あのローダンセが枯れてしまう前に

昼乃 夜空

10月9日月曜日



この世界で起こることの大抵は終わりが存在する。




親しい人が死ぬように。

愛用している食器が割れるように。

いつも使っている機械が壊れるように。





俺はそんな当たり前の事をずっと気づかないでいた。












_____________





——ピピピピピピ


机の上に置かれている目覚まし時計が静寂な朝にひどくうるさいくらい響いた。



「もう朝か。」



ひとりでに俺こと明地あけち 悠冬ゆうとはそう呟いた。




 古びた目覚まし時計を止めて起き上がる。ぐっと伸びをすると、ポキポキポキと骨の音が鳴った。骨の音がなると気持ちいいと感じるのは俺だけでないだろう。


 

 そんなどうでもいい事を考えながら顔を洗いに行く。洗顔フォームを使ってモコモコした泡を顔に塗っていく。


 今日は月曜日なので学校に行かないといけないから丁寧に顔を洗ってからワックスを手に馴染ませてから髪をセットし始める。





やっぱり月曜日というものは憂鬱だな。











もしも地球が滅亡してくれるなら学校に行かなくて済むし楽なのにな。






まぁそんなゲームやアニメみたいな事なんて起きるはずないか。




 髪の毛のセットが終わったから、朝ごはんを食べた。俺の両親は朝から仕事に出ているのでいつも一人で食事をしている。今日の料理は目玉焼きと白米、味噌汁といった特に変わり映えしないどこの食卓でも出てきそうな和食だった。





_________




食事を終えて制服に着替えて家を出た。



 学校に行く事は面倒くて嫌いだが、通学をする時は結構好きだ。


 会社に遅刻しそうなのか早歩きで通りすぎる会社員、友達と楽しく話をしながら歩く小学生たち、庭の花に水やりをしているおばさん、大型犬の散歩をしているおじちゃんなどなど、いろんな人がいて、見ていて飽きない。







____


 それから数分歩いて教室に着き、友達にあいさつしてから自分の席に座る。

チャイムが鳴るギリギリに着いたから、教室内は賑やかだった。周りの人と他愛ない話をしている人、今日提出の課題を急いで写している人、ずっと一人でスマホをいじっている人などいつもの日常が繰り広げられていた。




 椅子に座って授業の準備をしていたると、何やら視線を感じた。

気になって後ろを振り返ると、同じクラスの女子が立っていた。

 彼女の名前は大空おおぞら 小夏こなつだった。彼女は俺のクラスメイトで幼馴染だ。俺と目が合うとすぐに視線を逸らされた。






 彼女との出会いは8歳くらいの時の近所の公園だった。俺は人見知りで周りの子供と遊ばずに一人で砂遊びをしている時に彼女が俺に話しかけてくれた。

 そこから彼女とたくさん遊ぶようになった。だけど今も仲が良いわけではない。最近は全く話さないし、今だって目が合ったあとすぐに視線を逸らされた。






 俺は昔から小夏のことが好きだ。もちろん彼女に告白したいとはずっと思っているが、もしフラれたら立ち直れる気がしないし、告白しようと思ってもうまく勇気が出ないのだ。



そんなことを考えてたらHRを告げる鐘がキーンコーンカーンコンと教室に響いた。





 朝からそんな少し重い気持ちで授業を受けていつものように家に帰って色々してから寝る。







 こんないつもの日常が突然壊れることになるなんて、この時の俺は思いもしなかった。

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