2-10.「金金金」

 

 落下する体。目視で地上まで三、四十mといったところだろう。俺は以前タラバ相手に落下しながら戦ったとき同様に『撥』で体の体勢を整えると、重力による勢いで落下し続けるのを防ぎ空中に浮く。

 突如として始まったこの戦闘だが、俺はこの程度で判断が滞るほど二流ではない。これまでにくぐってきた死地の数もそれなりにあるつもりだ。それこそ先に上げたタラバ達との戦闘で転生してからも既に一度死地を経験している。


 まぁ、前世ではくぐり切れなくて死んだから転生したんだけどさ。


 とにかく俺は戦闘を開始しようと、ここからの戦い方を組み立てる。そんな俺は横目に落下の対策を一切せずに勢い良く落ちていくホワイを捉える。


 落ちる速度は対策しない分、かなりのものでありホワイはそのままオークの群れに飛び込まんとする。しかしオーク達もここにきて、上空から何かが落ちてきていることに気づく。オーク共の雄叫びが上がる。

 その一切を関係ないと断じるかの如き巨声が、オーク達の雄叫びをも上回り、響き渡る。


黄金伝説おうごんでんせつ1ひとページ目! 『鈴鑿鉾すずさくほこ』!」


 その巨声と同時に何処からともなく現れたのは、長い金色こんじきの棒に金色の矛がくっついた、いわゆる槍のようなものであった。

 ホワイはその槍を自身が落ちる先にいるオークに向け突き刺す。その突きはオークの体を易々と貫き、地面まで貫通する。

 地面に貫通した槍は自立するようになり、自立している槍のを持ちながら、その巨体からは想像できないような逆立ちのような姿勢をとる。ホワイは柄を押し、その反動で一瞬浮き、反動の勢いそのままに体を半回転させた。

 半回転しまた地面に直角して立っているような体勢になる。しかし、その足はまたも地面につかない。

 ホワイが出した槍、その石突いしづきと呼ばれる槍の柄の一番手前側の部分、そこが大きく広がり、横から見れば突き刺さった槍の石突に巨大な円盤がくっついたように見える様になっていた。

 その円盤の上にホワイは半回転させた体を乗せたことで未だオーク達の頭上を取っていたのだ。

 ホワイの立つ位置は丁度オークの背では届かない位置であり、それは計算によってなのか、偶然なのかは定かではない。


「いつ見ても、魔物の群れというのは飽きんな!聞け!そして詫びよう、すまぬ此度の魔物どもよ!貴様らは儂の黄金伝説の一文字にすらなり得ぬ。せめてもの情けとして苦しまず殺してやろう!」


 オーク達は黄金の鎧に纏われた肉体を貪ろうとホワイに群がるように近づいていく。

 しかし、それもすぐに止む。オークの体を地面から何かが突き破っていた。突き破られたオーク達は硬直しており、まるでフィギュアのように動きを保ったまま固まっていた。


「ホワイの魔法、黄金伝説爆おうごんでんせつばく誕操術魔法たんそうじゅつまほうは、、、って笑わないでよ!!だってねぇ、こんな馬鹿みたいな名前、!」


 ミリタリアの突然の解説に俺はつい笑ってしまう。だって仕方ないだろう?


「いやだってさぁ、、、クッ、クスッ、、馬鹿が馬鹿みたいな単語言うんだもん。子供ガキかよって、、、クスッ」


 命名したのはホワイだろうが、あまりにゴミみたいな名前だったため思わず笑ってしまう。そしてそれを恥ずかしげもなく言うミリタリアも俺のツボを刺激してしまっていた。加えて言うなら、突然の瞬間移動みたいなことをされた仕返しもあった。そういった事情もあって俺は久しぶりに笑い続けた。

 しかしここで俺は気づく。こいつは子供ガキって言うとキレるということに。


「ごめんて、、悪かった悪かった。許してって!」


 テレパシーはミリタリアに対して効かないが今までの関わりと今のミリタリアの表情からして、何を思っているのかぐらいは分かる。

 俺が必死に謝ると短気なミリタリアにしては意外にも許してくれた。


「まぁさっきの意地悪もあったから特別に許してあげましょう。でも次はないから」


 その発言も真実であると先程同様の理由で分かる。


「それじゃあ、話戻すとホワイの黄金伝説爆おうごんでんせつばく誕操術魔法たんそうじゅつまほうは、、」


 そう言いながらジト目で俺を見るミリタリア。俺がまた笑わないか確かめるためだろう。何度聞いても馬鹿らしくて笑えてくるがここは何とか堪えることに成功する。

 俺を見て笑っていないのを確認した後、再びミリタリアはホワイの魔法を説明を再開する。


「、大きく分けて二つの効果があってね、一つは周りの物体を金に変えること。そしてもう一つは元々金なのか錬成した金なのかの区別をせず、金の状態を変化させ操ること。ここでいう状態とは気体、液体、固体のことなんだけど、、、、何?その顔は?」


