第11話 『最後の選択肢』

 私、全問正解ぜんもんせいかいは私立探偵だ。


 私には人には言えない特技がある。


 それは、数ある選択肢において、一度たりとも間違えたことがないのだ。


 ただ、それは額に人差し指を当てて頭の中に選択肢が浮かぶのが条件だ。


 選択肢が浮かばなければ、私は選ばない……いや、選べないのだ。


「先生、おっぱいが重くて疲れたので休ませてください」


 私の頭の上におっぱいを乗せて休憩しているのが、探偵見習いで助手の巨乳女子高生解答ハズス。先の『既成事実』により、私への接触が格段に増えた。素直な性格なのだが、自分の一番の武器であるおっぱいで私を攻撃するしたたかな性格を併せ持つ。


 男はみんな、おっぱい属性に弱いものだ。


「あ!ハズスちゃんいいなぁ~。私は膝枕してもらおっと!」


 私の膝にダイブする元カノ実原ヤサシイ。ギャルの見た目とは裏腹に有名看護大学に通っている。私の膝の上でゴロゴロするのは構わないのだが、大きめのタンクトップからいろいろ飛び出しそうだ。


 距離感のおかしい彼女は、たまに「近視なのかな?」と思わせる。


「あら~正解は朝から女の子に囲まれていいわね~。あなたの選択肢は、まるでエロゲーヒロイン全員攻略ルートね」


 コーヒーを両手に持ち、厳しい口調で私の向かいに座る彼女が元カノ気月ヨイ、現役警察官。


 さすが頭脳明晰であるヨイは私の今の状況を的確に嫌みを添えて解説する頭の良さを持っている。

 しかし、ちゃんと私の分のコーヒーをテーブルに置き、いつものように砂糖を三つ入れて渡してくれる優しい一面も持つ。


「ねぇ、ヨイピー、その大きめのシャツ、正解のじゃない?」


 私の膝でゴロゴロしているヤサシイがヨイの服装を指摘する。


 昨夜、私の布団に忍び込んだヨイは「たまには夜這いよ……警察官失格ね」と言っていた。


 朝、私のシャツとバレるのを承知で着るあたり、案外独占欲が強いことが推測される。


「か、借りたのよ!何よ!文句あるの?」


「せ・ん・せ・い……どゆこと?」


 ハズス君が私の頭を自慢の巨乳で交互に叩く。


「あはは、正解おもろ」


 ハズス君のおっぱいスティックで叩かれ、私の頭がドラムのように上下に揺れるのを、私の膝の上で腹をかかえて笑っているヤサシイ。


「やめなさいって!」


 ヨイが止めに入る。ワイシャツから覗くおっぱいが私に迫る。彼女はいわゆる隠れ巨乳だ。職業柄、普段はきつめのブラジャーでその存在を隠しているが、解き放たれた時の存在感はハンパない。それを独占している私は、幸せ者というより、世の男性の仇敵あだがたきなのだろう。


 いつか、私の頭の中に彼女達の誰かを選ぶ選択肢は現れるのだろうか?


 少なくとも、魅力的な彼女達の中からひとりを選ぶなんて……今の私にはできない。


 私は何気に人差し指を額につける。


 ふと、私の頭の中に選択肢が浮かんだ!


 ……え!?


 私の頭の中に浮かんだ選択肢は……。


A 気月ヨイ ⇒14話へ


B 実原ヤサシイ ⇒13話へ


C 解答ハズス ⇒12話へ


 彼女達の……名前だけ?


 こんなこと、今までなかった!


 私は困惑する。


 これは、選んでいい選択肢なのだろうか?


 人生は突然、選択肢を迫られる。


 間違った選択肢を選んだがために人は過ちを犯し、狂い、絶望する。


 私は神様からいただいた特別な力により、選択肢を外さない。


 しかし、本当にそうなのだろうか?


 私が選ばなかった選択肢のほうが、実は良かったなんてことはなかったのだろうか?


 急に不安になる。


 たぶん、これは最後の選択肢だ。


 私の探偵としての感がそう言っている。


 くっ!選択肢に悩む。


 情けないぞ全問正解!


 私は、決して選択肢を外さない!


 外したことがない!


 今までも!


 これからも!!


 私は名探偵、全問正解!!


 私は……外さない!!


 私が選んだが答えは……。


 これだ――!!

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