第8話 花と与平
「ずっと、一緒だぁ・・・」
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昔、ずっと遠い昔。
大変だった時代があったのだろう。
そんなことを、想像します。
毎日。
死ぬほど働いて。
それでも。
お腹いっぱい食べるなんて。
夢だった。
時代。
そんな時代の。
ラブストーリーを。
綴ってみました。
勘違いしているとは。
思いますが。
御読みいただければ。
幸いです。
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第1話 憧れの君
「ギャーハハッハー・・・」
喧騒が狭い民家に響いています。
むせるような汗と、酒の臭い。
祭り以外での酒の味に。
男達はこれでもかと、喉を鳴らしています。
女達は。
宴会の料理や配膳に追われ。
遠巻きに眺めています。
霞んだ視界の中で。
ポツンと花嫁が座っています。
花婿の与平は。
廻りの男達に勧められるまま。
酒を煽り。
心の中で叫んでいます。
≪なんて、メンコイおなごなんじゃ・・・≫
チラチラと、花を眺めながら張り裂けそうな歓びを噛みしめているのです。
細い肩先。
小さな、あご。
ふくよかな頬。
何もかも。
与平が憧れていた。
大好きな。
初恋の女の子。
それが。
花、なのですから。
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第2話 嫁いでみれば
足のしびれは、それほど気にはならなかった。
酒臭い息が充満する、嫁ぎ先の家屋での婚礼の喧噪も。
花にとってみれば、結婚という人生の一大イベントだったから。
チラリと見た旦那様。
若くて逞しく、結構、良い男。
花には十分すぎるほどの人に思えたのです。
だから。
終わりの見えない宴会が続く中も。
ジッと。
待っていたのでした。
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第3話 それでも、幸せ
「痛いっ・・・」
花が指を押さえ、うずくまった。
「大丈夫か?」
急いで駆けつけた与平が心配そうに花の手をとる。
「草の棘がささっただけ・・・」
囁くような声に与平の胸にざわめきが起こる。
夫婦(めおと)になって二年になるというのに。
いまだに花を愛おしく思う自分が恥ずかしくなるほどに。
与平は花が大好きだったのです。
そんな。
夫の眼差しを見つめ返す花は。
幸せだな、と。
思うのでした。
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第4話 これからが旅立ち
「うっ・・・」
膝を押さえた与平がうずくまります。
「大丈夫・・・?」
心配そうに見つめる花の瞳も、若い頃の輝きはありません。
それでも。
見つめ合う二人の眼差しは。
どんな恋の物語でも。
描き切れないエピソードが映っているのでした。
二人にとって。
これからの時間は。
ただ。
そう、ただ。
楽しいことだけが。
綴られていく。
幸せな。
旅。
なの、ですから。
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あとがき
これは、余計だったですね。(笑)
折角、余韻をもって終わったのに。
僕が、貴方が、愛おしい人と終わりの時間を迎える瞬間を想像しました。
若い方々には。
想像もつかないでしょうね。
でも、僕達には時間が限られているのですよ。
人生の充電のインジケーターは。
もう、20%もないのだから。(笑)
一瞬、一瞬が愛おしい。
そんな思いで。
綴っております。
勿論。
酔っぱらっていますが。(笑)
星もハートもいらないですよ。(本当です)
読んでいただくだけで。
幸せなのです。
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