僕の秋は一回足りない

@k_01729

バッテリー

僕のミサンガは昨日切れた。君はとうの昔に亡くなって、僕の願いは天には聞こえなかったようだ。今度は君に聞いて欲しい。そんな願いを込めながら、ミサンガを作っていた。高校に入学してから2年目の秋を迎えた。僕が彼女の隣の席になったのは1年目の夏だった。僕は男子としかうまく話せなくて、半年間ほとんど女子と喋った記憶はない。でも彼女は構わず僕に話しかけてくれた。最初は正直、鬱陶しかったが、彼女のコミニュケーション能力は他の人と比べ物にならないほど優れていて、色々な引き出しから会話を繋げてくれる。捕球だけではなくて、送球まで上手いのだ。僕もつい楽しくなって彼女と話してしまう。でも彼女はクラスの人気者で、誰とでも気さくに話すことができるので、すぐに遠ざかっていってしまう。こんな僕に話しかけてくれた彼女と仲良くなりたかった。素直にそう思っていた。席替えから3週間ほど経って、気づけば秋に差し掛かっていた。文化祭の実行委員を決める時、男子のノリで断れずに立候補することになってしまった。偶然その時、彼女も名乗りを上げていて、同じ実行委員になった。それを気に仲を深め、キャッチボール相手どころか、もうバッテリーが組めるくらいまでにうまくなっていたと思っていた。

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