第2話 夜を纏う男はかく語る11
(自分自身の、責任……)
言葉を自ら発すること。
行動を自ら起こすこと。
かつての私なら、きっと躊躇した挙げ句、諦めていたことだろう。
「…………」
――
自らのことをそう名乗った人物のことを、そしてこれまでのことを改めて思い返す。
(『
きっかけはどうであれ、私は一度、冥一郎さんと逢っていた。
それも『願いを叶える心霊スポット』という場所で、だ。
今思えば、冥一郎さんは『
(でも、あの状況で見捨てることなんてできない……)
どちらかと言えば、見捨てれば見捨てたことを後悔してしまいそうだ。
助けることが成功したとか、失敗したとか。
そんなことは今となってはどうでも良い。
私は、半分死んでいる。
冥一郎さんと黄泉月の言葉を信じるのなら、多分、仮死状態――に近いのだろう。
そう、認識をしている。
ボンヤリと霞みかかっていた思考。
それも今は時間が経つとともに鮮明になっていく。
(嗚呼……結局、神さまはいないのか……)
今は、少しずつだが冷静に分析できる。
失敗と不幸ばかりの現実に疲弊し、私は自棄になっていた。
だから在りもしない神さまに縋り……その結果が、これだ。
非現実的な現実を、無理やり受け入れることしかできない不条理さ。
そのことに怒りがないわけではない。
けれど、当然その怒りは他人に向けて良い怒り《もの》ではない。自分の中で昇華するべき怒りだ。
(だから……此処で甘えてばかりじゃ、駄目だ)
冥一郎さんの好意に、黄泉月の善意に甘えてばかりではいられない。
「――冥一郎さん」
名前を呼び掛ける。声は、緊張から震えていた。
それでも真っ直ぐ気持ちをぶつければ、応えてくれる人だと思った。
だから、言えた。
「私に、できることはありますか?」
「…………」
私のその問いかけに閉口したまま、チラリと冥一郎さんがこちらを見る。
けれど、何も言葉を発さない。
いつかの私のように言葉が出てこないなんて――そんな人ではない筈だ。
だから言葉を発さないのには意味がある。
冥一郎さんは、私が起きてからというもの片時も離れようとはしない。
もしかしたら私が眠っている間も、ずっと傍に着いていてくれたのかも知れない。
それは、何故か。
私と『現世』で出逢っていたから?
私の
きっとそのどれもが当て嵌まる……でも、正確には当て嵌まらない。
明確な理由を冥一郎さんの口からは何一つ聞いていないからだ。
「……〝メ〟」
「……!」
半ば確信を得ながらその言葉を呟いた瞬間、ピクリと冥一郎さんの眉が動いた。
畳み掛けるように、言葉を紡ぐ。
「黄泉月……それに胡蝶さん達が口にしてました。私のことを〝メ〟だって」
「…………」
「教えて下さい」
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