第9話(4)学んだことを活かす
「……学んだことはあったか?」
「肝を冷やすことならありました……」
彩の問いに躍が腹のあたりをさすりながら答える。
「ああ、ネットでも結構話題になっとったで?」
彩が悪戯っぽい笑みを浮かべる。
「……プチ炎上でしょ? 怖くてあまり見てませんわ……」
「いや、それがそうでもないねん、好意的な意見も結構多いで」
「ホンマですか?」
「ホンマ、ホンマ」
彩が端末を見ながら頷く。
「そうですか……」
「ニュース記事ではエレクトロニックフォースの名前まで出してくれるところがいくつかあったな。これは思った以上の宣伝効果やで……」
「素直に喜ぶべきなのかどうか……」
輝が困惑気味に呟く。
「まあ、ここは前向きに捉えておくべきだと思うよ?」
「せや、グレーの言う通りや」
「では……炎上系戦隊ヒーローを目指せということどすか?」
「いや、違うがな」
心の呟きを彩が即座に否定する。凛が呟く。
「ならば……爆発系?」
「大体皆そうやろ」
「純情系?」
「どこのはぐれ刑事やねん、厳密に言うと、あれは純情派な」
「ビジュアル系?」
「ビジュアルも大事やけど」
「燃焼系?」
「懐かしいこと言うてきたな……」
「え?」
「し、知らんのか、ジェネレーションギャップやな……って、そういうジャンル分けみたいなんは外野が勝手に決めることやから! 自分らは自分らの出来ることを精一杯やったらええねん!」
「……」
「なんや? ブラウン、キョトンとした顔して……」
「いや、ほぼ初めてマトモなこと言わはったなと思うて……」
「なんてこと言うねん! おっ! 珍しく出動要請や! 勉強したこと活かしてこいや!」
「……活かしてこいと言われてもな……」
オレンジが後頭部を抑える。目の前には全身白色のタイツを着た戦闘員の集団がいる。
「まあ、司令官の言わんとしていることはなんとなくやけど分かるような気がするで?」
「本当か?」
オレンジがブラウンを見る。
「ああ、グレー、突っ込んでもええでっか?」
ブラウンが左隣のグレーに尋ねる。
「猪突猛進は困るが……前もって尋ねてくれるだけマシか……良いよ。君の突破力は結構あてにしているからね」
グレーが頷く。
「よっしゃ!」
「……!」
ブラウンが戦闘員の集団に勢いよく突っ込む。
「一番槍もろたで!」
「センゴクレッドさんに思いっきり影響を受けているな……」
オレンジが苦笑する。グレーが笑う。
「ははっ、勇ましいのは歓迎だよ」
「では、わたくしが続きます……」
パープルがスッと前に出る。
「おっ……」
「お手並み拝見といこうか」
「はい……ふむ、ピンク色の玉が出ました……それも二つ続けて……これは幸先良い……」
「ピンク色の玉は初めて見る気がするな……」
「どんな反応が見られるかな?」
オレンジとグレーが注目する。
「それっ!」
「……‼」
花がそこかしこに咲き誇る。戦闘員たちが戸惑う。
「モモヤマピンクさんの華やかさを真似させていただきました……」
「うん、綺麗だね」
「ありがとうございます」
グレーにパープルが頭を下げる。オレンジが戸惑う。
「何の効果が⁉ いや、一部の戦闘員たちが大人しくなっている?」
「恐らく……美しい花を見て、戦意を喪失したんだろうね」
グレーが冷静に分析する。
「ふむ……それでは次はわたしが仕掛けてもいいか?」
「ああ、構わないよ、オレンジ」
「……⁉」
オレンジの正確な射撃で戦闘員たちが次々と倒される。グレーが口笛を鳴らす。
「~~♪ いつにも増して、高い命中精度……集中力がすごいね」
「バクマツダンダラさんに戦いへの臨み方を学んだ……」
「スナイパーがサムライに学ぶとは……」
「おかしいか?」
「いや、良いんじゃないかな……ん? 統率を乱した部隊がこちらに向かってくる……」
「意外と速い! グレー、危ないぞ!」
「問題……ないよ!」
「!」
グレーが鞭を振るい、向かってきた戦闘員たちを難なく蹴散らす。グレーが淡々と呟く。
「柔軟性と臨機応変さ……ムロマチゴールドさんに学んだことだよ……」
「み、皆、学んだことをちゃんと活かしている……アタシも頑張ろう!」
シアンが前に進み出る。オレンジが声をかける。
「シアン! 空回りするなよ!」
「大丈夫だよ! 『シアンアタック』!」
「……?」
シアンが離れた距離から攻撃を仕掛けるが、当然、何も起こらない。
「……あれ? ヘイアンジュウニヒトエさんみたいにならないな……」
「当然だ! 近接戦闘がお前の持ち味だろう!」
「うおおおっ!」
シアンが飛び込み、戦闘員たちを散々に蹴散らす。オレンジがため息をつく。
「ったく……ん⁉」
「オレンジ! がはっ⁉」
「‼」
「⁉」
四人があっさりと倒される。そこには狼の顔をした怪人がいた。シアンが驚く。
「み、皆⁉ か、幹部怪人⁉ うおおおっ‼」
「ふん……」
「ごはっ⁉」
シアンは腹に強烈なパンチを食らって、うつ伏せに倒れ込む。狼の怪人が淡々と呟く。
「今、巷で噂の戦隊がいるというから来てみたが、この程度か……所詮はガキのお遊びだな。とどめを刺す価値もない……」
「! ……くっ……」
シアンは去っていく狼の怪人の背中を見ながら気を失う。
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