第3話 人間離れ

「エイリアンにはエイリアンを、かな?」


あたしはアモンの言葉に嫌な想像しかできないでいる。


「それって…あ!そうか!あんたが戦うって意味ね?なるほどなるほど…ね?」


「いやいや、俺だけで戦うのは無理だよ?キミと一つになってるんだから。俺だけってことはキミから離れるということ。そうなったらキミは終わりだよ?」


やっぱり戦えと言っている。絶対に無理。

藪から棒にこの地球外生命体は何を言っているのか。


「いやいやいやいや!あたしは普っ通の女子高生!JK!わかる?戦うなんて無理!そんな化け物同然の奴らなんて敵うわけないの!」


必死で無理矢理あり得ない展開へ持っていこうとするアモンに訴えかける。

事実しか言っていない。普通の学生がエイリアンなんかと戦う意味がわからない。


声を荒げるあたしにアモンは更に話を続ける。


「言ってもキミ、普通じゃないよ?俺が憑いてる。それも相性はバッチリだ。使いこなせると思うんだけどね、俺のチカラ」


チカラ?聞いてない話だ。

ただエイリアンが付いて回る非日常を強いられる人生になるのかとは思っていたけれど。

アニメや漫画に出てくる異能力というやつだろうか。


「チカラ?チカラって超能力とか魔法とかみたいな?変身して戦うとか…」


少しテンションが上がって喋ってしまったあたしにすかさずアモンはツッコミを入れてきた。


「….ちょっとワクワクしてない?」


図星を突かれたあたしは我にかえって話を戻した。


「とにかく!あたしは戦う気なんてない。意味わかんないじゃん。急に普通の女子のあたしが世のため人のための命懸けな人生なんてさ。ヒーローじゃあるまいし」


戦うことを完全に拒否したあたしに意図してかはわからないが良心を煽るように話を続ける。


「ふーん。ま、いいけど。死ぬよ?あの人間達。警察も自衛隊も普通の人だからね。鍛え上げてはいるけど同胞達には到底及ばないね」


「ぬ…ぐっ」

このエイリアンのチカラとやらがあればあたしがどれだけ強くなるのか、本当に戦えるのか。

全てが未知で非現実的だ。

だけど、そもそも隕石が降り注いだあの日から非現実的なことばかりだ。

エイリアン?それが人間に憑く?

こんなわけのわからない非現実が今現実になっている。ならもう…..。


「わかった!わかりました!戦う!戦えばいいんでしょ!戦士でも勇者でも魔法使いでもなりますよ!」


完全に自棄になっている。そりゃアニメみたいな力が使えるようなるなら夢みたいだし興味はある。

でも、あんな異常な犯罪を起こす犯人と、ましてやエイリアンが憑いていて人間捨てたような犯人と実際に戦うなんてどんな状況でも普通受け入れない。

そうか、あたしも既にバグってるんだ。

このエイリアンに命を救われて、ひとつになってしまった時から。

こうなったら…この非現実を楽しんでしまおう。

そう思うことにした。


「じゃチカラについて説明するよ。俺のチカラはリアリゼーション。キミが想像、イメージした攻撃や防御に関することを現実に持ってくることができるんだ」


思っていたものと違う能力に唖然とした。


「…チートすぎない?てゆーかズルくない?火でも水でも氷でも爆発でも何でもござれ!ってことでしょ?」


あたしの問いにアモンは

「俺のチカラでできる限りだけどね。地球を吹っ飛ばすとかは無理だよ?」と笑った。


「じゃ、早速行ってみようか!」


アモンはあたしの体を動かしてテレビを指差した。


「え、事件の現場にってこと?犯人もういないでしょ?」


「違う違う。さすがに犯人はいないけど匂いやチカラの欠片くらいは感じられるはずだからさ。それを辿れば俺が見つけられる。見つけ次第キミが退治するんだ」


退治。アモンの言葉にふと気づく。

「あたし、これから人を殺すんだ…」


人間離れしたチカラを使って、人間離れしたココロで人殺すような悪党を殺す。

法治国家でとても正義とは言えない異常な所業。


これから歩む非日常に少しばかり高揚する自分が怖い。

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