 ミリタリアは俺を向いて、そう問いかける。俺がどんな顔をしているのか?それは衝撃を受けた顔とでも言おうか。とにかく驚いた顔だ。


「いや、、お前。そんな真面目な解説できたんだ。どうせ、くだらん冗談挟むと思ってたからつい。気体、液体、固体を知ってるだなんて普通誰も思わなだろう?」


 俺のこの言葉は本心からだ。まぁ気体云々は流石に冗談だが。ついさっきイジらないと決めたのにやってしまうのはどうしてなんだろうか?こいつ相手だからか?自分でも疑問だ。


「あ〜あ〜あ〜!、クリューそういうこと言うんだ。もう知らない!まじ知らない!とっとと死んでこいや〜!!!!」


 そう言うと、またまたまた、俺の目の前の景色は変化する。目の前には大量のオーク。

 そう、つまり俺はいつの間にかオークの群れ、その中にいたのだった。


「キレすぎだろ!、あの馬鹿!」


 目の前の獲物が何なのかは関係なく、ただ貪りたいだけのオーク達は当然俺も食おうとしてくる。

 しかし俺は至って冷静に超能力を発動する。


「『否接衣タンゲ・フーパ』」


 その言葉と同時に俺の体の周り、言い換えるなら俺の体から全ての外方向に対して『撥』を発動させる。それが俺が名付けた『廻壊めっかい』に続く二つ目の技だ。ちなみに『PSプレイスワン』は技というより状態なのでここには含めない。

 これをすると、常に全ての方向に対して『撥』が発動しているため簡単に俺に触れることができなくなる。以前セコンドの勢いを消すために使った全力の『撥』。その出力を弱めにする代わり、常に全ての方向からの攻撃に対策できる技だ。

 王道十二星騎士が相手ならこんなバリアは意味をなさないだろう。だが、オーク如きの力ならばこの技は十二分に効果を発揮する。

 事実、オーク達は俺に触れられず訳のわからない顔をしていた。

 俺の技はこれで終わらない。

 この『否接衣タンゲ・フーパ』は体を動かしながら行使することはできないし、その間は他に『撥』や『觸』を行使することも叶わない。さらに言えば『否接衣タンゲ・フーパ』の出力は『撥』の最大出力に遠く及ばない。

 故に俺は今ここに数十秒ただ立っているだけだ。オーク達に攻撃をもらうこともなければ、与えることもない。しかしそれも終わりだ。


「『罅念はぜごころ』」


 バリアという形で、長時間弱い出力の『撥』を使い続けるという制約を自身に課した俺は一時的に自身の『撥』の出力を通常の上限以上に引き出すことができる。

 その出力は一時的だがサイコキネシスをさせる。結果として俺は通常特定の方向に対し、自分を始点として直線でしか発動できない『撥』を捻じ曲げ、直線以外で力を加えることを可能にした。

