第39話 依頼

 ユウヤが大きくため息を吐いた後に話し始める。


「正直、あのカチューシャって女の思考が読み取りづらかったんだよ。親族だから似たようなスキルを持ってて自然と抵抗してる可能性もあるが、あれは無理だった!」

「なんか意外と弱点多いよね」

「そりゃあ、成長もなしに凄い力を持つ奴なんて人造人間とか血縁以外であんまりないよ」

「候補で複数あるじゃん」

「だって、例外いるかもしれないし〜……もう、迷宮いこ!」

「あ、逃げましたね」

「まぁ、いいじゃん。ユウヤ、詰めて楽しくないし」


 皆で迷宮に向かって、六層にまで到達出来るようになった。非常に殺風景なのは変わらないが、プレッシャーと魔力の多さが変わった。ユウヤは敏感で、その変化に鳥肌をたてて冷や汗を流す。 

 そして、天井までの高さが変わって、剣が振り回しやすくなる。


「ここで帰るぞ」

「りょうか〜い」


 一番に反応したのはエスタントアであり、そこから二人もユウヤの意見に賛成した。(流石、魔人)そう考えるユウヤであった。

 そんな時、一人を抱えた三人のパーティーが近づいてくる。

 当然、警戒して皆が武器を持って構えるが、「助けてくれ」という声によってエスタントア以外は声の主に気がついた。

 ――怪我が治った時に出迎えてくれたクワトロだ。

 クワトロにユウヤは尋ねる。


「何があったんだ」

「毒地帯に引っかかったんだ。宝箱に手を付けたら急に火傷みたいな症状を受けてな」

「それで気が付いたってことか」


 毒地帯では化学薬品を仕込んでいるかのように、床に触ると皮膚は爛れて火傷のような症状が起きたり、魔物の血まで毒に侵されていたりする。

 厄介なエリアと考えてよいだろう。


「ちょうどいいし、俺達のパーティーが外側にでもなって帰ろうぜ。四人で警戒しとけば大丈夫だろ。ユウヤ」

「まぁ、そうだな」


 ユウヤ達はクワトロのパーティーを囲んで冒険者ギルドにまで帰っていった。仲間は一週間で治るそうだが、クワトロ達は肩慣らしも合わせて二週間ほど、冒険者を休むことになった。


 ◆■◆■◆■


 次の日となり、冒険者ギルドへ行くとカチューシャと出会った。


「うっわ!」

「なんでそんな反応するの? 気分害しちゃった?」

「最悪だよ。けど、まぁ、用事は聞いておこう。何をしたいんだ? 俺に会ってさぁ」

「あぁ、それは‘‘これ’’に」


 ユウヤが渡された紙を見てみると、依頼書でありライブまで一緒に修行するというものだった。当然、給料は高いし休憩時間は短い時でも迷宮に潜れるくらいの時間があるらしい。

 冒険者ギルドなので、パーティーが来るまで待ってもらって相談し、受注することになった。


「……会って初めてがこれか〜」

「だって、一人でも出来たけど、逃げられるかなってとってつけたような依頼だもん。我慢してね。戦闘はせずにスキルの特訓みたいなものだから、さ」

「はいはい」

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