第三章 強さを求めて
35.龍の墓場
ザクザクと踏みしめる土の地面。キラキラと輝く透明な石たちが、視界の端にチラチラ写る。
あれからどれくらい歩いただろうか。
リレイヌは空を見上げて息をこぼした。
なぜか白くなるそれに目を瞬いてからシアナを見れば、彼女は少女を振り返り、にこりと美しく微笑んでいた。
「少し休む?」
「ううん。大丈夫」
「そう。なら、もう少しだけ歩こっか」
「あと少しよ」と告げるシアナに頷き、足を動かす。
空は既に暗くなってしまっていた。
散りばめたような星たちがキラキラと輝くのを頭上、足下に注意しながら前へ前へ。そうして足を止めた先、そこに存在していたのは、一つの滝。巨大なそれは上から下へと真っ直ぐに落下し、細かな水飛沫をあげている。
「着いた。ココよ」
シアナは言った。
リレイヌはそっとシアナへと目を向ける。
そんな愛しき娘に笑みをひとつ。シアナは彼女の手を引き、ゆっくりとした足取りで滝に向かって歩いていく。
あと少しでそれに打たれるか打たれないかというところでギュッと目を瞑ったリレイヌ。だが、いつまで経ってもやって来ぬ重みと痛みに疑問を抱いて目を開ける。
ふわり。
優しい風が、頬を撫でた。
目を開けた視線の先、真っ白な石造りの建築物が建っている。
その間、ところどころに通わされた水が美しい透明度を保っていた。水の中を覗き込めば、そこには沈んだ街があり、それを背景に小さな白い魚が楽しそうに泳いでいる。
空を見上げれば巨大なマンタ。海を泳ぐように優雅に空を漂っているその周りには、やはり白い小魚たちが付き添うように泳いでいる。
「わ、ぁ……」
感動と動揺で声が漏れた。可愛らしいそれにクスリと笑う母親は、前方、少し遠い位置にある巨大なクリスタル状の大木を見て目を細める。
「ココはね、『龍の墓場』と呼ばれる神域なの」
「龍の墓場……?」
「そう。私たち一族が死に、そして眠る場所よ」
「ココならヒトはやって来ない」と、そう告げたシアナはリレイヌの手を握ったまま大木の方へ。慣れたように白い道を歩く彼女を、リレイヌは慌てながらも追いかける。
キラキラ キラキラ
小さななにかが舞っていた。
光り輝くそれに目を奪われながら前を見れば、近づいてきた大木の下に3つの石碑を発見する。
石碑にはそれぞれ、「二代目セラフィーユ」、「三代目セラフィーユ」、「アガラ・セラフィーユ」、と刻まれていた。
「……ただいま、母さん」
「アガラ・セラフィーユ」の石碑の前、シアナは小さくそう告げた。寂しそうに石碑を撫でる彼女をぼんやりと見やり、リレイヌもその前へ。透明なソレに、ぺこりと頭を下げてみせる。
「……今日はひとまず休みましょう。特訓は明日から。それでいいわね?」
問われたそれにこくりと頷く。シアナはそんなリレイヌににこりと笑い、もう一度、石碑を静かに撫でていた。
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