 俺がしたサイコキネシスに与える命令は一つ。『廻り、一点に集中しろ』それだけである。

 この命令を下すと同時に、俺の周りのオークおよそ四十体は空中で振り回されるかの如く浮かされていく。

 空中のオーク達はある一点を中心に、その周りを廻り続けている。まるで元々の世界の太陽に対する地球の公転のように。

 だが、命令通りだんだんオーク達は一点に集中する。四十体のオークがただ一点に集まろうとし続ければどうなるか?答えは単純である。

 俺が『罅念はぜごころ』してから八秒、『否接衣タンゲ・フーパ』発動まで含めるなら三十四秒でオーク四十四体を絞り、圧殺した。


「終わりだ」


 そう言うと一点に集まったオーク達の死骸が力を一気に発散するようにして辺り一面に散る。

 まるで死骸が爆ぜるように、、、

 散ったオークの死骸達を汚いなと思っていると、ミリタリアが俺の近くに降りてくる。

 急に落としやがって。そう一言言ってやろうとしたときに、それよりも早くミリタリアが言葉を発する。


「クリュー、、君も十分化け物じゃ〜ん。もしかして、もしかしたらだけど〜、いつか王道十二「ないっ!」


「それだけはない。何が嫌って、お前とホワイみたいな奴らの相手をし続けなければならないことだよ!」


 ミリタリアは俺を化け物だと言ったが、こいつにとって今俺がやったことなんて簡単なのだろう。もしそうでなければ『一円規モノ』失格だ。


「それが栄誉なことであるとまだ分からんのかお前さん。儂と話せば自然とその後光に差され、感謝に溢れように、、、」


「ハハッ、、、ホワイ、主語を間違ちゃってない。それを言うならでしょ。もしわざとそう言ったなら勘違いも甚だしいよ、、、ハハッ」


 どっちもちげぇし、『ハハッ』ってミッキーマウスかお前は。

 そんなことは置いといて、ホワイがこちらにやってきたということはホワイの周りのオークは全て倒してきたということだろう。


 ホワイがやってきた方を見ると、さっき見たのと同様にフィギュアの様に特定の姿勢を保ったままのオーク達が立っていた。中には生物が物理的に立ち続けるのは厳しい姿勢もあり、等身大のフィギュアが無数にあるようで気持ち悪かった。オークって平均して3m近くあるからな。デカすぎるんだよ。


「ホワイ、、これってしっかり倒せてんのか?動き止めてる様にしか見えないんだけど」


 正確に言えばオーク達の頭から金の刃が突き出しており、ダメージを与えていることは分かる。しかし、ただ地面から頭まで突き抜けただけでは説明しきれない体勢のオーク達がいたため俺はその疑問を抱く。

 魔物は人間と違って魔石を直接破壊しない場合、相当なダメージを与えることでしか倒せないからな。地面から頭まで突き刺す程度では死なない奴が多い。、、ま、聞いた話だけど。


「クリュー、、話の続き。ホワイの魔法が金を生成したり、状態を変化させたり、操れることは言ったよね。ホワイは今回、、最初に槍を使った。あれは元々ホワイの周りを覆うように存在していた気体になった金属を固体に変化させて槍の形にしたの」


 今の話を聞いてふと、思ったんだが金属って気体になるんだっけ?もう転生してから五年もそこら辺の勉強できずにいるからな。忘れるのも仕方ないだろう?

 まぁでも確かいけたような〜。

 そう考えている間にもミリタリアの話は続いていく。


「ホワイは地面に突き刺した槍の矛先を変化させオーク達の地面、、立っている位置から上に突き刺す様な形にした。もちろん地面の土とかも金に変えて、金の量増やした上でだよ」


 ミリタリアは一旦ここで説明するのを止める。

 今の解説は理解できた。しかしそれだけじゃあ、、


「オーク達があんな風に固まっている訳がわからない。、、、、、そうでしょ?」


 見事に言い当てられてしまう俺。こいつ、そういうところだけ妙に賢いよな。


「ホワイはね、オークの体の中でも土中でやったのと同様に金を操作するんだよ。結果として体の中で無数の刃となり枝分かれした金が骨格となって銅像の様に姿勢を保ったまま死ぬことになるの」


 なるほど。でもそれは結構残虐な殺し方だな。だって今、オークの体の中、血管みたいな感じで金があるってことだろ。俺だったら痛そうだし絶対嫌だわ。

 しかし思うんだが、


「お前さ、、人の魔法の詳細とかペラペラと勝手に教えていい訳?自分は隠しとくくせしてさ。魔法の開示とかもあるんだし勝手にいうのってどうかと思うよ」


 俺がそういうとミリタリアはあんぐりと口を開けて驚く。その後慌てて俺に対し言い訳を口にし始める。


「ク、ク、クリューが知りたいって言ったから教えたんじゃん!だからは悪くありませ〜ん。は死にませーん」


 まるで俺が悪いと言いたげだがそうは問屋が卸さない。


「そんなこと一言も言ってねぇし、仮に言ったとしても人に許可なくそれをバラしてしまう時点で人としてどうかと」


「む〜!でもでも、知りたそうな顔してたじゃん。そんな顔してたらもう教えてって言ってるようなもんじゃん!」


「話聞いてなかったの?仮にそうだとしても言う時点で人間として終わってるんだって。まぁ知ってたけど」


「はぁ!確か〜に百万億歩譲ってが悪かったとしてクリューには感謝の気持ちがないの!?があんなに分かりやすく懇切丁寧に解説したのに。失礼にも程がない」


「勝手に説明したくせして厚かましいなぁ。あと懇切丁寧に解説したのがまずいって話なんだが?まぁでも確かに教えてくれたこと自体は感謝してるよ」


「じゃあ、そこまで言わなくても良くない?」


 許してって、感じのミリタリアだが謝るなら俺じゃないし、色々復讐的な意味も込めて追求し続ける。


「い〜や言うね。お前はちゃんと言ってやらないとまたしそうだもの。百万億歩譲らないと悪いと思えない性格がそれを証明してんだろ。大体百万億ってなんだよちゃんとした数字で言えよ。子供かお前は。ある意味お前が強くて良かったよ。もしそれ以外の職になんて就いたら終わりだろ。特に教師とか教える様な仕事だけは無理だな」


