私たちが死ぬまでの日記

ましろ毛糸

プロローグ No.2 - P??&Y


 瞬きをするように目が覚め、はっとした。


 机やら棚やらで塞がれた部屋の扉。

 床に直置きされた、酒の瓶とグラス。

 そして、大量の錠剤と、からになったゴミが、床に散乱していた。

 正確には定かではないが、錠剤本体の数よりも空のゴミの量の方が圧倒的に多い。


「────~~クソッ!」


 感情に任せ、目の前にあったローテーブルに拳を打ちつけた。

 その反動により、テーブルに置かれていた1冊のノートが バタンと床に落ちた。


 マットなグリーンの表紙のリングノート。

 見覚えがあった。


 ────まさか、失敗したのか?


「……なんでだよ。 なんで、どんどん傷つけるんだよ。 もう十分がんばった。 もう楽になったっていいだろ……」


 こんな時、がいてくれたら、少しはマシだったのだろうか。

 こいつがこんなに傷つくこともなかったのだろうか。


「……ま、いなくなった人間は、もう助けてくれないさ」


 この状況が吉と出るか。凶と出るか。

 祈るように俯いた。


 再び目の前が暗転し、意識は深い闇の底に突き放された。






・──── ──── ────・



2021年10月1日(水)



『私たちは お互いを枕にして横たわり 悲しさとは無縁の話をたくさんした』


『その会話には 憂鬱ゆううつな結末なんて無くて』


『私は永遠に あなたと この記憶の中で会うの』


『永遠に このままで』


『私たちは 永遠に このままで』


『これが「悪夢」というならば 永遠に覚めなくていい』


『これが「悪夢」なら ずっと眠っていたい


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る