第12話 『満十六歳未満はダンジョン攻略禁止』って通達が来たんだけど。私、十一歳なんだけどここでマジで終わったわ。
「え?」クゥは画面に出てきた官報を見て思わず言葉が漏れた。
『満十六歳未満のいかなる人物も、始まりの森及び
「
「え。えー! あれー! えー。うわー。あー。終わっちゃった。わらわら。終わっちゃった。ええん」
「どうにかできひんのかこれ」峯音は横から覗き込む。
「本来言うて火憐はここに
「それが
「そうやな。最初のは冗談やで。火憐が歳を取るまで待つしかない。十六歳になってから始まりのボスにチャレンジしたらええ。五年間待てばいいだけや」
「こんなゴブリンしかいない森に五年。嫌だ! お店とか行きたい」
「始まりの森の近くに『サイクス』っちゅう宿場町があるんやけど。そこもまたダンジョン攻略者じゃないと目の前に現れてくれへんしなあ。始まりの森の攻略率、知っとる? 二パーセントやで。九十八パーセントは森の中を延々と
「多分だけどね。五年も居たら私死んじゃうと思うな。自信ある」
「火憐だから特別な何かがあると思うてもうたんだけどな」
「出た。特別。でもこの際は特別が良いな。私死んじゃうよ」
「『その本当の意味を誰一人知らない』」
突然に。唐突に。その影は現れた。
一気に『空間』クゥは殺気を放った。
「貴様誰だ! どこから来た。『
その影は空間に圧縮されるように縛られた。外から見ていても分かるが、空気圧が寸分の隙間もなく影を縛り付けた。
が。
服だけ残し、ぺちゃんと影は潰れた。
再び地面から現れる影。
「ぬう。お前は『モノトーン』か」
「ワタクシに関して余計な情報は要らない。荒巻火憐。一万回討伐すればボスは現れます。以上」
影はすーっと地面へと消えていった。
「……『鑑定』も出来んかったわ。完全に情報をロックしとった。オレのレベルで『鑑定』が出来ないって一体何なんや。システム上はありえん話だろ」
「……僕は具現化していなかったら多分吸収されてましたね」
「『ワタクシに関して余計な情報は要らない』」
ドクンッと四人の頭に言葉が
「朗報だ朗報だあ! 私が例外で始まりの森のボスにチャレンジできるぞー! だけどその前に一万回の討伐クエスト。もしかしてこれクエスト攻略に五年掛かったら誰かさんの働き掛けも無駄になっちゃうってことなのかな。それも良いかも。誰かの計画を破綻できるってそれ以上に気持ちの良いことってないよね。わらわら」
「さあ修行だ火憐」
「誤報になってくれえ!」
☆☆☆
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「はい。こんにちは。荒巻火憐です。あ、異世界ラジオパーソナリティの荒巻火憐です。
ええっとですね。今日は修行です。何か一万回の討伐しなきゃいけないことが確定したらしくですね。ええ。前回はつまんねえ動画を配信してしまい申し訳なく思っています。はい。
今回は面白くやりたい! だからスパチャも前みたいな勢いを取り戻して! ライブの視聴者数も何でこんなに減ってるの。お金とかどうでもいいから人気者になりたいんです。ええん。
今日のゲームは『目には見えない長縄跳び』です。また意味不明なことを考えてとか思わないでね。
はい。出ました。ゴブリンSの群れ。丁度いいですね。え? 『餌をまいていただけだろ』『運が良い振りをするのはやめろ』。ああん賢い。その通りですよ。蜂蜜と林檎を
行きます。まずは空間を掴みます。
ほら。空間が空中に集まって来てるでしょ。それに合わせてゴブリンSも吸い込まれていきます。吸い込まれるというか、ぎゅうぎゅうに押し込められている感じですね。
両手でやっていますよー! ここで! えいや! そいや! 右手左手を交互に、長縄跳びを回す感覚で。えいや! そいや! ゴブリンS達をぐらんぐらんに混ぜ回すんです。えいや! そいや!」
☆☆☆
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「やっと倒せました。いかがでしたか『目に見えない長縄跳び』。ううん。『効率が悪過ぎる』『普通に潰せ』。なーんか最近のスパチャ民は治安が悪いですねえ。誰か褒めて!
この動画が良いと思ったら、グッドボタンを押してもらうか、チャンネル登録もしてくれたら嬉しいです。ライブチャット以外で見た人はねコメント欄にもね、どしどしコメントくださいな。以上、異世界ラジオパーソナリティ荒巻火憐でしたー。まったねー」
☆☆☆
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「火憐。腕大丈夫か。『
「重たかったけど楽しかったよ」
「腕は?」
「全然普通」
「腕貸してみ。ほれ、ここ押してみて痛くないんか?」
「いったい、けど。押した感じが痛いだけだよ。筋肉が痛い感じはしない」
クゥが何気なしに訊いてきた。
「火憐。楽しんだか?」
「心の底から」
「そういうことや。峯音」
「?」
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