 俺の口の悪さを最大限に発揮しながら言うと、本当に怒った様子になるミリタリア。


「あ〜あ〜言っちゃった。今の発言もう撤回できないよ!クリュー、人に散々言ってたけど見る目がないみたいだね〜。は普段教師をやってま〜す!どうせ実技で戦ってもらうのに最善だからとか言うんでしょ?ちっがいま〜す!普通にいろんな授業をやる教師でした!ごめんね、クリューの予想無駄にしちゃってごめんね!」


 人を煽りながらもウィンクをしてくる犬系ミリタリア。普段なら少なからず可愛いと思っていただろう俺もヒートアップしていくこの展開にそう思う間もなく、


「見る目がね〜のはテメェを雇った学校だよ!お前担当の授業とかマジ最悪なんだが。道徳担当するのだけは止めとけよ。創作の中でしか見たことがないレベルのいじめが発生しかねない。特にお前のとこなんて低偏差値の馬鹿どもだろう?」


「あぁん!のことを馬鹿にしたねぇ!低偏差値ってのは何なのか知らんけど、絶対馬鹿にしてる。本当に許さない!!いい、覚えておきなさい!の生徒達のことを笑うのは幾らでも構わない。だけどね、のことを笑うやつのことだけはが絶対に許さないんだから!」


「名言っぽく、クズみたいなこと言ってんな!だから、道徳すんなつってんだよ」


「もう知〜らない!後になっての授業受けたいってなっても許さないからね!」


「当たり前だ!お前みたいな馬鹿に教わるなんてこっちから願い下げだ。馬鹿!」


 そう言われてようやく潮らしくなるミリタリア。少し悪いことをしてしまっただろうか?いや、これでいい。あっちだって色々言ったり、してきた訳だしな。

 しかしどうやら俺とミリタリアは何故だか知らないがすごく言い合いに発展するようだ。こいつの言うことは何もかも否定したくなってたまらない。

 いや、、、、待て、、俺以外にもホワイや王様とかともコイツは言い争っていたな。つまり、言い争うのは俺だけではない?、、ハッ!だから王様あいつが嫌われてるとか言ってたんだ。納得いったわ。しかしあいつ、あの時でさえ猫被りすぎだろ。被りすぎな上で問題があった訳だが。

 そんなふうなことを考えていると、ホワイも口を挟んでくる。


「クリューソス、儂は魔法の詳細を話されようがさして気にはせん。その様なことを気にするのは英雄の器でない。そも、儂は世界の主人公、老いることでしか死にはせんし、負けもせん。であれば魔法の開示などという小賢こざかしい真似もせんから怒りはせん」


 ホワイは自身は主人公故に自分の魔法を教えるような真似はしないと高々と語る。主人公はむしろ自分の能力をペラペラ喋ってるような気もするが。

 いや、どちらかといえばそれは敵側か?まぁどちらにせよコイツはそれを本当に気にしていないのだろうな。どこまでも自信満々で自由気ままな男、ホワイ。

 しっかし、、同じ自信満々でもミリタリアとホワイでウザさがここまで違うのは何故なんだろう?


 どっちも面倒という意味での馬鹿なのは間違いないが。


「まぁホワイ自身がそう言うならいいけどさ。別に俺のこと言われたわけでもないし」


 俺がそう言うとホワイはまだ言うことがあったといった顔になってから話し始める。


「それと先の一言を訂正する必要があると思うぞ。奴が馬鹿なのは事実だが、人にものを教える教師として優秀なのもまた事実である。つまり儂が言いたいのは謝れということだ」


 ホワイの口から発されたのは信じられない言葉であり、はっきり言って『嘘だ!』という、かの有名なセリフが出そうなくらいには信じられない。

 このホワイの言葉をきっかけにミリタリアはまた息を吹き返す。


「ほら〜。だから言ったじゃん、が超優秀な教師なんだって」


「少なくともお前自身はそんなこと言ってねぇし、ホワイもそこまでは言ってねぇよ。すぐ捏造すんの止めろ。まぁでもホワイが言うならギリギリのギリで信じられるからな。そこは素直に悪かったなとは思ったよ。ごめんな」


