第57話 オカルトツアー


「宇多方」について語ろう。


 小さな旅行代理店が少し前に、「宇多方オカルトツアー」を企画したらしい。宇多方らしい伝説の残っている観光スポットを巡り歩く、という内容である。まちがっても、「別界の門」を探し出して、その中に入ろうというわけではない。


 それでも、マニアックな若者の心をとらえたのか、百人以上の参加希望者が殺到したという。インターネットの普及によって、宇多方のオカルト的な知名度は、決して低くはないのだ。


 かくして、「宇多方オカルトツアー」が開催される運びとなった。「戻り人」や専門家が同行して、危険なエリアには近づかないことが徹底されたし、安全管理面の準備も行き届いていたといわれている。


 しかし、直前になって、「宇多方オカルトツアー」は中止になった。旅行代理店の全社員が社屋ごと、この世から消失しまったからだ。


「まちがいなく別界がらみである」と、専門家は断言した。「人間の見世物にされることが、別界の逆鱗げきりんに触れたのだろう」と。




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