第4話 辺境伯

わたくしが胸を掴まれている姿を、男性に見られてしまいましたが

馬車の紋章からモンベリア伯のお迎えの方に違いありません。

わたくしは恥ずかしくなり、顔が真っ赤になります。


「あの方はお迎えの方ですよね?」

「そのようですが、胸から手を放しなさい!」

「あ、すみませんでした。エルマさまの胸は大きいので掴みやすいです」

「いくらアストリアでも馬鹿な事をいいますと、殴り飛ばしますよ?」

「す、すみません、すぐに離します」


アストリアは慌てて胸から手を離しますが、法具がなければ言うより先に手が出てと思います。

なので、アストリアを殴らなくて良かったと思います。

わたくしは身なりを整いて、お迎えに来てくださった方も元へ向かうと

立っていた男性は写真で見たお方……つまり、モンベリア伯でありました。

わたくしはさらに驚きますが、まさモンベリア伯直々に迎えに来られるとは思いませんでした。


「エルマ様、お迎えに遅れた上に私がエスコートしなければいけないのに

わざわざこちらまで来ていただき、ご足労をかけました。どう謝罪したらよいのか」


モンベリア伯は跪いて謝罪をするが、ここまでしてくださなくて良いのに。

それに、アストリアに胸を掴まれいるあの状況では、誰も近づく事は出来ません


「いえ、あの状況で近寄るのは無理というものです……」

「そうだとしましても、お迎えに上がるのが遅れた事はこちらの問題であります」

「謝罪はお受けますので、早くお屋敷に向かいましょう」

「そうですね。お荷物は……それだけですか?」

「はい、これだけになります。あと、従者もアストリアだけとなります」

「わかりました。では、馬車にお乗りください」

「では、失礼いたします」

「お邪魔します」


馬車に乗りますと、モンベリア伯と向かい合って座ります。

馬車は少し古いですが、手入れされて大事に使われているようです。

馬車に乗るのはわたくしたち3人ですが、護衛が乗った馬車が前後にいます。


「この度は私の様な田舎貴族と結婚していただきありがとうございます。

まさか、テック公のご令嬢がこのような田舎といいますが、辺境に来るとは思いませんでした」

「いえ、お礼を言わせていただくのはこちらです。19になっても婚約相手すら

居なかったわたくしとご結婚していただくとは思いませんでした」

「そんな、こんなに可愛らしい方なのに。帝都の貴族は見る目がないのですね」

「か、かわいいなんて、そんな……」


かわいいなんて今まで言われた事がありませんの、顔が真っ赤になります。

帝都では狂犬と言われて恐れられ、男性を好きになるどころか初恋をした覚えすらありません。

貴族の令嬢の役目で、結婚して世継ぎを残すという事は考えていましたが、

よくよく考えったらわたくしは男性と必要なこと以外話した事ありません。

さらに同年代の男子には悪口を言われて、殴り飛ばした記憶しかありませんし……。


「赤くなられるとは本当に可愛らしいお方ですね」

「そ、それ以上はやめてください。男性とは必要最低限な事しかお話した事がありませんので」

「そんなに純情なお方でしたか。私の様な遊び人と違いますね」

「遊び人!?」


真面目そうなモンベリア伯空こんな言葉出るとは思いませんでした。

実際、貴族の男子は女性の話ばかりでしたしので、モンベリア伯もやはり男性と

言う事ですか。


「遊び人と言うのは冗談です。ただ、女性との経験は少なからずあります」

「そ、そうですか」

「すみません、軽蔑しまたか」

「いえ、そう言う訳ではありません。男性とはそう言うもですし」

「気を悪くしましたら、謝罪いたします」

「い、いえ、そんなことはありません、お気にならさずに。

モンベリア伯はわたくしの夫なので、そんなへりくだらないでください」

「確かに私はエルマ様の夫ですが、身分が違いますので」


確かに公爵の娘と伯爵では身分差がありますが、わたくしは家を乗っ取りに

来た訳ではなく、普通に嫁い入りに来たのです。

わたくしも父にモンベリア伯の事を探るようにと言われると思いましたが


『お前にそんな事を頼まん。結婚して、孫の顔を見せてくれ』


と珍しくデレた顔をしておりましたので、わたくし自身も正直拍子抜けでした。


「確かに、わたくしはモンベリア伯……いえ、ブリード様より生まれの

身分が上でありますが、これからはブリード様の妻となりますので同じ身分でございます」


わたくしがこのように言うと


「確かに、妻をエルマ様と呼ぶのはおかしいですね。私の妻とですのでエルマと呼びますね」


とモンベリア伯……いえ、ブリード様はおっしゃりました。


「そうしてください、ブリード様」


表情は出来るだけ平然としていますが、なんですがこれは。

父以外の男性……いえ、父ですらお前とで呼んでいたので

初めて名前を呼び捨てにされて、背中がむずがゆいくてて変な汗がでてきました。


「私が呼び捨てにしたので、エルマもブリードと呼んでく……れ」

「わかりいました、ブリード」

「はい、エルマ……」


わたくしがブリードと呼ぶと返事をしまたが、こちらも背中がむずがゆいです。

なんですかこれ、結婚をするというのはこんなに恥ずかしい事なんですが?