 俺がそう言うとまるで勝ち誇った様な表情をするようなミリタリアに『お前に言い負かされた訳じゃねぇからな』と言いたいがもうあんな会話するのは面倒なのでやめておく。やっぱさっき悪いことしたと思わなくて良かったみたいだな。

 しかしいい加減いつまでも勝ち誇った顔をされてると腹立ってくるな。

 その顔にムカついてるとホワイがとあることを言う。


「ミリタリア、気にせんとは言ったが本来ならば許されぬことをしたというのを努努ゆめゆめ忘れるでないぞ」


 そう言われるとまた潮らしくなるミリタリア。


 ふっ、ざまぁ。


「その詫びとしてクリューソスにお前さんの魔法を見せてやってくれんか!儂の黄金伝説爆おうごんでんせつばく誕操術魔法たんそうじゅつまほうの詳細を語ったのだからこれで公正フェアというものであろう?」


 俺はホワイのその発言を聞き、ここにきてようやくミリタリアの戦闘が見れるのかもしれない。と、正直胸を膨らませていた。だって衝撃波を馬鹿みたいに飛ばすバチクソ硬い奴とか、剣と盾を変化させて突然強い衝撃を出す&魔術発動見切ってくる奴とか、相手の体の中で金を体中に通る血管の様にくまなく埋め込むことで体を固定する奴とかよりも強いってことだろ。しかもそいつらの中で一番強いのが『七天秤ヘプタ』だ。その六つ上の一円規モノならば一体どれほどの強さなのかは正直想像もつかない。

 俺は戦闘狂でないし、戦いはせざるをえないもの程度の認識だ。とはいえ最強という響きには多少興奮するものはある。俺も一応男だしな。


「はぁ、、まぁ、、良いよ。世界一強い女の世界一強い魔法。その真髄をクリューに見せてあげましょう。驚きすぎて目が飛び出て、その目が魔物に貪り食われようと責任は負わないからね」


 戦う気が満々なミリタリアだが、俺はそこで一つ疑問があった。それは、


「ホワイ、戦ってもらうって言ってたけど相手はどこにいるんだ?いなくない?」


 そう、既にオーク約百二十体は俺が圧殺したのと、ホワイが、、、あれは何殺というのだろうか?まぁとにかくホワイが殺した奴ら、それで全部になっている。

 つまりもう戦う相手は残っていないはずなのだ。


「ノンノン。それは違うよクリュー。何やら珍しいお客さんがに倒されにきたみたいだ」


 そうミリタリアが口にするとさっきの俺たちと同様に空から何者かが降ってきた。いや、これは者というより、物かもしれない。


 降ってきたのはかつて俺が戦った魔物であった。


 そして俺が戦った魔物は今回のオーク達を除き一体しかいない。まぁそいつもオークなので俺はオークとしか戦ったことがない訳だが。それに実際のところ奴がオークだったのかも怪しいしな。






 そう、今目の前に現れたのはかつて俺が戦った変異種であるオークだったのだ。

 オークは地面に着地して俺たちの方を向く。その巨体と降りてくる高さから、かなりの音を出しながらであった。

 俺が以前変異種と戦ったとき、初めは緑色で姿形も普通のオークであった。対して今回は初めからオークは六本腕になっていた。だが、俺が戦かったときと異なるのは体のメインとなる色が白であったことだ。





「多少特異な姿だからっては特別扱いしないよ。演者が与えるサービスは平等でないとね。しかも残念なことに今回を讃える観客はクリューとホワイしかいないからね。過度な演出もいらない。だから特に君との戦いを長引かせて、観客を楽しませる必要はない。でもね!だからこそせめて君の死が印象に残る様、、、」


 ミリタリアがそう口にする中、オークがついに動き出す。オークは攻撃しようとする中、声を発する。

 オークの六本の腕のうちオーク自身から見て右上と中央の右腕を使いミリタリアを殴ろうとした。


「何で殺したんだよ〜〜〜!!!」


 オークという魔物、あるいは俺が以前倒した変異種オークからしてみれば考えられないような人道的、仲間思いな言葉を発する変異種オーク。俺はそれに驚き、目を見開く。


 だが、そんなオークの嘆きなど一切気にせずに、ミリタリアは話を続ける。


「、、、一撃でぶっ殺してやるよ」


 最強の一撃が炸裂するまで残り二分。

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