第六話 彼らの仕事
翌日。目を覚ますと、朝から賑やかな事に右にはゴンさん左にはカンさんそしてゴンさんから僕を挟みカンさんの上を、大胆にコンさんが寝ていた。身体が軽い為かコンさんが上に乗っている事は僕が身体を半分起こしてからじゃないと気付けなかった。
「…(どうしようか)。」
動こうにもコンさんの身体が乗っている以上起こしてしまう可能性がある。別の見方をすれば僕が勝手な動きをとらないように、守備の一種だとも捉えられるが、あんまりにも気持ち良さそうに寝ている為起きるタイミングが分からない。結局、僕が起きれたのはそれから三十分位後の事だった。
「…?なんか重い気がってコン君!?何をしているんですか!」
「何って…寝転んでるだけダケド。」
「人の上に寝転ぶ人なんて見たこと無いですよ!」
コンさんの重みが消えると共に、身体が床にぶつかる鈍い音が響いた。
「だって僕だけ見張りって君らズルくなイ?」
「それは貴方が昨日暴れまわった罰でしょう。」
「一番暴れたのは君だけどネ。」
「…。兎に角、照葉君を起こさないだけ多めに見てあげましょう。」
あの、僕起きてるんですけど。今言い出すのは厳しいんですけど。今度こそ起きるタイミングを逃してしまった。歪みそうな顔を誤魔化す為に横向きに姿勢を変えれば、驚くことにゴンさんと目があった。
「…起きてんだろ。」
「…はい。」
「起きられねぇよな。」
「起きられないですね。」
「どうしてあげようか。」
「どうしてくれましょう。」
「よし。」
「…?」
「あーもうお前ら何やってんだよーもうこんな時間かよーおい、起きろ照葉や、朝御飯にしようぜ。」
「了解っすゴンさん、朝御飯にしましょう。」
そう言って二人の反応も見ずに階段を降り寝室を後にする。階段を降りきっても上からは何の物音も聞こえない。居間に入った時点でやっと二人が叫ぶ声が聞こえた。それから誰が僕を起こしたかとかいう争いが始まる。僕は始めから起きていたという事実を伝えれば丸く収まるだろうが、「黙っておいた方が面白い」とゴンさんが僕を制止した。
話しは落ち着き、朝食をとる。そこでの話題は、僕の事であった。こちらでは月に一回、八卦の人が集まる会議があるらしい。それぞれの近況報告を共有し、なにか問題があればそれを話し合うという内容。それが明日なのだそうだ。勿論人間がこちらの世界に来たとなれば大問題なのだが、この人達は匿ってくれるそうで。
「僕、いまいち権力という規律が分かってなくて、八卦さん達の中で何か争いが起きてるって事ですか?」
そこを知らなければ自分の身がどれほど危険なのかが分からない。もし戦国時代の様に大名達が争っているのなら相当危険だし、僕の登場が学校に来た転校生程度の問題ならしばらくは安静でいれるだろう。少なくとも、それぞれがそれぞれの能力を持っているなら、一瞬での死は確実である。情報というのは全てに置いて必要なのだ。
「…争いが起きるか起きないかは相手にもよる。例えば俺らとカンが出会っても何の争いもなかっただろ?」
あれは争いに入らないのか。ってことはこの人達の言う争いはかなり激しいものだという事が分かる。
「でもね君。僕らはまだ平和主義者だから落ち着いているだけで、他の人らが優しいとは限らないんだヨ。」
「照葉君の世界では、あらゆる自然現象が怒るでしょう?それは、僕達の所為だと言っても過言ではありません。最近で言うと、確か数ヵ月前に大きな地震はありませんでしたか?」
「あ、ありました。京都の方で六強の地震があったんです。」
「それですね。それは結果論を言えばコン君の仕業です。」
僕が反射的にコンさんを見ると、コンさんは少し罰が悪そうに此方を見返してきた。
「いや、あのネ?……ごめんなさイ。」
「兄貴は悪くねぇよ。仕事はちゃんとしたんだ、謝らなきゃいけねぇのは兄貴にちょっかいをかけた《リ》の方だろ。」
「僕もそう思います。コン君は僕が出会ってから仕事に関しては一度も気を抜いたことがない。いくら神の使いでも地球上の地形変動までを操るのは不可能です。その被害を毎度抑え込むなんて、正直僕にはできません。コン君以外じゃ中々出来ない技です。」
「あ、そうそう。前には言ってなかったが、俺らの仕事ってのはあの方の暴走による被害をできる限りの力で抑える事。あの方ってのは所謂神の事なんだが、この世界じゃ禁句に近いからもう二度と説明はしないぞ。勿論俺らだけで大きな災害を引き起こすのは簡単だが、それは俺らが勝手に作った契約の中で禁止している。俺らはあくまで後天的に能力を使うんだ。」
二人の慰めに対し一向に着いていけない僕を、ゴンさんがフォローしてくれた。どうやら神というのは僕が思うような善人だけでは無いらしい。となると神の使いという響きも少し印象が変わってくる。地震は毎回コンさんが暴れた所為だとも言われるんじゃないかと恐ろしく思っていたが、そうではない事を知り安心した僕がいた。
「…話を戻しますが、明日どうします?」
「「……。」」
そんな調子で、結局朝食に手を着けたのは昼頃になってしまったのであった。
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