懺悔【ティナ視点】

<ティナは赦しを請う> 




 さて。十分堪能したことだし。


 そろそろ両親とも合流し、国を出なくては。



 ああもちろん、先のあれやこれやは、私が勝手にやったことではない。


 魔王との戦があるから逃げようという話は、両親からされた。


 伝手があるそうで、そこからの持ちかけとのこと。



 怪しいが、主戦場になるのは確かだし、私はこれを応諾。


 第一王子のカイル様に相談したところ、こういう方向性になった。


 彼にハーピーを押し付けたのは私なので、そこからの縁だ。



 意図通りに、進みほくほくしていたが。


 カイル様に、働きに対する報酬を尋ねられた私は思わず。


 ラフィーネ……恵美の身柄をねだった。



 そうしてそれは、叶えられた。



 私は彼女が恵美だと、確信はしていたが。


 二人きりのやり取りの中で、それを確固たるものにした。



「なぜ、こんな真似を、したのです」



 彼女が、噛んで含めるように言う。


 その言及は、体を好きにしたこと、に対してではなさそうだ。



「ですから、あなたを手に入れるためです。


 この国で、それは叶いませんし」



 転生前にいた、あの国でも。



 こうでもしなければ……あなたは手に入らなかった。


 その肌に触れることさえ、叶わなかっただろう。


 それはもう、我慢ならなかった。



 たとえ、嫌われようとも。


 悍ましい趣向だと、罵られようとも。


 もう、あなたに触れられないのは、耐えられなかった。



 …………ごめん。


 やってしまった後で、言えないけれど。


 ごめんなさい。恵美。



 卑怯で。私だって言わずに、こんなことして。


 ティナとして、あなたを汚して。


 ごめん、なさい……。



「元から、わたくしを狙っていたと」


「はい」



 もう、ずっとずっと、そう。


 でも、その勇気はでなかった。



 ただ私は、怖かっただけ。


 とられるかもしれない、って。


 またあなたが……いなくなるかも、しれなくて。



「…………ハーピーというものが、いませんでしたか?」



 ……なるほど。


 自身がもう転生者だとは、ばれていると理解されたようで。


 そしてこちらもそうに違いないと、そう思った、と。



 私は、やはりハーピーを気にする彼女に。


 胸が、痛んで。


 声を、絞り出す。



「彼女はいろいろありまして。


 第一王子の預かりとなっております」


「そう……」



 あまりすべてを、明かすわけにもいかない。


 そう思って、濁して言ったが。


 ラフィーネは思案顔だ。



「わかりました」


「おや、もっと怒られるかと思いましたが」



 私のハッピーセットを返せ!って。


 ごめん、なさい。


 それは我慢ならなかった。



 でも彼女は、頭を振った。


 そうして、さっと身を起こし。


 急なことに、不意を突かれた私は。



 唇を、奪われた。



 少し、濡れた、感触。



 我に返り、身を離す。


 体が、よろける。


 いま、のは?



「怒らないわよ。残念ではあったけど」


「な、ぜ。どういう、こと?」



 ろれつが、回らない。


 なに?魔法?



「聞きたいことは聞けたし。


 そろそろ、行きましょうか」



 さっさと、自分の身支度を始める、ラフィーネ。


 これはいったい……。



「あなたは、いったい」


「知っているのでしょう?


 あなた相変わらず、頭はいいけど」



 あたまが、くらくら、して。


 あい、かわ、らず?


 そんな。まさか。



 わたしのこと、気づいて?



「ばかね」



 体が揺らぐのに、耐えられなくなって。


 私は彼女の腕の中に、倒れ。


 意識を失った。

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