つまり、父も母と結婚する時、こんな感じだったのでしょうか。

今の父がこんな初々しかったなんて、想像がつきませんが父と母は

親に決められた結婚相手でなく、互いに別の相手がいたそうで

大ロマンスの上に結婚したそうなので、正直意外なのです。


しかも、その話はアレンジされて演劇や小説になって、平民に人気だそうです。

わたくしも小説をこっそりに読んだのですが、かなり脚色れてはいますが

ほとんどが実話だそうで、やはり今の父からは想像もできません。


 話がそれましたが、わたくしたちのやり取りをみてアストリアは笑いを堪えています。

アストリアからしたら、このようなわたくしを見るのは初めてなので

気持ちはわかりますが笑う事はないと思います。

わたくしだって恥ずかしいのですが、恥ずかしがる姿をアストリアに

見せた事は今までありませんでした。


「ところで、お付の者は令嬢なのに男の子なのですね?しかし、名前は女の子のようですが」


見た目は男子なのにアストリという女性の名前でアブリードは不思議がっていますが仕方がないですね。


「このような恰好をしていますが、女性です」

「やはり、女の子ですよね。しかし、なぜこのような恰好なのですか?」


ブリードはが疑問に持っていますが、この格好の方が動きやすくて良いとからと説明をしました。

あと、アストリアがこの中で一番年上と言う事も説明しました。


「アストリアはわたくしが3歳の時から18年間側についております」

「そうですか、失礼しました。そうたしますと、アストリアさんが一番の年長者なんですね」

「わたしの様な者に様付けなんてしないでください。アストリアとお呼びしてください」

「わかりました。アストリア、これからよろしくお願いします。

しかし、女性だとしても、駅前で胸に……触れるのは……」

「あ、あれはですね……」


わたくしがフリードに説明をします。

アストリアが胸を掴んだのは、わたくしは不安になると際限なく落ち込むため

引き戻すために胸を掴んだのですが、なぜ胸を掴むと落ち着くかは自分でもわかりませんが。


「アストリアもそれはわかっていましたのであのような事を……」

「周りに人がいなかったので、ついです」

「そうでしたか。帝都と比べたら人が少ないですが、私は帝都の様に人が多い所は苦手です」


ブリードはこのように言いますが、わたくしも帝都の様に人が多い所は

……というよりも、わたくしに手を出している方が多かくて苦手でした。

もっとも、全て返り討ちにしたのですが、それが原因で「帝都の狂犬」と

呼ばれるようになりなしたが、誘拐目的の人間もいたので正当防衛です。


「帝都にいらしたのですか?」

「陸軍に入隊していた時や当主になってから、何度も帝都に行っております」

「そうなのですね」


ブリードは何度も帝都に来ていると言う事は……わたくしのあの通り名を

知っておられるのか気になります。


「質問あるのですが、わたくしの帝都での呼び名をご存知でしょうか?」

「……はい、知っております」


ブリードはすまなそうにお答えますが、仕方がありません。

自分で言うのもおこがましいですか、美しい見た目に反しておりますし。

加護の影響のためわたくしだって、好きであのような事をした訳ではないのです。


「最初、聞いた時は驚きましたが、加護の影響とお聞きしましたので。

結婚の申し込みあった時は正直言いますと、恐ろしい方かと思いましたが

同封されていました写真を見て、決めさせていただきました」

「そ、そうですか、ありがとございます」

「これでは外見だけで決めたように聞こえますね」

「い、いえ、わたくしもお写真でした拝見しておりませんので、同じです。

このようなお美しい男性の結婚出来て、わたくしは幸せです」

「ありがとうございます」


お互い顔を赤くしてますが、わたくしもなんてことを言っているのでしょうか。

ブリードがお美しいの確かですが、話していて性格もよろしいお方の様です。

わたくしも公爵令嬢として振る舞っておりますが、加護の影響であったとはいえ

今もイライラしますと、以前の様になりますし。

法具があるので、手が出る事はありませんがそのわかり口がでるので、気を付けないといけません。


「お2人とも顔が赤いですよ」


アストリアがニヤついていますが、どうやらお互い純粋の様です。


 外は既に暗くなり、この先はさらに山になり道も険しくなり

盗賊団も出没して危険なので、本日は途中のデジョンの街に泊まる事になりました。

デジョンの街はモンベリア伯領内では中心の街ブサソンの次に大きな街です。

この街は別邸がありまので、鉄道が遅れたり、天候が悪くて道が通れなくなるなど

何か問題が発生した場合に備えて宿泊が出来る様に準備していたそうです。


「到着いたしました。本来ならば、鉄道の到着時と同時に、お迎えに上がる予定でしたが

馬車が故障して、修理をしておりましたら遅れてしまいました」

「それなら仕方がありません。しかし、この馬車はかなりの年代物で

今では手に入らない素材の細工が施されておりますね」

「この馬車は我が家に伝わる馬車で150年前のものです。

手入れと修理をしながら使用していますが、現在はこの通りです」


150年も経つので、すべてが当時のままではないものそれでも痛みがあるのわかります。

しかし、飾りや細工は当時の伝説的な職人の手で作られたため、修復ができないそうです。

また、わたくしとの結婚を機に新しい馬車も作っているそうですが、こんなに早く

嫁ぎに来ると思っていなかったため、まだ完成できていないそうです。


「本来ならば新しい馬車でお迎えする予定でしたが、まだ完成していなくてこのような古い馬車ですみません」

「いえ、まさか2週間後と思いませんでしたし、この馬車も立派な物です。

特に細工に関しては物凄い技巧で。我が家でもここまで凄い細工はありません」

「そ、そんなお世辞をしていただかなくても」

「いえ、これはわたくしの本心です。わたくしの夫なので、もっとご自分に自信をもってくださいませ」

「そうですね、わかりました。あと、外は冷えますので、どうぞ中へ」

「はい、それでは失礼します」

「お邪魔いたします」


わたくしとアストリアはブリードにエスコートされて別邸のの中にはいましたが……

外見は立派でしたが、中は床が歩くたびに音が鳴り、壁も所々はがれおりかなり痛んでおりました。

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