整容指導

や、やばい


終わった…



「い、五十嵐くん…」


僕は泣きながら五十嵐くんにしがみついた。



「な、山田どうしたんだよ。」



「つ、爪…」



「爪?」





「切るの忘れたぁぁあああぁぁぁぁぁぁあ」



僕の名前は山田優希。一軍などと呼ばれてる陽キャとは、程遠いが友達はそれなりにいる。(男のみ)

 まぁ、あれだ。ちまたでよく言われる普通の高校生というのが僕にはお似合いだろう。


 つまり、別にやんちゃしてたり、ピアスを開けたりなどはしていない。先生からも好印象なのである。


 しかし、そんな僕でも先生に嫌われたり離れられたりする場面がある。

 そう、それは、整容指導の場面である!


例えば、、、


『あれ?君さぁ前髪長いよ?もっと前向かないとさぁ友達もできないんじゃないのぉ?笑笑笑』


『お前?もしかして不良か?後で職員室に来なさい。』



などと、言われてしまったら俺の青春が脅かされてしまう。


 いつもの僕なら、、、爪をこまめに切っていただろうに、最近始まった昼ドラが面白すぎて…!家に帰っては観るというのを繰り返しているうちに


気づいたら寝る時間。


またしても寝る時間。


気づいたら朝だった。



みたいな、不健康な日々を送っていたバチ当たりだろうか?


 とりあえず!そんなこと考えてもしょうがない!持っているやつを探すしかない!


 まずは、五十嵐だ!


「五十嵐さ、爪切り持ってたりしない?」


「持ってないが?」


「ですよね泣」


「てか、男子で持ってるのちょっとキモくね?」


 ど正論である。


「だ、だよなぁ笑 他に持ってたりするやつしらない?」


「まぁ、女子とかなら持ってんじゃね?」


「ギュッ(胸の締まる音)」


「おい、優希大丈夫か?」


ごめんなさい泣、、、女友達いなくて、、、


こうして僕は心に深い傷を負った。


「ジョシコワイ、、、ジョシダケハムリ。」


「え?お前女友達1人もいないの笑?」


「え、あ、はい」


「wwwwwwwwwww」


「おい!笑うなよ!」


僕がいないと言った瞬間に五十嵐は大爆笑をし始めた。


「え?お前高校生になって女子と話したことは?」


「な、ない」


「はっ笑」


「ペアワークとかは?笑」


「一回も、ないです、、、」


「どういう運の持ち主だよ笑笑笑笑」


 五十嵐は机を軽く叩き笑いながら恥ずかしくて死にそうな僕の顔を見ていた。


「もう、五十嵐なんて知らん!!!!!!」


そう言って教室を飛び出した。


しかし、五十嵐と話しすぎていたせいで不運にも、爪を切ることを忘れていた。


「山井の次は山田だよな?山田ー?」


お、終わった…


先生に呼ばれた時同時に死を覚悟した。


「はい、山田です。」


先生が上から下をじーっと見回す。


「ピアスとかは、空いてないし服もばっしりと決まってんな!次は手と足な。」


胸の鼓動がありえないくらい早くなっている。


「おっ、お前爪のびてんじゃーん。次から気をつけろよー」


「え?それだけですか?」


「爪ぐらい怒る対象に入んねーよ笑。保健室の爪切り貸すから次からは気をつけるんだぞ!」


「はい!」


こうして、僕の1日日記は終わった。


「五十嵐しね!」


「なんで!?」


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