第36話 過去

 他の者には無事に能力は伝わった。

 しかし、ユウヤは意識を飛ばしてしまう。


 ◆■◆■◆■


 (なんだ? 村が見えるが、一体誰から見た視点。いや、宙に浮ける。共鳴で誰かの視点に移ったのか? ……あれはエスタントア!?)


 ――私は閉鎖的な村で暮らしていた。外とは違って生贄とか色々と変な慣習があって、私達みたいな若い人は皆辟易してた。

 けど、


「どうして、外の世界に行こうとしないの?」

「分からない」


 他も


「ねぇ、どうして?」

「分からない」


 ――分からない。分からない。分からない。皆、そう答えるの。ただ、それで納得してた。

 ある日、男の子が村に来た。

 何言ってるのか分からなくて、男の子も不思議そう顔してる。だから、村の人に任せたら言葉が通じたみたい。

 そこから、共通言語っていうのを学んで、


「男の子、殺しちゃったの?」

「えぇ」

「どうして?」

「貴方を外に連れ出そうとしたからよっ」


 男の子が死んだ。村の人達に殺されちゃった。――狂ってる狂ってる狂ってる。

 そこから、色々な人が来たんだよ。迷宮から来た人に、森から来た人、迷い込んだ人、皆――


「もう殺しちゃったんだ……」

「えぇ」


 死んだ。殺された時の顔は全部不思議に思ってそうな顔なの。そっちの方が不思議でしょ?

(狂ってるな……いつ終わんだこの記憶は)

 村の生活はまだまだ続く。全然、終わらない。


「おーい、エスタントア、遊ぼうぜ」

「そうだよ。遊ぼ!」


 二人はジュミーとカチュ。ジュミーは天真爛漫な女の子で目がいいし、カチュは少し流されやすいけど足が速い。


「行っていい?」

「行ってきなさい」

「ありがとう。行ってきます」

「いってらっしゃい」


 今、許可をとってくれたのはお母さん。編み物が得意でとっても優しい。


「木登りして遊ぼうよ」

「いいねいいね!」

「えぇ、飽きた木登りぃ〜」

「いいじゃん。木登り。それに他だと三人だけじゃつまんないし」

「ゔぅ〜、他の奴らと遊びたくないしぃー。どうしよ」


 私が一緒にいる人以外はどこかしら村に染まってるし、他の子どもは血とか気にしてたし、家の手伝いしてたりで遊ばなかった。結局、木登りすることになって今回は私の勝ちで終わった。

 そして、月日は流れ


「今回の生贄はエスタントアとする」


 私が生贄になった。だけど、抵抗はしない。正直、生贄になる人は可哀想だと思ってた。できれば、私が変わりたいとも思ってた。別れの挨拶はしたけど、本当に淡白なものだった。ここに、私が違和感を募らせた世界が詰まってる。

 その時、外から来た人が止めにかかった。

 それで思ったのは、


「だから、外から来た人ってすぐ死ぬのね」


 という悲しみだけだ。その後、坂に放り込まれてしまって、石にぶつかったりでとても痛かった。血は出るわ皮は裂けるわで大変。

 はぁはぁ、と息を荒げていた時に化け物が目覚めた。


『ああ、ぅ、な、に、してる、の?』


 真っ黒な物体、伝承ではそれを見ただけで意識を持ってかれる。それだけだったけど、まさか思考が出来ると思っていなかったし、意識が飛ぶことはない。


「私は生贄でここにきたの……。さ、私を食べていいわよ」


 腕などは動かせないから、転がって近寄った。


『……いらない!』


 その言葉を聞いて意識は飛んでしまった。気がつくと、村が焼けるところを見てた。人が、動物が、木々が、狂ってしまう。


「何が?」

『君に乗り移って、攻撃されたから、やった』

「……貴方がやったの?」

「うん!」


 焦ってるのに、お腹がすく。ただ、飢餓感は無視してお母さんや友達の家の方に急いでいった。

 けど、見えたのは死んだ肉塊だけ。

 漁れば、皆、ぬいぐるみだったり義眼に変わってた。


『苦しい苦しい』


 声が聞こえる。


「なにこれ」

『友達とか家族の声じゃないかな?』

「違う。あの声聞いてると、すごく満たされるの」

『それは、僕と君が合わさった時に混じったんだよ! きっと! 恨みを食べて、いかなきゃね!』


「あ、あんたのせいでこうなったのよっ! なんとかしてよ! 戻して皆を!」

『無理……けど、恨みを食えば会話出来るよう、になるかもね』


 それで皆に言った。


「私を、恨んで」


 そこで終わり。


 ◆■◆■◆■


 意識が戻ると、魔法は解除されていて、どうやら、エストゥーアは逃げ出して終わったようだ。


――

すみません、文章力がクソすぎて最後やる気失ってました。一部書いてない部分あるんで修正はまたいつか

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