第166話 グループデートに出かけましょう。

 蘇えりし者レヴナント3人娘のデビュー戦もつつがなく終了し、次は自己紹介動画ですかねー、いや私の自己紹介動画先に上げましょうよとか魔生対でダラダラ過ごしていた昼下がりにですね?

 「セヴンス、デートに行くから準備しなさい」

 なーんて大胆なお誘いを白さんがぶっこんできました。

 なお、普段なら最初に反応してまがまがしいおーらを発する理珠さんですが、数日前からスマホにかかりっきりで私のボケにも対応する余裕がない様子でして……。

 ちょっと心配です。

 逆に私はスマホというか、SNS禁止令が出されていてまあ、なんとなく何が起こってるかを察する事は出来ます。

 自己紹介でゾンビだってバラしましたからね、大なり小なりネット上であれこれ言われてるんだとは思います。


 まあ、それはそれとして急にデートのお誘いなんてどうしたんでしょうね?

 疑問符を浮かべて頭を傾ける私に、白さんは誘った理由を説明してくれました。

 「まあ、当然と言えば当然なんだけど、セヴンスの自己紹介動画というかシアシャル・グラゼの傍若無人動画を見てもまだテロゾンビは危険だーって言い続けてる奴らが居るのよ」

 それはまあ、居るでしょうねぇ。

 だって、画面の向こうで好きだった芸能人が「ショッ○ーは悪の秘密結社なんかじゃありません!私だって改造手術を受けましたが、こうやって平和に暮らしています、イーッ!」とか言ってたって信用できるものではないですよね?

 一応、シアちゃんが考え無しで倫理観も無くて良かれと思ってやったことで相手が不幸になっても気にしない邪神ではあるものの、悪意があって私達を困らせようとしているのではないことを私達は知っていますが……、一般の方はそうではないですからね。

 テロを起こしたゾンビ含めて、生き返らされた人々は邪神シアシャル・グラゼの操り人形であり危険な存在だ。ぐらいに考えてもそこまで不思議ではないです。

 ……まあ、不思議ではないだけで一般的な思考だと言うつもりも無いですが。

 で、そことデートがどうつながるんでしょうか?


 「だから、セヴンスとそこの3人、あと普段はそんなに一緒に行動しない、言い方は悪いけど取り巻きじゃない魔法少女が、誰かに迷惑をかける分けでもなく、街中で楽しそうに遊んでるのを見たら警戒心も薄くなると思うのよね」

 ……なるほど、一理あります。

 警戒されてる人物が人前で間抜け面を晒してダラダラするというのは相手を安心させるのに効果的であるってヒラコーの漫画でも読みましたし。

 それに、逃げ隠れする生活をしなくて良くなった3人娘の服やアクセやコスメやコスメやコスメなんかを買ったりしないといけませんしね!

 ……と言いたいとこですが、ゾンビって常に変身状態なので魔法のお化粧がされててコスメとかスキンケアとか必要ないんですよねぇ。

 いや、その上から更にメイクして印象を変えたりとかは出来るんですが生活必需品かと言われるとちょっと弱いです。

 まあ、アクセや服や小物なんかを買い与えるぐらいで我慢しましょう。


 と、私自身もテンション上がってワクワクし始めてたところでふと思い当たりました。 

 「いや、待ってください。デートに出かけるのに意味があるのは理解しました。だけど、白さんじゃなくって他の子と出かけても良くないですか?」

 そう発言しながら頭をよぎるのは他の魔法少女の中の人の様子。

 そもそも大学の予定で忙しくて今年度はあんまり顔を出せないらしい如月さん、日本語での会話が覚束ないココさんにつきっきりの一文字さん、女子力?なにそれ?と言わんばかりに部屋の隅に座ってゲームをしてる依霞さん、喋ってるのは日本語なはずなのに、統一言語の魔力影響下にあってなお発現の内容が理解できないことが稀によくある九條さん、そして、そもそも長時間の歩行に支障がある右ネキ……。

 こういうケースでも普通に対応してくれそうなドリルさんがお休みなのが痛いですね。あ、初雪さんは当然のように夜勤だったので今は寝てるでしょうし起こして連れ出すのもどうかと思いますし。

 一応、どたぷん……じゃなかった、札月さんは女子力的にもイケそうですが、仲睦まじく遊んでいる様子を一般の方に見せつけるという目的だと引っ込み思案部分が問題になりそうです。

 「別の子でもいいのだけれど、今日のメンバーで私以外には適任がいないでしょう?」

 ……はい、そのとおりでした。

 いやー、初動対策課のメンバーはクセが強いですね!

