第51話
夕食後。
今日もまた兄ちゃんが作ったものを食べた。
今日は私は学校を休んで旅支度をしていたので、自分が作ると言ったのだが兄ちゃんが譲らなかった。
あれ?この人当主だよな?と毎回のように疑問系に思う。
普通は専属の料理人に任せるのが道理だ。
きちんとこの屋敷にはその料理人がいる。だが、この当主はその仕事を取り上げている。
既に私はガッチリ胃袋は掴まれているのだが、まだ足りないと兄ちゃんは感じているみたいで時間が許す限り毎日のように作っていた。
今日も憎いことに美味しかったなと私は兄ちゃんの腕の良さを恨めしく思った。
「ちょっと明日からの話があるから雫の部屋でしない?お茶とお菓子もあるよ」
『お菓子も手作りだと…!?女子か!!』
「いや、君の未来の旦那さんだけど?」
サラリとこう人が恥ずかしがるようなセリフを息を吐くかのように兄ちゃんは言う。
あの時、兄ちゃんから逃げるなんてことをしなければここまで何度もこんなセリフを言うようにならなかったのかもしれないと過去の自分の行動に後悔した。
『あー、まぁ、はい。部屋どうぞ』
「うん。ありがとう」
兄ちゃんの言葉は一旦私は無視した。
そんなことを気にせずに、兄ちゃんはまるでお手伝いさんのように2人分のお茶と茶菓子を私の部屋の丸机に置く。
私はあまり烏丸の屋敷に人を呼ぶことはないので本来このテーブルはあまり必要はないが、勝手に兄ちゃんが勉強用ではないテーブルを用意していた。
私は学校の勉強後のリラックスタイムのテーブルとして主に使っている。
両手を合わせた後、私は茶と茶菓子に手をつけた。
「明日からの旅行ね、その初代八尾比丘尼の娘が居た場所を辿ろうと思っているんだ」
『私の記憶からで場所が分かったの?』
「うん。土地の特徴からすぐに判明したよ。かなりの田舎だけど八尾比丘尼伝説が残っている村でね、話が完全に一致していた」
『そう…』
「記憶を辿っていけばきっと何かしら反応はあるはず。代々の八尾比丘尼はそこまでしなかった、というか先祖返りは君しか誕生していないのだから意味がなかったんだけどした事がなかったんだ。だから、意味がないことにはならない。これは確実に言えること」
『そっか』
私は俯いたまま、返事をした。
やはり自分だけ呪いが解ける可能性があるということに納得がいっていない。
だってもし、未来に先祖返りの鬼天狗が存在せず先祖返りの八尾比丘尼の娘が生まれてしまったら。
ただの繁栄の道具にされることは確実だった。妖は本来人間と交わりを持たない。
好まない。兄ちゃんが変わってるから、私を愛してしまったから大切にされているだけの話だ。
旅をすることで、未来の八尾比丘尼の娘が繁栄の道具にされないのなら。それが叶うなら旅をしたいと思った。
「雫。今は分からなくても、君が幸せになることで救えるものもあるのだってことを覚えておいて」
その優しい言葉が、針が、釘が、薔薇の棘が身体中に刺さり、痛みが刺さるような感覚を私は覚えた。
それくらい代々八尾比丘尼の娘が受けてきた仕打ちは酷いものだったのだ。
私だけそれから救われるのもなんだか違うような気がして、おかしいような気がしてしまって。しばらくその感覚が取れることはなかった。
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