【完結】妹が礼をすると言ったので、キスして欲しいと頼んだ

あかせ

第1話 俺とキスしてくれ!

 帰ったらゲームでもしようかな…。高校からの帰り道、俺はそんな事を考えながら自宅に向かって歩いていた。いや、漫画の新刊も読みたいし応援している妹系Vtuberの動画も見たいな。


やりたいことが多くて困る。影分身できれば良いのに…。なんてくだらない事を考えてる内に、自宅そばの横断歩道前に着いた。


…今は赤だから、青になるまでに考えをまとめよう。幸い近くに人はいないから、独り言が出ても問題なさそうだ。そう思った時、俺とは別の方向から歩きスマホをしている女子高生が近くに来た。


気になってその子を観たところ、妹の由香ゆかだった。俺は彼女をとして見ているが、バレないように振舞っている。もしバレたら兄妹の縁を切られるかもな。



 …由香は俺の隣を通り過ぎても止まろうとせず、横断歩道を渡ろうとする。もしかして、歩きスマホに夢中で赤信号に気付いてない? すぐ止めないと!


「由香! 止まれ!!」


「……え?」

由香は足を止めて振り返り、俺のほうを観る。


その後すぐ、トラックが振り返った彼女の後ろを通っていく。


「あぁ……」


一気に青ざめた由香はその場に座り込む。おそらく腰を抜かしたんだろう。あのまま渡っていたら轢かれていたし、気持ちはわかるけど。


俺はすぐ彼女の元に行き、手を差し出す。


「この辺は車が少ないからって油断し過ぎだ!! 気を付けろ!!」


「ごめん…なさい」

由香は涙ぐむ。


本当は泣かせたくないが、状況が状況だ。厳しく言うのは仕方ないよな。



 自宅まですぐなので、俺と由香は一緒に帰ることにした。


「ねぇお兄ちゃん。さっきの事なんだけど…」

彼女は不安そうな顔をする。


「心配するな。『2度と歩きスマホをしない』と誓うなら、父さんと母さんに言うつもりはない」


「誓うよ。2度としないから」


俺はその言葉を信じるほかない。心を入れ替えてくれると良いが。


「お兄ちゃんはあたしの命の恩人だね。あたしにできることなら何でもやるから遠慮なく言って」


「何でもって…」

シスコンの俺には禁句だろ。妄想が膨らみ続ける。


「かなりHなことは厳しいけど…。まぁ、お兄ちゃんがそんな事言う訳ないよね」


クギを刺されたことで、選択肢がほとんど削られてしまった…。


「……」

何を言おうか迷う。


「何かしないと、あたしの気が済まないの! どんなことでもから!」


それは良いことを聴いたな。再び選択肢が増えたぞ。



 さっき由香は『かなりHなことは厳しい』と言った。つまり“軽いHなこと”なら良い訳だ。らしいし、条件に合えば絶対やってくれるはず。


その条件に合うことといえば…。


「由香。俺とキスしてくれ!」

これなら問題ないと思うが…?


「え…?」

彼女はポカンとした顔をする。


もっともらしい理由を言えば、説得力が増すか? 一押ししてみよう。


「キスは実際にやらないと上達しないだろう? いずれできる彼女のために練習したいんだよ」


自分で言っておいてなんだが、ひどい理由だ。一押しどころか逆効果かも?


「よくわからないけど、お兄ちゃんがそれで良いなら…。キスはかなりHなことじゃないし」


キスシーンは映画やドラマの定番演出だから、由香の抵抗感はほとんどないようだ。おかげで助かったぞ。


「早速、家に帰ったらやろう」


「うん…」


興奮を頑張って抑えながら、俺達は自宅に向かって歩き出す。

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