一日一編集『もう一編じゃないよね、の心』

朶骸なくす

あなたと一話目

 むかし、いびきかいてるよ、と言われた時から

 口に薄いマスキングテープ貼ってる

 これのおかげで鼻で息することができる

 他にも歯げしりすごかったよっと言われたから

 歯医者さんに行ってマウスピースを作って貰った

 これで完璧。

 あとは貴方が先に寝てしまうだけ

 ふむふむ、寝ましたね。

 では、私は準備をして寝ますかね。洗面台に行って

 こそこそとしていると

「なんかそわそわしてるかと思えば」

 と寝ているはずの貴方が鏡に映っているではないですか

 ひぃいい、と口にして、道具を背中に隠した

「見せて」

 と言われましても首を振って、あわあわしている内に

 迫り来る貴方、私を抱きしめる貴方

 あ、ちょっと嬉しい、なんて思っていたら

 歯のもろもろ一式取り上げられた

 そこから一気に、なぜなに回答が始まって

 貴方は、ちょっとだけため息をついた

「別に気にしないよ」

「と、言う人に限って気になるんだから!」

「テレビとかと同じだよ」

「と、言う人に限って別れの原因になるんだよ!」

「……ふ、ははは、なにそれ。初めてのお泊まりがこれでいいの?

 リラックスしにきたのにねえ、なにやってんだか」

 う~~~~と唸りながら貴方を見た。

 貴方はマウスピースやマスキングテープをいじりながら、

 にやにや笑ってる。

「じゃあ、今夜、試そうよ。ね、というか治療法とかあるじゃん」

「お金が」

「まあいいよ、ね、これなしで寝よ。イヤかイヤじゃないかなんてさ

 俺が決めることだよ?わかる? さ、寝よ」

「でも~~~」

「はい、寝る~~~」

 グッズは貴方の手に渡り、私は普通に寝ないといけなくなった

 あ~~~いやだ~~~明日がいやだ~~~

「多分、否定すると思うけど、そんなに気にならなかったよ」

「へ」

「蹴れば止まるし」

「起きちゃってんじゃん!」

「まあまあ、僕はキミとくっ付いて寝たいし、おはようのキスもしたいから

 僕のあこがれも優先してくれよ。あと治療は僕のマネーでいいから」

 ぐぐぐと思うほど正解な回答で私は唸る。

 こういう人に弱い。ベッドの上で胡坐をかいてニヤニヤするこいつ。

 こいつ、私の彼氏です

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る