帰りが遅くなることが多くて、

あんまり手料理って食べた記憶ないんだ。

出来合いのものとか、食べに行ったりとか。だからかな、

たまに祖母の所に行った時の料理が印象深いんだ。実際に美味しかったしね」


「わかった、満足するものが出来るかわからないけど、挑戦してみるね。

ひじきの煮つけと炊き込みご飯ね」

「ああ、ありがとう。楽しみにしてるよ」

「もちろん、期待に添えるように頑張りますよ!」

夏子はガッツポーズをしながらそう言った。

(かわいいなぁ)

と冬馬は思いながら頭を撫でた。



「さてさて、どうしようかな」

夏子は掃除、洗濯を済ませた後で買い物に出かけた。

ひじきの煮つけと炊き込みご飯の材料、追加の肉料理に使う肉、

その他足りないものを買っていった。

(冬馬くんの思い出の料理はどんな味かわからないけど、

自分なりに納得いくものを作らないとな)

そう思い、夏子は奮起した。

そして、一通り買い揃えた後は帰路につく。



「ただいま~」

夏子は家に帰ると、早速料理の準備に取り掛かった。

(まずは、ひじきを煮て味を染み込ませないとね)

鍋に水を入れて火にかけ、沸騰したら材料を入れていく。

そして蓋をしてじっくりと煮込んでいく。


(その間に肉の下準備をしとかないとね)

フライパンに油を引いて、肉を焼き始める。

(この匂い、懐かしいなぁ……)

子供の頃を思い出す夏子だった。


「そろそろかな?」

蓋を開けると、ひじきのいい香りが漂ってきた。

味も染み込んでいるようだ。そして炊き込みご飯の準備に取り掛かる事にした。


鶏肉、人参、ゴボウ、しめじ、油揚げ等を切って準備をする。

炊飯器に米と水を入れ、準備した材料を入れる。味付けは、めんつゆを使う方法を取った。

そして炊飯器のスイッチを押す。炊き上がるまでの間は休憩だ。

その間に味噌汁を作ったりもするのだが。


(そういえば、冬馬くん何してるのかなぁ?)

ふと気になってスマホを見るが、特にメッセージも入っていないし着信もないようだ。

(まぁいっか!ゆっくり待ってようっと)

そう思って、夏子はソファーに座った。

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