 私も人のこと言えませんけど!


 で、その話を3人娘に振った所……。

 「いや、その様な暇があるのか?ドラゴンが出現したら招集がかかるのだろうし、ここで待機しているべきでは?」

 と渋るアデライデさんを。

 「ううん、アデリーちゃん行くべきだよ!せっかく日本に来たんだからスシとかカレーも食べておかないと絶対損だよ!あとラーメンにはシオ、ショウユ、ミソってまだ食べてない種類がたくさんあるらしいよ!?」

 「そうですよアデライデ。我々は蘇えりし者レヴナントの顔と言っても大げさではない立場になったのですから自分たちの安全性をアピールするにはいい機会です」

 とオフィリアさんとエルナさんが説得する形で参加OKのお返事を頂けました。

 ……しかし、真面目すぎるアデライデさんと、真面目なエルナさんと、完全に我欲丸出しのオフィリアさんの対比が面白いですねこの3人。

 多分、現状を思い詰めすぎる2人をオフィリアさんが和ませて繋いでたんだろうなという苦労が伝わってきま……いやこれ天然ですね?


 という事で、白さんの手によってあれよあれよとお出かけの手続きが終わり……。

 アデライデさんの集団ワープ魔法を使って1時間後には繁華街へ突撃と相成りましてございます。

 なお、準備1時間の主成分は3人娘のお洋服選択タイムでした。あ、休眠モード中の服装ですよ。

 私に影響を受けたという黒いフリフリワンピに身を包んだアデライデさん。

 高身長&女性的なシルエットを隠すようにワイドデニムのパンツにゆるいジャケットを合わせてきたオフィリアさん。

 いかにも!と言った感じでスキニージーンズにスラッとしたシャツでかっこよくキメたエルナさんとそれぞれ良い感じのファッションになったのではないでしょうか?

 あ、私ですか?私はこれでもかと言うぐらいフリルとメッシュの入った黒メインに赤い差し色の入ったゴスワンピですね。

 ……なんか、休眠モードの服装に根源がケチつけてくるのってどうやら私だけらしいんですよね。根源に住み着いたシアちゃんの邪念め!とちょっとだけ憤りを感じないでもないです。

 あ、白さんは休眠モードも出来ませんしバニーガールそのままだと刺激が強……目立ちすぎるので、ノーカラーコートと中折れ帽を装着して多少ごまかせるようにして……無理ですねこれ!そもそも帽子からうさ耳飛び出ちゃってますからね!

 まあ、そんな感じでグループデートが始まりました。


 で、まあ案の定めちゃめちゃ注目されてます。

 そりゃまあ、こんなちっこいゴスロリと各種名品を取り揃えましたみたいなバリエーション豊かな美人集団とか目立たないわけ無いですからね。

 おっと、スマホを構えた方、撮影は……いや、今日はそもそも私達蘇えりし者レヴナントの安全性を伝えるためのデートなので拡散を止める必要はありませんでしたね。

 ……あれ?アデライデさん達っておそらく今後1年以上変身状態で過ごすわけですよね?

 いや、私はどうせ生き返ったら他人事だしゲームのアバターで活動してるようなものだから好きにしていいですよーってスタンスだったんですが、それを他の蘇えりし者レヴナントの方に適用していいものかちょっと悩みますね。

 まあ、3人娘の方も手を降ったりポーズ取ったり注目を集めてることに驚いて慌てたりしつつもまんざらではない顔だったりなので今回は撮影拡散大歓迎としておきましょう。

 それはそれとしてザマさんと相談して法律とか整備してもらったほうが良いですね。

 

 「さて、とりあえずは何か食べながら何処に行くか考えましょうか。何が食べたいですか?」

 「あ、ちなみに経費で落ちるように交渉してきたから好きなものを選びなさい?」

 私達の問いに対して元気よく応えたのはあわあわしてるアデライデさんを除くお二人で……。

 「「スシが食べたい!」ですね」

 と、満面の笑顔で応えが返ってきました。



☆★☆★☆★☆


ポーズを取ってキメ顔を返すエルナさん

笑顔で手を降るオフィリアさん

そして、外見と普段の様子に反して動揺してあわあわするアデリーちゃんでした。

なお、服のセンスは作者依存なのでその、微妙だと思っても許してクレメンス。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る